700人のIIDXプレイヤーにアンケートして、迷ったときの最適なプレイ画面設定の探し方を考えた

要約

IIDX SPのプレイ画面設定に関するアンケートを作成し700人弱の回答をいただきました。

・その結果、段位・アリーナランクが上がるほど、緑数字が小さくなる相関関係を認めました。上下合計の白数字には同様の相関関係はありませんでした。

・また、判定タイミング・目線位置で緑数字を調整して得られた、ノーツの視認から判定までの時間(以下、反応時間)について考えると、段位が上がるほど反応時間は大きくなる一方で、アリーナランクが上がるほど反応時間は小さくなりました

・このことから、プレイヤーが緑数字を減らすとき、クリア力を上げることが目的の場合は、判定タイミング・目線位置を調整することでノーツの視認から判定までの時間が短くなりすぎないようにすると良いかもしれません。

・この結果を踏まえて、迷ったときの最適なプレイ画面設定の探し方を提案しました

 

====以下本文====

 

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 

今回はこちらの記事↓

the-safari.comを拝見し、「(プロに限らず)設定とクリア力・スコア力との相関を知りたいな~」と思いTwitterでアンケートを募ったところ、ありがたいことに約700件もの回答が集まったので、その分析結果をまとめてみました。

 

質問項目

アンケートの目的はプレイ画面設定とクリア力・スコア力との相関を調べることです。

そのために、以下の項目を用意しました。

  • 段位 +(利用者のみ)総合CPI
  • アリーナランク +(利用者のみ)総合BPI
  • SUDDEN+白数字(画面上部の白数字)
  • LIFT白数字(画面下部の白数字)
  • 緑数字
  • 判定タイミング
  • 目線位置

 

目線位置は以下の図のように、ノーツの流れる範囲を下から10段階に分け、プレイ中に平均的に眺めている高さを答えていただきました。

https://p.eagate.573.jp/game/2dx/29/howto/play/option_speed.htmlより筆者改変
アンケートに使用したものと同じ図です

緑数字・判定タイミング・目線位置から、プレイヤーがノーツを見てから判定されるまでの時間(以下、反応時間)を求めることができます*1

 

以下では、アンケートで直接質問したプレイ画面の各種設定と、後から算出した反応時間について、クリア力・スコア力との相関を調べていこうと思います。

 

回答プレイヤーの全体分布 

クリア力の指標として調べた段位の分布です。

約半数が皆伝、1/4が中伝となっています。こちらのサイトによると前作*2皆伝は9.3%、中伝は13.1%だそうなので、明らかに上級者に偏った分布となりました。

 クリア力の指標として用いるにはこのままだと分布が偏りすぎている*3ので、皆伝のうち総合CPIを回答したプレイヤーのみを分析に採用し、その中でも総合CPIが2200を超えているプレイヤー(IIDXプレイヤー全体の上位500人≒上位1%程度)を別枠として集計しました。

 再集計したものがこちらです。

 このうち、外れ値処理などの関係で、実際には初段以上のプレイヤーを分析に採用しました。

 

次に、スコア力の指標として調べたアリーナランクの分布です。

https://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWwhttps://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWwhttps://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWwhttps://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWwhttps://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWw

Aランクが6割弱と、こちらも段位同様の上級者に偏った分布となりました。ですが、段位と違って特定のランクにプレイヤー分布が偏っているわけではないので、特に区分変更を行わずに分析に採用しました。

 こちらも処理の都合でアリーナモード既プレイのプレイヤーのみを分析に採用しています。

 

段位とアリーナランクの対応を図にまとめてみます。

 当然ながら段位が上がるほどアリーナランクも上がります。相関係数*4ρ=0.86でした。相関係数は完全な正の相関があると1に、一切の相関が無いと0になる指標で、0.8を超えているのは一般に強い正の相関があると言って良いはずです。

 

このように調べたい要素同士に強い相関がある状況では、擬似相関の出現に注意する必要があります。

 

相関係数で疑似相関を調整する

早速クリア力・スコア力と各種設定の相関を調べていこうと思いますが、その前に少しだけ以下の説明にお付き合いください。

 とってもわかりやすい↓のサイトに沿って説明します。

bellcurve.jp

次のデータは2015年12月末時点の各都道府県内にある映画館のスクリーンの合計数と可住地面積100km^2当たりの薬局数を表したものです。このデータを用いて相関係数を算出すると、「0.82」でした。つまり、映画館のスクリーン数と薬局の数には強い相関があるという結果でした。

しかし、一般的に考えて都道府県ごとの映画館のスクリーン数と可住地面積100km^2当たりの薬局の数は直接的に関係がないような気がします。映画館のスクリーン数が多いから薬局の出店数が増えるわけでも、薬局の数が多いから映画館のスクリーン数が増えるわけでもないためです。このような場合には、「第3の因子」の存在を考慮する必要があります。

https://bellcurve.jp/statistics/course/9593.html

この例では、「第3の因子」として人口密度を想定することができます。

 似たような例は、「小学生の漢字テストの成績と走る速さ」や「アイスクリームの売上と水難事故件数」などでも見られます。前者は早生まれ・遅生まれが、校舎は気温の高低が関わっていることが推測できます。

 

今回のアンケートに戻って、例として緑数字とクリア力・スコア力の関係を図にしてみます。

 この場合、仮に緑数字とクリア力とに強い相関があったとしても、スコア力の影響を除いて考えないと、「純粋なクリア力」と緑数字との関係がわからない、ということになり、逆もまた然りです。このような調整を行った相関係数相関係数と呼びます。

 

以下では、この偏相関係数を使って、クリア力・スコア力と各種設定の相関を調べていこうと思います。

 

緑数字とクリア力・スコア力

図の上に行くほどアリーナランク≒スコア力が、右に行くほど段位≒クリア力が高い。
青い四角形は各領域を表し、白い数字は各領域における中央値を示す。
n=1の領域については個人の特定を避けるために表示していません
相関係数の計算には採用しています)。

 図左上(L字記号)に偏相関係数を表示してあり、この図では

 ・アリーナと緑数字の偏相関係数:-0.11

 ・段位と緑数字の偏相関係数:-0.07

であることを示しています。すなわち、

 ・クリア力が一定のとき、スコア力が高いほど緑数字は小さい

 ・スコア力が一定のとき、クリア力が高いほど緑数字は小さい

ことを意味していると考えられます。認識力が向上するに従って、プレイヤーは緑数字を減らし、画面上に表示されるノーツ数を減らすことで、スコア狙い・クリア狙いともに有利に働かせようとしていると予想できます。

 もちろん、緑数字を減らすことは、画面のノーツを減らすだけでなく、(先述の)反応時間を小さくすることにも関係するはずです。その辺りについても後ほど詳しく見ていこうと思います。

 

白数字とクリア力・スコア力

次は、SUD+白数字(画面上部の白数字)、LIFT白数字(画面下部の白数字)、および上下合計の白数字を見てみます。

  偏相関係数だけをまとめると、

      上  下  合計

 アリーナ:0.07 -0.08 0.02

 段位  :-0.06 0.12 0.02

と、合計の白数字は一定(約350)のまま、

 ・スコア力が高いほどノーツの表示領域は画面下方に位置する

 ・クリア力が高いほどノーツの表示領域は画面上方に位置する

ことがわかります。

 ノーツの表示領域の上下位置に関して、実際にはプレイヤーの身長が寄与する部分が大きいと思うので、迷ったら合計白数字を固定した上で、プレイ中の感覚で微調整するのが良さそうです。

 

判定タイミング・目線位置

 白数字はノーツの表示領域を上下に調整するための設定ですが、次はノーツの表示領域を変えずに視認から打鍵までのタイミングを調節できる設定*5を見てみましょう。

クリア力が高いほど、判定タイミングは下方に設定されているようです。

 

目線位置については、

 ・スコア力が高いほど、ノーツ表示領域の下方を見ている

 ・クリア力が高いほど、ノーツ表示領域の上方を見ている

ようです。

 

さて、判定タイミングと目線位置、および緑数字を統合して議論するために、先述した反応時間についても確認してみましょう。

 相関係数を解釈すると、

 ・スコア力が高いほど、視認から判定までの時間が短い

 ・クリア力が高いほど、視認から判定までの時間が長い

ようです。

 相関関係を直ちに因果関係とすることは出来ませんが、このことからは反応時間(マージンと言い換えても良いでしょう)が大きいことはクリア狙いでは有利に働き、スコア狙いでは不利に働くと言えそうです。

 マージンが大きいと視認から手指を動かすまでの時間的猶予が生まれるはずですが、そのことは脳内で視認から打鍵までの時間差を予測する上でのブレが大きくなることとのトレードオフになるのかもしれません。

 もちろん、余りにもマージンが大きいとクリア狙いにも影響する(BADが出る)ほどブレが大きくなるので、クリア狙いのことだけ考えても最適な反応時間は存在すると考えられます。

 

ここで、緑数字の分析結果についてもう一度見直してみると、

 ・スコア力が高いほど緑数字は小さい

 ・クリア力が高いほど緑数字は小さい

と、反応時間と違ってスコア力・クリア力で同じ方向に相関していることがわかります。

 このとき、緑数字・反応時間と、偏相関係数を使って調整した(≒純粋な)スコア力・クリア力との関係は下図のようになります。

 反応時間は緑数字を使って計算しているので、反応時間と緑数字に相関があってもおかしくありませんが、実際に計算してみるとρ=0.10程度でした。

 念のために段位・アリーナランク・緑数字・反応時間の4変数で偏相関係数を計算してみると、以下の図のように調整前とほとんど変わらない値になりました。

 色々とややこしい計算をして来ましたが、要するに緑数字を減らすと

 ①画面上に表示されるノーツ数を減らす

 ②(判定タイミング・目線位置が一定なら)反応時間を短くする

という2種類の効果が発生し、今回のアンケートでわかった相関関係から推測すると

 ①はクリア力・スコア力ともに高める方向に働くが、

 ②はクリア力は低める方向、スコア力は高める方向に働く

と予想されるため、緑数字を減らすとき、クリア力の向上を重視するなら、反応時間が短くならないように判定タイミング・目線位置を調整する

のが良いかもしれない、ということになります。

 

アンケート結果から考える、プレイ画面設定の手引き

最後に、ここまでを振り返って、迷ったときの最適なプレイ画面設定の探し方を提案したいと思います。

  1. 現在の段位・アリーナランクからおおよその緑数字を決める。
  2. 白数字は上下合計で約350にする。
  3. 目線位置はとりあえず6/10(冒頭の図参照)として、身長などに合わせて(SUD+・LIFTを調整して)ノーツ表示領域の上下位置を決める。
  4. 上記の設定で適切な難易度の譜面*6を何曲かプレイし、判定タイミングを調整する。
  5. 上達によって認識力が向上し、緑数字を減らしたくなった際は、(SUD+・LIFTを調整して)ノーツ表示領域の上下位置は変わらないようにする。スコア力の向上を重視するなら、他の設定は変更しないで良い。クリア力の向上を重視するなら、判定タイミング・目線位置を調整して反応時間が短くなり過ぎないようにする。

 

もちろん、これはアンケート結果から考えた平均的な手順として提案されるものです。相関関係は直ちに因果関係を意味しないため、身も蓋もありませんが最終的には個人差に合わせた調整が必要になります。

 あくまで、迷ったときの一つの道しるべとしてご活用いただければと思います。

 

まとめ

・段位・アリーナランクが上がるほど、緑数字が小さくなる相関関係を認めた。上下合計の白数字には同様の相関関係は無かった。

・ノーツの視認から判定までの時間(反応時間)は、段位とは正の相関を、アリーナランクとは負の相関を認めた。

・このことから、プレイヤーが緑数字を減らすとき、クリア力を上げることが目的の場合は、判定タイミング・目線位置を調整することで反応時間が短くなり過ぎないようにするのが良いと推測できる。

 

 

 本記事についてのご意見・ご感想のある方は、記事へのコメントあるいは冒頭のTwitterまでご一報をお願いします。


それでは、良き音ゲーライフを。

 

https://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWwtwitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWwhttps://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWhttps://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWwhttps://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWw

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*1:緑数字は60fpsにおけるノーツの表示フレーム数を表し、緑数字10は判定タイミング1に相当します。よって、緑数字をG、判定タイミングをT、目線位置をLとして、反応時間は(G*L/10-T*10)*(5/3)で求めることができます(単位はミリ秒)

*2:IIDX28、記事執筆時点はIIDX29

*3:相関を見る上で現実のプレイヤー分布との乖離があること自体は問題ありませんが、最高ランクに分布が偏っている状況はいわゆる天井効果の影響を受けてしまいます

*4:以下Spearmanの順位相関係数のこと。なお、以下では読みやすさのために有意水準について敢えて触れていません

*5:目線位置は設定ではないですが

*6:簡単すぎず難しすぎず、クリアとスコアの両方を狙って行ける程度がちょうど良いと思います

【IIDX】一流の<心的イメージ>を手に入れよう ~NORI選手にインタビュー②~

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 

今回はこちら↓の記事の続きとなっております。

riceplace.hatenablog.jp

 

 以下、―で始まる段落は筆者の、それ以外はNORI選手(文章中ではのりみそさんとお呼びしています)・配信へのコメントとなっています。

 

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スランプとプレイスタイル

(続き)

EXIT選手コメント「DP一番やってた頃は、歴代記録が出ても、自分の限界と感じたスコアが出るまでは少なくともやり続けてました。限界値出た曲も限界は時が経つと変わるので、たまに様子見して、まだ伸ばせそうだったらまたやるという感じでやってたと思います。」

―これで結局重要になってくるのは、元の話に戻ると、また伸ばせそうだと思ったっていうところかなっていう風に思うんですよね。 スコアですごいレベルの高い人たちって、そのスコア見た時に、行けそうとか行けなさそうみたいなのが結構あるっていうか。

NORI選手:あー、はいはい。

―まだ自分ぐらいのスコア力(アリーナA3)だと、思ってもみなかった曲が150点伸びたりとかするんですよね。上手な人たちと比べて、日によってのブレが大きいなと思うんです。

 

―タイミングがいいので、スランプの話になってきますが。のりみそさんは、ここ最近スランプって感じないですか。

NORI選手:うん……ないですね。

NORI選手:最近ちょっとだけあったのは、叙情やたらやった日があったんですけど、あれはなんか筐体に立ってアップを始めた時に、「え、俺、いつもどこ見て、何を思ってノーツ光らせてたとか、全然わかんなくなっちゃった」みたいな瞬間があったんですよ。 めちゃめちゃ焦って、びっくりして。

NORI選手:もう今日は考えてた練習全部やめようって。で、U76NERさんが叙情伸ばしてて、「あんだぁ〜?」と思ったんで、 帰るべき場所というところで叙情をずっとやって、そしたら「こうやってたな」って思い出して。

U76NER選手コメント:「あんだぁ~?」

NORI選手:コメントが来ましたけど、思い出したぐらいですかね。だから、スランプっていうほどの最近ダメだなみたいな日はあんまり。 今日この後いくらやっても自己ベ出ないなみたいなのはあるんですけど、それはやっぱり明らかに前日の睡眠が悪かったとか、仕事疲れたとか、そもそも普段と違う靴履いてるとか、なんか明確な理由がある気はします。

 

―じゃあ、理由のないスランプは、あんまりないってことですよね。

NORI選手:と思ってますね。

―昔はありましたか。

NORI選手:あんまりない方の人間な気がするな。

―他のBPL出てる方とかから、そういう話って聞きますか。

NORI選手:あるんじゃないですか。プロが言うと怒られそうですけど、やっぱ珍ビって言ってる人結構いる気はしますけどね。それも、きっと何らか理由はあるんじゃないですかね、睡眠の問題とか。

 

NORI選手:それ(スランプ)って、押せてたものが押せない日って、筋肉的な問題か、認識が間に合ってないか、どっちなんだろうなっていう風に考えるんですよ。

―自分はフィジカルだなって思うんですよね。(特に)思ってるのは姿勢で、筐体からのフォームとか、靴とか。

NORI選手:それはもしかしたらあるというか、調子の良し悪しを減らすのに、多分自分が意識した、それはBPLで一発勝負でいいスコアを出すために考えたのかもしれないですけど。 

NORI選手:最近、ビートマニアしてる時の姿勢、ずっと同じにできてるはずなんですよね。

NORI選手:今までって、極端にやるとこう(下図左)やってた気がするんですよ。上体を前にして集中するみたいな。こういう姿勢になってたのを、左足を開いて、いつも同じニューバランスさんの靴履いて。ライトニングの足入れるポイントあるじゃないですか、あそこに左足の小指のあたりを絶対当てて。で、右足はこんぐらい引いて、後ろの膝を曲げるみたいな。

配信より

NORI選手:その姿勢になってから、ビートマニアやるっていう風に決めてるので、姿勢っていうのは(調子の良し悪しを減らす意味が)あるかもしれないですね、もしかしたら。

 

―BPL選手のフォームを(配信で)見たときに、U*TAKA選手とかは上半身を倒してるイメージがあるんです。実際ご覧になったことあると思うんですけど、 どうですか。

NORI選手:多分、上半身を倒すことが(全員にとって)悪ではないんでしょうね。

―ここが最初の話の、人によってってところになる。

NORI選手:そうなっちゃう。多分、いつ何時でも再現性のある姿勢を見つける必要があるんでしょうね。

―理由がなければ同じ姿勢でやるようにするっていうのは、プロは皆さん一緒ですかね。

NORI選手:あると思います。RIOOさんとかも姿勢、大体一緒な気はします。そんなにフリースタイルでやってる人、あんまりいないんじゃないかな。皆もしかしたら、 立ち位置ぐらいまでちゃんと決めてビートマニアしてるんじゃないかなっていう気はします。

―(プロ以外のプレイヤーでも)立ち位置を一定にしようって決めてる方は結構いらっしゃるんじゃないかと思って。そこの解像度の問題なのか、後はまだ言語化してないポイントがあるのか。要するに姿勢だけ真似してもいけないのかどうか、難しいポイントですよね。

NORI選手:姿勢は、きっと要素の1つではあると思うんですけれども、全部ではないでしょうね。

 

―昔から、緑数字・白数字・判定とかをガチャガチャ変えるのは良くないよっていう認識は、一定以上うまい人はみんな持ってるかなと思うんですが。

NORI選手:僕それどうなんだろうって。なんか、みんな結構変えてない?っていう気がしてます。プロって主語でやると怒られるような気はするんですけど。

NORI選手:僕は……ほとんど変えてないですね。たまに判定位置を0.05上げてみるか、下げてみるかっていうのを、3か月に1回ぐらい思うぐらい。

―これは自分の持論なんですけど、 下(判定ライン・判定文字)からの距離が一定のところに達したところで押すっていう考え方と、上のレーンカバーから出てきて(の距離でタイミングを測る)ってあって。どっちの認識でもビートマニアはできるので、 それ(認識スタイル)がどっちなのかによって、数字とか判定とかを変える変えないが変わるのかなって思ってるんですよね。

NORI選手:U76NERちゃんは緑は変えてるらしいですね。

NORI選手:いま昨日の自分の配信のプレーを見直して、いつも自分の中のイマジナリー判定ラインをどう作ってるのかを考えてるんですけど。特に叙情をやってるとき、判定位置(判定文字)から、どれだけ上下(にノーツがあるか)で見てる気はしますね。赤い判定ラインとか、サドプラの下端とかは、あんまり意識してない気はします。やっぱり叙情の1番早いところは、判定文字よりちょっと上見ようって思いますし、遅いところは判定文字より下を見ようとか思います。

 

―必ずしも上手な人はスランプにならないってわけでも無いですか。

NORI選手:名前は伏せますけど、やたら調子悪いし、判定位置とか色々変えたけど、 全然改善されないっていう(上手な)人もいるのは認識してます。

―そういう人と割と安定してる人で、どこが違いそうっていうのはありますか。

NORI選手:難しいですね。

―1つあるのは絶対的な能力(スコア力・クリア力)。1つあるのはプレイスタイルですよね。光らせる派か、地力で難しい曲(を武器にする派か)で、さっきの70% vs 90%と、90% vs 95%理論じゃないですけど。

NORI選手: 僕の感覚とか、聞いた話なんですけど、確かにうまい人、極端にうまい人たちって、調子のブレが少ない気はしますね。そう考えると、やっぱりあるのかな。それこそ、SEIRYUさんが調子悪いとか想像できないし、RIOOさんが調子悪いとかも想像できないなって。本人たちも調子いつでもいいですみたいなこと言ってる気がするんですよね。なんでですか、って聞いてみたいです、俺が。

―いつでも、全ての曲の自己ベ狙いが可能ということですよね。

NORI選手:まあ自己ベは出ないしろ、なんかこう97%ぐらいは絶対出るみたいな。調子が97%から100%ぐらいしかないみたいな。

―そういう人と、(調子が)105%から95%みたいな人の違いは興味ありますよね。絶対的なうまさもありそうだけど、必ずしもそうでもない。

 

―上手くなりきったら、あとはそんなにブレないっていう1つ仮説はあると思うんです。上手くなろうとする時って、いろんなこと試すと思うので。上手くなりきった人はブレないけど、代わりにもしかしたら、そこから劇的に上手くもならないのかもしれないですよね。

NORI選手:うん、そうかもしれないですね。

NORI選手:ああ、なんか……上手い人たちの中でも、僕みたいに極端に、もう1年間緑数字も白数字もリフトの位置もいじらない、みたいな人たちばっかではない気はしてます。それで、体感的にいじってる人たちの方が、調子のブレがある気はする、確かに。サンプル数がめちゃめちゃ少ないので、そんなことないのかもしれないですけど。

NORI選手:ああ、でも僕、去年SEIRYU塾でリフトも白数字も緑数字も判定位置も、全部変えた瞬間にめちゃめちゃ上手くなった

 

SEIRYU塾のすごさ

―その話すごく聞きたいです。どれぐらい具体的なのかっていうのはあるにしても、やっぱり心的イメージ変わったんじゃないかと思うんです。

NORI選手SEIRYUさんが「いやNORIさんはもっとできるよ」って言ったことに、多分全て起因してるんですよね。心的なキャップを全部取っ払ってくれたみたいな。

NORI選手:「いや、もうAAなんて3560までしか出ないっすよ」「俺に600は出ないっすね、はは」みたいな。そこまで卑下してなくても、多分どこかで思ってたんでしょうね。

NORI選手:SEIRYUさんとかはそれがなくて。AAではそうは言われてないですけど、「NORIさんなら多分3620は出るんで、とりあえず3600出してください」みたいなこと急に言うんですよ。自己べが3560の人間に対して。多分それは心的イメージなんですかね。なんか、この自分の中の限界像みたいなものを一気に取っ払ってくれた感じがして。

―完全にそれは限界的練習そのものですね。1つあるのはそこで、SEIRYU選手が他人の腕前の把握が、

NORI選手:そうなんです。上手いんですよ、どうやってんだろうなと思います。僕は同じことできないです。

 

―BPLを見ていて、これは観客の立場として言うんですけど、自選を取られる試合も多いなと思っていて。(パフォーマンスの)ブレもあると思うんですけど、これぐらい上手い人でも、自分と相手の力量を把握するのって、そのことだけでも1つ取り柄になるんじゃないかっていうぐらい難しいんだなって印象は(受けました)。

NORI選手:いやあ、難しいですね。

―「あの人はこれぐらい出しそう」みたいなのとかって、 上手い人は上手いからわかるんだっていうような考え方もあると思うんですけど、けっこう心的イメージに近い部分だと思うんですよね。

NORI選手:なるほどね。僕、それ下手なんですよね。だから、チーム内(の他の人)にしょっちゅう聞いてます。 「あの人が戦うことになるんだけど、本番でどんぐらい出してきますかね」みたいな相談するんすよ。で、振り返ってみると、おお本当だ、みたいなのは結構ある。

NORI選手:自己ベはあの人とんでもないけど、そもそもこの曲って自己ベ出すの無理だよね、みたいな。曲単位の解像度もそうですし。そのプレイヤー自体のことをよく知ってて、見定める能力は高いなって思います。僕はそれを特にRIOOさんに感じるんで、1巡目すごい説みたいな話になるんですかね。

 

―それ(他人の本番スコアを予想すること)がスコア力とは別の話だと思いきや、スコア力の水準と関係するのかもしれないっていうのは、ちょっと面白いですよね。

NORI選手:そうですね、不思議ですね。なんなんですかね。

―元の話に戻るんですけれども、小さな目標・正確な目標を立てていくところで、(他人との比較をせずに)自分のことだけっていう時にも、やっぱり自分がどれぐらいできるとかってのがないと。

―例えばもっとできるとか言って、「AA1桁落ち出ますよ」とか言われても困っちゃう。そんな人間はいないみたいな。単に高い目標を与えたから良かったんだっていう美談じゃないと思うんですよね。

NORI選手:そうそう、そうなんですよ。丁度よくSEIRYUさんは、その気にさせるぐらいのを出してきたっていう感じはしますね。

NORI選手:恐らくなんですけど、SEIRYUさんと去年ずっと色々やってた中で、「NORIさんこの曲こんだけできるってことは、AAサボってんだけだな」みたいなのが弾き出せるんでしょうね。

―そうなってくると、人の解像度っていうよりは譜面の解像度によるんですか。

NORI選手:人の解像度も、多分ある曲でこれぐらい出すような人がこの曲このスコアしか出ないわけはないみたいな。

NORI選手:U76NERさんとかと話してても、U76NERさんが「俺この曲苦手だわ」とか言うことがよくあるんですけど、「真面目にやったらもっと出るでしょ」って言っちゃうことはよくありますよね。って言って、1週間後ぐらいにきっちりライバル挑戦状が飛んでくるみたいな。当たってて嬉しいけど、嬉しくないみたいな(笑)。

 

―自分のことだけ考える時でも、なんとなく曲を選ぶんじゃなくて、これやるときにはこの譜面みたいな。 一次元の難易度では考えてる人は多いと思うんですが、それがもっと(高解像度に)寄ってくると、よく言う全曲練習曲じゃないですけど、それに近づくのかなっていう感じはありますかね。

NORI選手:ありますね。みんな絶対どこかで、☆12ってスコアが出ないとか、難しいからAAAが出ないとか、絶対思いがちだと思うんですけど。絶対あると思うんですよね、そういうのが。

心理的キャップですよね。

NORI選手心理的キャップ絶対あると思ってて。例えば☆12でも、それこそさっき話にもあったTodestriebの前半とか、☆8だぜあれみたいな。それを、「Todestriebは☆12だから前半黄ばんでもいい」とか絶対思っちゃダメで。☆12いろんな曲やってても、「ここはなんか☆10より簡単だな」とか(思うほうが良い)。

NORI選手:だから、せめてここは黄ばんじゃいけないなとか、マイクロな目標はちゃんと立てた方がきっと良いんじゃないのかなっていう気はしますね。 

NORI選手:負けるんですよ、☆12は難しいって思った時点で。そうすると、☆12の譜面どこ見ても☆12に見えてきちゃうんですけど、そんなことないですよって。

―「負けない」みたいなのは精神論的に聞こえますけど、そういう要素を取り払って言うと、目の前の譜面を要素要素に分解していって、その要素に対してベストを尽くすっていうことをするのが重要で、上手い人たちはそれもわかってるから、「この曲でこれぐらい出る人は、この曲だったらこれぐらい出るだろう」っていうのが、比較的正確に予測がつくっていうことですよね。

NORI選手:きっと、そうなんだと思います。

 

練習曲の選び方

NORI選手:りせさん、例えば普通の16分乱打系で、最近AAA出た曲っていうと、どんな曲ありますか。

―FUZIN RIZINです。これは、アリーナで投げられてやったら1位を取ったっていう、THEアリーナ効果みたいな。

NORI選手:FUZIN RIZINとかだと、地力が十分にあれば、PLASMA SOUL NIGHTとか全然(AAA)出るんじゃないなとか思っちゃいますよね。同じでしょっていう感じするんで。

―1つあるとすると、やっぱり疲れちゃいますね。やっぱり疲れないようにしないといけないなっていうのは最近思っていて。どうするかっていうのを最近考えてはいるんですけど、そこの答えは出ないです。

NORI選手:僕もそんなこと言ったら、Verflucht [L]後半、いつも疲れてます。どうやったら後半疲れずに押せるんだろうっていつも思います。

 

NORI選手:僕、3時間ぐらいが大体限界なんですよ。3時間超えてやるビートマニアはもう大体ろくなものにならないことが多いですよね。その3時間の間は大体いつでも自己ベが出得る気はしますね。

―僕は1時間20分ぐらいです。昔から短いんですよね。でも逆に、最初から3時間やるぐらいでやった方がいいのかもっていうような考え方はあるんですよね。

NORI選手:できないっていうのは、何が起きるんですか。僕の場合は分かりやすくて、涙が止まらなくなるし、足が痛いし、腕が痛いんですよ。

―そういうこともありますけど、でも難しいのをやらなければ、3時間できるかもしれないですね。

NORI選手:ああ、☆12を3時間やってると、それは疲れる。僕もLEGGENDARIA☆12しか選べないビートマニアやらされたら、多分2時間ぐらいで疲れる気がしますね。

―言われてみれば、自分はその辺の重い譜面選んでる(ことが多い)。そこで言うと、コンフォートゾーン的なところで、難しいのやるのが正義みたいな考え方もあるじゃないですか。

NORI選手:最近すごい思うんですけど、Verflucht [L]も皿地帯の後の1番難しいところだけで2分間構成されてるわけではないじゃないですか。前半の密度軽いところとか、それこそPLASMA SOUL NIGHTとかぐらいなんじゃないのって気はするんですよ。

NORI選手:そういった時に、例えばVerflucht [L]上手くなりたい人は、PLASMA SOUL NIGHTやっても意味ないのかっていうと、俺全然そんなことないと思ってて。脱力・認識力をPLASMA SOUL NIGHTを長くやることでつけると、Verflucht [L]の本当に難しいところまでたどり着いた時の体力の残り方って、多分増えてくと思うんですよ。PLASMA SOUL NIGHT毎日やってればVerflucht [L]上手くなる」とかは多分嘘で、Verflucht [L]の1番難しいところは、Verflucht [L]の1番難しいところでしか降ってこないので、そこは避けては通れないですけど。

NORI選手:超難しい曲を30分やるのを10分にして、難しい曲を1時間やったりした方が、良いこともあるんじゃないかな、なんて。

―(そう思うことは)あるんですよね。でも、「これ(最難関譜面を選ばない)って良くないんじゃないか」っていう感覚が先立って、超難しいやつをやりに行っちゃうんですよね。Verflucht [L]を4連奏とかやっちゃうんです。

NORI選手:わかります。

―確かに言われてみると、例えばVerflucht [L]のEXHを狙おうって思った時に、EXHゲージで言うと、最難箇所に毎回100%で入れるとしても、実は残ってる体力っていうゲージで出てこない観点で言うと、違うことはあり得ると思うんですよね。鼻歌歌いながら100%で入るのと、なんとか100%で入るのは違うと思う。だから、思ったよりも難しくない曲をやる価値はあるかもしれないですよね。

NORI選手:全然違うと思います。「それ100%フルコンできるの」みたいな話で。

 

―自分がここ最近考えるのは、簡単な曲のように難しい曲をやれたらいいなっていうのがあって。

NORI選手:ああ、それはそうですよ。

―昔は簡単な曲と難しい曲って(押し方を)変えてたんですけど、ある時ぐらいから中難易度曲のスコア狙いがクリアに良いなって気が付いた時があって、その時ぐらいから、Sleepless DaysとVerflucht [L]の間にBrokenがいるな、みたいなのを意識するようになった。自分はBrokenはSleepless Daysにはならないんですが。

NORI選手:僕もBrokenはSleepless Daysにはならないんですけど(笑)。でも最近、☆10から普通の12ぐらいまでは、全部ちょっと降ってくる量が違うぐらいで、もう難易度とかないよ、全部同じ譜面だよって思うようには意識してる気はしますね。

―そのときに、いま上手くなってる最中の人が心配・不安になるのが、そのままだと難しい譜面ができるようにならないんじゃないかってところだと思うんですよね。実際、難しい譜面をやらないといけないと思うんですが、のりみそさんの今のお話で言うと、難しい譜面をやる瞬間っていうのは言うほど長くないかもしれない、っていうのはありそうです。30分しかできない人が40分やるよりは、10分やや難しい・やや簡単なやつをやった方が良さそうっていうのが今のお話になるんですかね。

NORI選手:僕の意図としては、30分間激ムズの曲をやる日があってもいいし、 そうじゃない日もあってもいいし、そうじゃない日がクリア狙いに対して無益ってことはないので、 難しい曲だけを絶対30分やり続けなきゃいけないんだっていう風には思わないといい、になるのかなっていう気はします。

NORI選手:僕も適当ですからね、本当に。☆9でSleepless Daysやってたかと思えば、難しい☆12急にやりたいなとか思って急にやったりもしますし。

―どういう時でもニュートラルにっていう点で言うと、実は(選曲難易度を)グチャグチャにやった方がっていうのはありますよね。そういう意味でも、結構アリーナって(良い点が多い)。

NORI選手:いいです、いいです、うん。「急に?」みたいなのやらされるんですよ。

 

ニュートラルな状態を意識する

NORI選手:これは心的イメージなのかもしれないですけど、126(鍵の同時押し)しか降ってこない3ノーツの譜面があるとするじゃないですか。それって多分みんなできるじゃないですか。その前に何にもないし、後ろに何にもないから、126をニュートラルな状態から押して、またニュートラルな状態に戻る、みたいな話で。地力が上がるって、そのニュートラルな状態から何らかのボタンを押して、 またニュートラルな状態に戻るまでの時間が短いことだと、最近なんとなく思ってるんですよ。

NORI選手:縦連とかまさにいい例で、bpm150で5連打って、結構むずいじゃないですか。でも、1個しか降ってこなかったら、簡単じゃないですか。それって、あるボタンを押して、次の動作に入るまでに自分がニュートラルな状態に戻れてないから、すごく難しいと思うんですよ。

―なるほど、なるほど。

NORI選手:そのニュートラルな状態に素早く戻る練習って、 結構スコア狙いの練習で身についてきた感覚があって。ていうのも光らせるためには、 まさに横認識なんですけど、あるノーツを押して、またニュートラルな状態で次のノーツを押してっていうのができるようになってくると、その前のノーツを押した後の体の状態に依存せず、常に一定の気持ちでノーツを捌けるようになってくる気がしていて。

NORI選手:そのニュートラルに戻る時間が短くなればなるほど、スコアも上がってくし、難しい譜面をやる時の疲れ度合いとかも変わると思うんですよ。AからBの状態遷移を考えるのってすごく難しいと思うんですけど、それが常にAが絶対ニュートラルな状態で、 次このノーツ、次このノーツってやれるのって、多分すごく考えることが少ないはずで、楽なはずなんですよね。その観点で、僕は結構「クリア行き詰まった人は、スコア狙いした方がいいですよ」ってよく言うんですよね。それは☆12の難易度表で言うS+ができない人は、Sのスコア狙いじゃなくても、全然11とかでもいいと思ってて。指をニュートラルな状態に戻す練習とか、すごく意識するようにしてます。ニュートラルな位置とかいうか、心理的にもそうですよね。

 

―ここまでお話聞いてきて、実は、なんですけど。これ(ニュートラルな指の状態に戻すこと)は1個1個ではやってないことが科学的にわかっていて。ピアノの話ですけど、例えばドレミファソって弾く時、ピアノだと親指→人差し指→中指→薬指→小指としますが、ドレミファソとソファミレドだと、その1個1個の指の動きが違うっていうことがわかってるんですよ。ド→レとミ→レで、(人差し指の)動き方は違うので。ピアニストは楽譜を見た瞬間に、どういうふうに次の指を動かすか、その準備を始めるっていうのはわかっていて。

―人間は1個1個をバラバラに動かす頭にはなってなくて。 例えば物を掴もうとした時は、物を掴むって動作をするのであって。手を伸ばして指を開いて、その指を入れて閉じて、ってしようと頭は思ってなくて。

NORI選手:思ってない!

―頭は掴もうとしてるだけっていうポイントがあるんですよね。だから横認識が難しいっていうのを昔ブログに書いたんですが、要するにゲシュタルトに分解しないといけないんですよね。

―ていうことで、自然には(指の位置は)ニュートラルになってないんですよね。で、ニュートラルにすることが最適とも限らない。そのピアニストの話でもそうですけど、多分こういうニュートラルにした方が良いっていうのがあると思うんです。つまり、完全にゼロじゃなくて。あんみつは良くないけど、 全てのディレイをバラバラに分解するわけじゃないし。

NORI選手:それ最近友達に聞かれて、ディレイの認識どうやってんのって言われたんですけど。僕は左右方向に押せる単位を1として認識してるっていう話をして。例えば1234567は単位が1です。1237654は2回見て、1235467は3つに分けて見てます。

NORI選手:始点は必ずそれで合わせて、あとはジャラっと行くことを願う。だから、1234567が光らないのはそうなんですよね。 1で視点を合わせて、あとは祈るみたいな感じだからだろうなと思います。

―横認識ではなくて、実は横方向のブロック認識をしてるっていう。ここは恐らくある程度以上(ビートマニアを)やられてる方は、みんな同じ心的イメージなんじゃないかな、と思います。 

―ただ、指(の動き)でそこまで考えてる方って多くないと思うんですよね。自分は最近、近いことを考え出すようになって、そこまではっきりと「ニュートラルに戻す」とかまでは思ってなかったですが、疲れてくると姿勢が悪くなってくるとかっていうのに、ちょっと近いんですよね。

NORI選手:私、指をニュートラルに戻すとか言ってますけど、 指戻ってないんだろうな。だから指っていうより、意識なんでしょうね、多分。指は全然ニュートラルじゃないんでしょうね。

ニュートラルに戻すっていう心的イメージは、そうかなっていう風に思うんですが、実際のところで言うと ニュートラルになる幅がどれぐらいか、やや難しいところがありますよね。でも、きっとそこが1番大事ですよね。一番楽にパフォーマンスが出る状態を保つ。

NORI選手:大事だと思う。

 

ざくろさん(Tradzアドバイザー)コメント「打鍵から指が戻る時間が、 直前の打鍵内容によって異なることを意識するようにしています。」

―逆に異なることを意識するんですね。

NORI選手:でも絶対そうですよね、どんだけ元に戻そうって言ったって、5個同時押しした後からニュートラルに戻るのと、どっかの鍵盤を1個押したのとは、絶対に違うっていうのは、その通りかなと思うので。今はニュートラルじゃないぞっていうことを分かった上で、じゃあ次どう押すのかみたいなのを考えてらっしゃったりするのかもしれないですね。

―そういう意味で言うと、ニュートラルがそもそも無いといけないので、すごく簡単な譜面だと、いつもこうっていう風にはなった方がいいですよね。

 

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全2回20000文字超におよぶインタビュー記事、最後までお読みいただきありがとうございました。

 今まさにBPLプロとして活躍している選手の、貴重な視点がいくつも垣間見えたと思います。

 

個人的には、NORI選手ほどに弐寺の腕前と自己への洞察を兼ね備えた人は他にいないのでは無いか、と思わせられるインタビューとなりました。

 改めて、突然のお願いにも関わらず快くご協力くださったNORI選手、本当にありがとうございました!

 

 

引き続き、これまでのビートマニア歴で考えたこと・取り組んだことに関するインタビューに答えてくださるトッププレーヤーを探しています。このような区切り方を私がするのは大変おこがましいですが、クリア力・スコア力のどちらかで概ね世界100位前後までに該当する方であればより望ましいです*1

 インタビューにご協力くださる方や、本記事についてのご意見・ご感想のある方は、記事へのコメントあるいは冒頭のTwitterまでご一報をお願いします。


それでは、良き音ゲーライフを。

 

*1:この記事を書いている私は☆12の総合BPI・総合CPIでともに推定500位台程度です

【IIDX】一流の<心的イメージ>を手に入れよう ~NORI選手にインタビュー①~

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 

以前こちらの記事

riceplace.hatenablog.jpで、これまでのビートマニア歴で考えたこと・取り組んだことに関するインタビューに答えてくださるトッププレーヤーを募集したところ、なんとBPLプロのNORI選手からご協力を得られました。

https://p.eagate.573.jp/game/bpl/season2/2dx/team/taitostation_tradz/04/index.html

今回は、そんなNORI選手へのインタビュー*1の様子を記事にまとめたいと思います。

 以下、―で始まる段落は筆者の、それ以外はNORI選手(文章中ではのりみそさんとお呼びしています)・配信へのコメントとなっています。

 

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限界的練習と心的イメージ

―限界的練習っていうのがありまして。英語で言うとdeliberate practice、直訳すると意図的な練習だと思うんですが、そこで出てきてるのが指導者が不可欠だっていう話なんです。

NORI選手:うん、うん、はいはい。

―で、そういう教える人がいなかった所で、一流・超一流を目指すときにできることとして、一流プレイヤーの心的イメージを手に入れようっていうのが大事になってくる。そういう最高のプレーヤーが成果を上げられた理由を調べて、 同じ能力・同じ心的イメージを身につけるために、自分がどうすればいいのかを考えましょう。ってのが、この本で言ってるところになります。

NORI選手:う~ん、なるほど。

 

―ここで問題になってくるのは、その一流のプレイヤーと同じことをしろって言ってるわけではないんですよね。例えば、身長が180cmある人と160cmの人だと、プレイスタイルって変わってくる。そういう大きな違いを自分にそのまま持って来るのはできなくて。それぞれ上げてる成果が何になるのか、それぞれどういう風にやってきたのかっていうことを知る。

NORI選手:はいはいはい。

―なので、今回のりみそさんが、のりみそさんの背景でやられていく中で、のりみそさん自身がどういうふうに考えてやってこられたのかっていうのと、それによってどういう風に変わったのかっていうのを聞くことによって、じゃあ自分はどうだろうっていう風に考えるっていうのが今回のポイントです。

NORI選手:なるほど、ありがとうございます。

 

NORI選手:上達論が最近定期的にバズる時があって、TLで誰かが大体言うのが、誰かの上達論がそのままあなたに当てはまることはなくて、色んな上達論の中で、これは自分に合ってるかなみたいなものを摘んでみたり、 合ってるかどうかもわかんないけど、ちょっと試してみようかな、みたいなのをやってみたりして。自分なりの答えじゃないですけど、やり方を見つけるしかないよね、みたいなもので。恐らくこの心的イメージってものも、のりみそはどうやらそう考えてるらしいが、じゃあのりみそが考えてる通りにやればのりみそぐらいになるのかって言われたら、別にそんなことはないけど、そういう風に考えてんだなみたいなものを考えるきっかけになってくれればいいかな、みたいな感じですかね。

 

―より細かく言うと、例えば横認識っていう技術があると思うんですが、なんで横認識が大事なのかって、昔ブログ書いたりしたんですけども、結論から言うと、たぶん最先端の脳科学者もあんまり答えられないんじゃないか。

NORI選手:なるほど、なんでなんすかね。

―とはいえ、みんな横認識できていて、特にプロになるような方とかだと、ある程度難しいごちゃっとした譜面を、横方向に分離していると思うんですよね。

―それをどう考えてやっているのかっていう時に、「横認識っていうのはこういう点で重要なんだ」っていう風にプロの方がおっしゃることには、興味が実はなくて、 それって後付けの理由かもしれないっていうことなんですよね。イメージってのはそうではなくて、横認識そのものっていう感じです。

NORI選手:横認識そのもの。

 

―画面に降ってくるものを見たときに、「どういう風に見てますか?」「横方向にこう分けてるな」っていうのが心的イメージなんで、そう意識してやってるっていうことですね。

NORI選手:なんでそうしてるかは、私も多分後付けです。

―それはその人にとってそう(いう意味)なだけだってこともあると思うんです。

NORI選手:はいはいはいはい、そうですね。

 

―大事なのは、その人がそういう風(な意識)になるにはどうなったかなので。考えてることっていうのは、意識してることとか、そういう感じになるんですかね。自分もこう一言で言うとこれだっていうのはなかなか言えないのと、この本も心的イメージってのはこういうものだっていうのですごいページ数を使ってるので、やっぱり一言で言うのはなかなか難しい概念だと思うんですが。今日インタビューさせていただきつつ、そのあたりについても詰めていければな、というのもありますね。

NORI選手:整理はお任せします。

 

―今回はその中で大きく分けて3ポイントあると思いまして。

―のりみそさんが初めてビートマニアに触れてからNORI選手になるまでに、それぞれ多分うまくなるポイントがあったと思うんですよ。例えば、初めて八段を取った時、十段、皆伝、☆12でAAAが出た時みたいな。そういうそれぞれのタイミングで、こういうことをやったらこういう風になったっていうようなこととか、このタイミングはこういうことを意識したなとか、そういうことをお話しいただきたいと思っています。

―2つ目が、今まさにプロとしてこう活躍なされてるこの瞬間に、普段の練習で自己ベストを出そうっていう時に意識してること。ちょっと今回は試合本番のメンタルについては割愛させていただいて。

―3番目が、上手くいかないな、上手くならないなっていうときに何を考えて、どういうことに意識したら上手くいった。逆にどういうことを意識するとスランプが長引いた、っていうのもお聞かせ願えたらと思います。

NORI選手:いいですね。わかりました、楽しそうですね。

 

NORI選手:あんまり私、振り返ってこなかった気がしてるんすよ。自分は割と場当たり的に、今日何しようとか、直近1週間なんかこうだったから、なんかこうするかみたいなぐらいでしかなってなくて。今までどうやって練習してきましたかとか、それこそビートマニア始めてきた頃からどうやってましたかって。自分がいま普通に楽しみです。

 

皆伝の壁、☆12ハード埋め

―一番最初にご自身の中で、なりふり構わず上手くなったっていうところを超えて、「あ、壁あるな」「これどうしよう」って、最初に考えたタイミングっていつだったでしょうか。

NORI選手:壁かー……。でも、やっぱ皆伝だったかなっていう気はしますね。 

 

NORI選手:ていうのも、始めたのは6thとかなので。 まず段位みたいな概念が全然ない時期*2でもありまして。それこそ大学に入るまでって、 本当に1人だったんですよ。CSの6th〜10thとかをひたすらやってた身だったので、あんまり段位のことも、それを取るとどうとかいうのも全然なく、目の前の好きな曲をただひたすらやってるみたいな。その頃SNSとかもほとんどやってなくて、意識せずにずっと遊んでて。初めて皆伝とかいう人たちに出会ったのが、多分高3の時とか、受験のシーズンとかで、それこそ、U76NERさんとか。

 

―作品でいうとどの辺りですかね。

NORI選手:僕の年齢と作品は比例してるので、SIRIUS、リゾアン(Resort Anthem)。

―その頃の皆伝はすごかったですもんね。

NORI選手:すごかったです。あの頃の皆伝は威厳があった。で、段位に執着した経験もこれまでなかったので、その時期に、なんか周りに皆伝が多いと。で、大学入って皆伝のやつがいると。でも、なんか俺は10段しか受かんねえなみたいになって。やたら皆伝を受けまくって、嘆きの樹に今でも壊滅的な癖がつき。

 

―皆伝の正規は行っちゃ(むやみに粘着したら)ダメって言われるようになったのって、わりと皆伝出てから随分後の話ですよね。

NORI選手:そうですね、皆伝は多分DistorteDとかですよね。なんで「皆伝が受かんない受かんない」ってすごい苦労したなっていう気がします。それ以前も壁はおそらくあったと思うんですけど、それに執着する意味を感じなくて、「他にできる楽しいことやってよ」ってすぐ逃げてた気はします。

―そこはやっぱり段位というか、皆伝の功罪というか。このゲームシステムで、皆伝を受かりたくない人はいないですよね。

NORI選手:ないんですよね。

―それがこう良くも悪くも、すごく視野が狭くなっちゃうところがありますよね。 

 

―肝心なところですが、のりみそさんがそこを越えるために、意識したこと、やったことってのは何だったんでしょうか。

NORI選手:やっぱ途中で気づいたんでしょうね。皆伝だけを受け続けても、多分皆伝には受からないと気づいて。じゃあどうするかってなった時に、ちょうど7強*3というか、☆12の難易度表が当時の2ちゃんねるとかで生まれ始めた頃*4に、じゃあまずそこからやるかみたいな。「☆12にはハードを付けていくと良いぞい」みたいな。 「あ、ハードゲージって使う意味があるんだ」みたいな、感じに多分気づいたんでしょうね。

NORI選手:じゃあ☆12のハード埋めしてみるかとなって。それって、やっぱり皆伝の壁と比べて小さかったので。例えばquell~the seventh slave~、Bad Maniacs、MENDES辺りにどうにかハードつけたいなとか言って頑張って。皆伝より低い壁にぶち当たって乗り越えていく、みたいなことをしてたんじゃないのかなと思いますね。

 

―じゃあ最初のところで言うと、同じことをやり続けていてもダメそうと考えて、☆12っていう難易度の中で、それを順番にやっていくことで、指標にしようっていう。要するに今では常識になってるような考え方が、当時はなかったってことですよね。

NORI選手:言われてみればそうですよね。体感的に蠍火がめっちゃ難しいとか、冥がやばいとかはあったんですけど。特別難しい、できないけどできそう、 ちょっと難しい、簡単の4段階ぐらいしか、自分の体の中にはなかった気がしますね。

―今そんなこと言ったらびっくりされちゃいますよね。

NORI選手:びっくりされますよね、CPIもBPIも☆12難度表もない世界みたいな。うん、今となってはなかなか信じらんないような時代だなと思いますよね。

 

上京、ライバルたちとの出会い

NORI選手:明確に皆伝っていう壁を乗り越えられた原動力としては、☆12のハード埋めだったんですけど。田舎の少年がですね、大学に来て、東京の大学で「え、ビートマニアって俺以外に遊んでる人いるんだ」みたいな感じになるわけですよ。高校に1人いたんですけど、 彼は十段前半か九段ぐらいだったのかな。まあ、お山の大将じゃないですけど、 1番うまい存在だったと思ったら、「同級生に皆伝いるじゃん」みたいになって。

NORI選手:その時はmixiで、「え、東大生ってこんなに皆伝いるの」みたいな感じになって、世界を知って、その人たちに追いつきたいみたいな。他人との比較が多分大学生になってから初めてやった概念で。誰が最初に全白になるのか、みたいなレースをしてたこともあったので、そこで否応無しに、「やばい、あいつが嘆き埋めたぞ」とか「バドマニに埋めたぞ」とか。俺も黙ってらんねえ、みたいな時期だったかなと思います。

 

―やっぱりそこで、クリア力みたいなものを比較する状況にもなったし、環境にもなったって感じですよね。

NORI選手:だと思います。周りの人がどうやってるかとか、どうやってやってけば良いかみたいなのが手に入るようになったし、それを欲しいと思うことは、かなり上手くなっていくにあたっては必要な要素だったかなっていう。

 

―じゃあ、その最初の壁を越えて、☆12をハード埋めしてみようっていうところから先は、またやればやるだけうまい期になったっていう感じですかね。

NORI選手:そうですね。だから皆伝から後で明確な壁って言われると、やっぱり穴冥ハード、穴冥AAAみたいな感じになりますね。もう冥に人生をなんか狂わされてる感じは結構しますね(笑)。 
NORI選手:最近だと、やっぱ3700*5とかも出ないな出ないなとか思ってましたし。これは多分古い人間なんでしょうけど、穴冥が全てのチェックポイントになってる感じはします。でも、皆伝ほどの壁ではなかったかなって感じはしますね。

 

―ちなみに穴冥ハード、穴冥AAAはどういう風に突破しましたか。

NORI選手穴冥はわりと充分な地力をつけて、殴った感じがします。とりあえず1000回とかやりたくなかったので。多分その頃にはEXHランプもあったので、 できるEXHランプをどんどん点けて行って、たまにランダムでやって、BPが20みたいなときに後100回もやればできるかな、やりたくねえなぐらいまで回り道してやった感じがします。

NORI選手:それもおそらく皆伝で学んだんじゃないですかね。できないことをやり続けてもしょうがないので、それ以外で上達を頑張って、大目標をたまに狙うみたいな。私のやり方は、多分そうなんだろうなと思います。

 

―ちなみに、穴冥ハードまで地力上げていくにあたっては、そんなに壁はなかったですか。

NORI選手:いや、でも苦労はしてたんですけど。 たまにやってダメなら、またちょっと他のEXHとか、その頃多分スコア狙いとかもやり始めてたと思うんですけど。そうですね、そんなに苦労はしてなかった気はしますね。なんかもう、他人との比較がとにかく楽しい時期だったと思うので。何も考えずとも、大学終わったらゲーセン行って、ビートマニアいっぱいやるみたいな時期だったので、気づいたら上手くなってた気はします。

NORI選手:時間はかかったし、穴冥ハードできないなってずっと思ってたけど、 その間にめちゃめちゃ長いプラトーがあったみたいな感じはしないですね。多分、着実に上手くなっていて、例えば半年前とかでも、3時間粘着したら穴冥ハードできてたのかもしれないですけど、僕は多分それをやらなかったんだと思います。

―じゃあ、ビートマニアをやっていて、目の前のあれこれそのものが楽しいっていう。

NORI選手:そうですね。かなと思います。

 

―これ以降は壁ってありましたか。

NORI選手:そうですね、あんまりないのかなあ、そういう意味では。

NORI選手:もちろん、いま例えば、僕はU*TAKAさんに叙情がワンチャンあるぐらいで、その勝てないことを壁と形容するなら、それは壁なんですけど。

―結構それこそ、まさに心的イメージかなっていうところはあって、 要するに無限に高いところに(目標を)設定すると、すべて壁になると思うんですよね。

NORI選手:ですよね。そうなんですよ。

 

―だからそこは、記事でもちょっと書いたんですけど、あまりに難しい課題とか高すぎる目標とか設定すると、それってむしろコンフォート。そこでアイデンティティが出来上がっちゃうっていうところもあるんですかね。

NORI選手:そうっすね、難しいですね。 なんで、言われてみると壁はあんまり感じたことがなかったかなと思います。

NORI選手:多分、壁って(言い)替えると長期的な目標とかになると思うんですよ、しかも達成が結構難しい。なんか、それを常に持ちながらビートマニアをするのは、辛いんじゃないかなっていう気が。

 

BPLプロとして

NORI選手:最近で言うと、僕は今BPLでプロやらせていただいていて、その巡目も4巡目で、 同じチームにはRIOOさんとPPJTさんとたっちゃん(TATSU選手)がいてってことを考えると、どう考えても僕が大将戦に出ることって、まあ多分なくて。そうすると、僕が出るべき場所って先峰か中堅かで、そうするとやる曲って☆11以下。

NORI選手:☆11以下で何しなきゃいけないかっていうと、自分を除く31人のバケモンみたいな人たちみたいに、いわゆる天井スコアみたいなものを出さなきゃいけない。っていうことを考えると、自分が毎日ゲームセンター行って意識することは、もう任意の曲で1桁落ちを出すとかいうことが目標になるので、なんかもう1ノーツも黄ばませない気持ちで、ビートマニアをただやるみたいな感じですね。無理なんですけど。なんで、黄グレが出た時は、なんでいま黄グレ出たんだろうなって、やっぱ考えますよね。認識が遅れたのか、 指がこんがらがってたのか、みたいな感じ。


―誰か上手な方が言ってたんですよね、理由がわからない黄ばみをなくすみたいな。

NORI選手:ああ、誰か言ってた気がする。

—例えば、Liberationのトリルが67に来ちゃったみたいなのはいいとして、交互で一応取れるところに来たし、予測もできてたのに、黄ばんだならどうするかとか。そういうことかなって自分は理解してるんですけど。

youtu.be

NORI選手:おっしゃる通りだと思います。

—67に来ても34に来ても17に来ても何も考えずに、「やっぱりLiberationのトリルは難しいな」っていう風に思うのかは、やっぱり変わってくるのかなっていうところありますよね。

NORI選手:そうですね。本当に全ての黄グレに、理由付けをするようにはしてるかもしれないです。

 

—疲れちゃいそうですけど……。

NORI選手:上手くなってきたことで、例えば1000ノーツ叩いて反省すべき箇所が10か所とかになると、まあそんなに疲れないですよ。

—なるほど、なるほど。そういう点でも、やっぱりあまりにも考えることが多すぎるっていうのは、効率が悪いのかもしれないですよね。

NORI選手:そうですね。なんで、僕も最初はある1小節でみたいな単位でやってましたよ。Todestriebの16分が降ってくるまでに黄ばんだら、筐体の床が開いて落ちてしまうみたいな、そういう感じでよくやってましたよ。気づいたら、それがちょっと伸びてきたのかな、みたいな感じはしますね。

www.youtube.com(16分が降ってくるのは動画0:40頃)


NORI選手:あとは、やっぱりBPLって形式なので課題曲があるわけで、わりと個別の曲に対しての研究とかは多いですよね。

—研究するにあたって考えてることっていうのは、何かありますか。例えば、譜面サイトで譜面見るとか、ハンクラを聞くとか。いわゆる座学って、いろんなやり方があると思うんですが。

NORI選手:これは結構人によります。PPJTさんとか、すごく予測がうまいんですよ。DOLCE.さん、U*TAKAくんも、なんかそういうの詳しい気がするし。

 

—1巡目の人がみんなやってるってほどでもないんですか。

NORI選手:例えば、MIKAMOさんが「これがここ来たからこれだね」っておっしゃってるイメージって、僕はあんまりない気がするんですけど、わかんないです。「いや、やってるよ」って言われたら、あの、ごめんなさいって感じです(笑)。

—穴冥のメインサブは皆さん気にしてると思いますけど、そのレベル感で全部の課題曲を把握してる人ばっかりじゃないっていうことですかね。

NORI選手:と思いますけどね、そんな気はしますね。


—のりみそさんの場合はどうなんでしょう。

NORI選手:僕はすごいそういうのできない人です。僕、ruin of opalsって曲めちゃめちゃ好きですけど、どのノーツがバスになるとか、何にも知らないですもん。最初割れると押しやすいんだよねってのは知ってるんですけど、何がどうしたら割れるのかも何も知らないですし。

NORI選手:わりと研究座学よりかはプレイして。僕は"歌えるようにする"って自分でよく言ってるんですけど、曲のリズムをひたすら体に染み込ませるようなやり方になりますね。それが多分良くて、この間のBackyard Starsみたいな、一般的にリズム難と呼ばれるような曲であっても、なんかまあ曲の通り押しゃあいいんだろうみたいな感じでやるようになってるのかなっていう気はします。

youtu.be


NORI選手:逆に均等な16分とかはもう均等なので、リズムも何もないみたいな。

—すごく浅い考えだと、変リズムが覚えられる人は、当然普通のリズムを覚えられるんじゃないかっていう風に思うんですけど。

NORI選手:いや、でも正しくて、僕のBPLの役立ち方というか。みんなが95点とる曲で 95点取るのは苦手なんですけど、平均点が70点の曲で90点取るのは好きなんですよ。もちろん、その16分の普通の綺麗なリズムの曲も、多分90点ぐらいは出るんですけど、周りの人は全然95点出るんですよ。

—最近ちょっとそういう戦いが多いですよね、BPL。

NORI選手:そういう戦いが多いです。なので僕はストラテジーカードが飛んできやすいんだろうなっていうのは思ってるので、今んとこ100%でいただいているので。

NORI選手:だからそれをどうにかしなきゃいけないっていうので、1ノーツも黄ばませない、基礎精度の向上が何よりも必須なんだなって、思ってるところですかね。

—なるほど、なるほど。

 

NORI選手:それこそ、もうチームメンバーに聞きます。あと、アドバイザー。PPJTさんとか4000クレとかじゃ利かないぐらいやってた時期があったとか聞いてるので、いろんな曲に対しての解像度がめちゃめちゃ高いんですよ。 
なので、僕が10曲やって「この曲ってここ難しいから意識した方がいいんだな」っていう気付きを、既に持ってらっしゃることが多いので、教えていただくような感じですよね。

—曲の解像度が高いって、いい表現ですよね。頭の中に「この曲ってこうだよね」みたいなのがある人とない人がいて、ない人が上手くないわけではないと思うんですが。 やっぱりある人は、少なくとも人にアドバイスするのとかって上手ですよね。練習曲が、ぽんと出てくるみたいな。

NORI選手:そうですね、まさにそう。

 

目標の小ささを意識する

コメント「大きな目標を持ちつつ、小さい目標をこまめに設定するのがよい」

NORI選手:僕はあの、 今「あなたの大きな目標ってなんですか」って言われると、最初にもそんな話したと思うんですけど、長期目標みたいなのはあんまり立ててないんで。多分それはあんまり良くないんだろうなと思いつつも、これまで逆に小さい目標を設定して、それをこなしていったところ、ある程度山は登れてるようになってるので。それは運がいいのか、 本能的に小さい目標立てがうまくできてるのか。

 

—心的イメージっていうことで言うと、"目標を立てる"とは、っていうところが結構ポイントになるんじゃないかと思うんですが。その小さい目標を立てるにあたって意識してることってありますか。

NORI選手:1回ゲーセンに行ったら、次ゲーセンに行ったら、多分できるなぐらいの壁の高さにしてる気がします。小ささですよね。

小ささを意識してるっていう感じですかね。

NORI:うん、じゃないと嫌になっちゃうんで。

 

NORI選手:だから、BPLの期間って結構辛いんですよね。対戦相手とかがわかってて、飛んでくる曲とかもなんとなく予想がついてたりするときとかは。

NORI選手:それこそ僕、明日ゲーパニ戦だからMIKAMOさんとやるんですよ、☆10のCHORDで。でも、MIKAMOさんのスコアと比較したくなんかないけど、 試合なんでしなきゃいけなくて。で、それって、次ゲームセンターに行ったら、達成できないですよ。なんで、多分スタンダードモードを選んだ瞬間に、その小さい目標を多分作ってるんですけど。 そんな計画立てて、ゲームセンター行ってないので。

youtu.be

NORI選手:で、多分そのMIKAMOさんになんとか勝てるかもしれない曲を作り出さなきゃいけないっていうのが、まさにコンフォートゾーンを抜け出すというか、限界的練習ということなんだろうなっていう気はしてます。

 

—そこで言うと、目標立てとしてのりみそさんが慣れてらっしゃるのかなっていうところですよね。フィードバックとかにも繋がりますが、結局そのクレジットが終わった瞬間には、フィードバックが返ってくると思うんです。

NORI選手:そうですね、ああ、できなかったなみたいな。極端に言うと、言われてみればですけど、もう、その次の曲、次の曲でワンチャン伸びる気がするっていうのを やってる気がしますね。それはやっぱり、例えばBPI的にもうちょっと出る気がするとか。それこそBPLの他の選手見て、 あの人がこの点数なら俺ならもうちょっと実は出るか、みたいなのを持ってやってみるとかになるんですかね。

 

NORI選手:だから(BPL)オンシーズンは「MIKAMOさんに勝て」みたいな感じになるので、小さい目標もくそもねえよみたいな感じになっちゃって。多分、息抜きに小さい目標をこなして「大丈夫。俺は上手くなってるんだ」って言い聞かせるような感じでやってますかね。

NORI選手:だから、やっぱりBeat Motivatorとかがあるので、 99%の表の曲が1個増えたとか。やっぱり嬉しいですし、そんな感じでやってることが多いですかね。

 

”終わった”スコアとの向き合い方

—既にやってる曲、この場合ランプよりスコアの方がわかりやすいと思いますけど、このスコア十分高いなっていう風な曲で、どうするかっていう問題が結構出てくるのかなと思うんですよね。

NORI選手:それ、すごいあります。もう満足スコアですよね、 自分的な。

—俗に言う”終わった”やつですよね。

NORI選手:そうです。だから、僕もAA3600*6初めて超えてから、多分AA1回も選んでないと思うんですけど。

 

—それってどう思いますか。やっぱりやった方がいいのか、終わってないやつやった方がいいのか。
NORI選手:難しいなとは思うんですけど。終わったか終わってないか基準って、僕の考えですよ、自分の身の周りの人たち・ライバルを見て、なんか俺が1番うまいなってなった時が終わったスコアになると思うんですよ。

NORI選手:AA3600とかは、キリの良さとか、もう歴史的な、こうAA3600出たらランカーみたいなのがあったりするので、外的な要因だと思うんですけど。それをいいライバルを持つと、ライバルが急に50点とか更新して、 「ああ、これって全然終わってないんだ」みたいな感じで叩きのめされる瞬間があって。それがあると終わってないスコアなので、終わったと思って手をつけてなかった曲を触り始められるような曲になるので。

 

—逆に言うと、そこまでは終わらせといていいかなっていう感じですかね。

NORI選手:そうですね、その曲が好きなら(プレイすれば良い)じゃないですかね。全ての曲を、自分の上振れ100%3σ*7のスコア出すまでやり込むぞ、みたいなのはそんなに意味はないかなっていう気はします。

―そうですよね。1000回やって1回を出すのにどれぐらい意味があるのかっていうのは、自己ベが一番の正義だった時代でも、ちょっと悩ましいところですよね。人間は無限にやっても時間の制約があって、1日に100クレはできない中でどうするのかっていうのは。
NORI選手:そうですね。もちろん歴代狙ってる人達とかになると、 やっぱり自分の中の100%のスコアを、それこそ1日100回も同じ曲やって出したりすることに意味があったりするのかなと思うんですけど。私はあいにく多分歴代を取るとかいう人間ではないので。

 

―どっちかというと、自分との比較っていうよりは、ライバル・周りの人と比較がモチベーションになってるっていう感じですかね。

NORI選手:もう完全にそうですね。

―それで言うと、歴代を狙うような人たちも、ライバルの比較が自分との比較に変わっただけなのかなっていう気はちょっとしちゃいます。

NORI選手:うん、そうですね、そうなんでしょうね。 ああ、大変なことしてるなあ。

 

―自分が上手くなったら、今度は自分の中で終わってないスコアになるっていう感じですよね。

NORI選手:だと思います。その到達っていうのは、今の自分の実力での到達したスコアが出たっていうだけなので。それで、例えば新しくクリアランプがつくとか。他の曲で「え、俺こんなスコア出るんだ」みたいな経験が積めた時に、最近あの曲やってないし、今1番ライバルの中でもうまいけど、でも俺はあの時より上手くなってると思うから、 もう1回やろうかな。みたいなのは結構あって。それは成長の実感になるので、1ヶ月前の自分が終わらせたスコアを今やってみるっていうのは、結構やるかもしれないです。

 

―心的イメージで言うと、MAXは誰が見てもMAXなのでMAXなんですけど、"終わった"かどうかってのも心的イメージだと思うんですよね。

NORI選手:いや、まさにそうだと思います。

―ライバルとの比較っていうのは結構わかりやすいとは思うんですが、 その代替がBPIやCPIになってくるわけですけれども、それがあると無いとって結構変わってきますよね。

NORI選手:変わってくると思います。

 

―逆にCPIの、まあBPIもそうだと思うんですけど、良くないところが、そこの基準があくまで1個の基準にしか過ぎないんで、言うほど難しくないこともあるし、言うほど簡単じゃないこととかもあったりして。だから、やっぱりCPI作った自分もあまりCPIのことは実は信用してない。

NORI選手そこは一緒ですね、僕もBPIのことは何も信用してないので。

―いや、こういうことを言うと、何なんだって感じになっちゃいますけど(笑)。(適正CPIのブレは)プラマイ50の間には入ると思ってます。CPI難度表の基準が50で分かれてますけど、やっぱり1個上1個下(の基準)には結構行かないですよね。

NORI選手:そうですね、そんな気はします。「確かにここで線引かれるのは納得するな」みたいなところに線引かれてるなとは思います。

 

―ここで言うと、(歴代レベルで)終わった終わってないみたいな時とかは、だんだんその線がシビアになってくると思って。そのレベルの世界観のことはちょっと、やっぱり自分はイメージつかないですね。

NORI選手:正直、自分もわかんないですね、まだ。

―ぶっちゃけ、6個と4個と2個と0個がどう違うのかってちょっとわかんないですよね。

NORI選手:僕の感覚だと、やっぱもう10と9は全然なんか違うんすよねえ。多分そんなにきっと差はない。よく考えたらない差はないんですけど。

―1桁か2桁かっていうことですか?

NORI選手:もう完全にそうだと思います。十進法のせいだと思う

―そこは気持ちの問題ですか。

NORI選手:ですし、きっと多分2と1と0は全部違うんだろうなって思います。 あんまり僕がそこまで詰め切ったことがないのであれですが。

 

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インタビュー後半は、

riceplace.hatenablog.jpをご覧ください。

 

 

引き続き、これまでのビートマニア歴で考えたこと・取り組んだことに関するインタビューに答えてくださるトッププレーヤーを探しています。このような区切り方を私がするのは大変おこがましいですが、クリア力・スコア力のどちらかで概ね世界100位前後までに該当する方であればより望ましいです*8

 インタビューにご協力くださる方や、本記事についてのご意見・ご感想のある方は、記事へのコメントあるいは冒頭の Twitterまでご一報をお願いします。


それでは、良き 音ゲーライフを。

*1:2022/8/23にYoutube上で行いました。該当動画は現在非公開としております

*2:段位認定は7thから

*3:当時の7強はAlmagest、Go Beyond!!、perditus†paradisus、冥、卑弥呼、灼熱Beach Side Bunny、3y3s

*4:☆12難易度表の歴史は十段スレの難易度表の歴史 | BPM@パプログ!↑に詳しい

*5:穴冥AAAは3556点

*6:AAの理論値は3668

*7:ここでは発生確率0.3%の上振れの意味

*8:この記事を書いている私は☆12の総合BPI・総合CPIでともに推定500位台程度です

ビートマニアと「限界的練習」

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 

今回は、こちらの本

books.bunshun.jpを読んだので、ビートマニアの上達と関わりがありそうな部分を一部引用し、個人的な意見・感想も加えてみようと思います。

 

限界的練習(deliberate practice)とは

上述の本で、著者は以下のように紹介されています。

フロリダ州立大学心理学部教授。「なぜどんな分野にも、超一流と呼ばれる人が存在するのか」という疑問から、30年以上にわたり、スポーツ、音楽、チェスなど、あらゆる分野における「超一流」たちのパフォーマンスを科学的に研究。そこから、どの分野においても、トッププレーヤーは必ずある共通の練習法を採用していることを突き止め、それを「限界的練習(deliberate practice)」理論として発表した。(後略)

限界的練習の理論は多分野にわたって広く知られているようで、医学生物学関連の学術文献検索サイトでは、タイトル・抄録に"deliberate practice"を含む文献が850件以上ヒットしました。

 比較的ビートマニアと近いことをやっていると考えられるピアノの初見演奏*1に関しても、その能力の半分程度は限界的練習によって説明が付くと主張する論文があります。

 すなわち、ビートマニアの上達方法を探る上で、限界的練習を参照することは的外れでは無さそうだと考えられます。

 

能力レベルに応じた3段階の練習方法

ここから具体的に本の内容を見ていきます。

『超一流になるのは才能か努力か?』では、上達に応じて必要な3段階の練習方法があることを示しています。

 

1段階目は誰しもが新たなスキルを獲得するときに行うやり方です。

どんなことをできるようになりたいかという漠然としたアイデアから出発し、教師、コーチ、教則本、あるいはウェブサイトから方法を学び、許容できるレベルに到達するまで練習する。そうすると自然と体が動くようになる。この方法が別に悪いわけではない。人生における大方のことについては、そこそこのレベルに到達し、それで良しとしてもまったく問題はない。A地点からB地点まで安全に運転できればいいとか、ピアノで『エリーゼのために』を弾けるようになれたらいいというのであれば、この練習法で十分だ。

- 以下、『超一流になるのは才能か努力か?』第一章より、太字は編者

 

ビートマニアにおいては、初めて鍵盤を叩いたその日から自然とこの練習法を行うことになります。

 そこそこのレベルというのがどの程度かは、身近な上級者の存在・それまでの音ゲー経験の有無などにも大きく左右されると思いますが、多くのプレイヤーはSP七段~八段あたりまでに一度は壁にぶつかるのでは無いかと思われます。

 壁となる要素は人それぞれですが、大体このくらいの段位から見えたものをそのまま自然に押そうとするだけでは対応が困難な譜面パターンが増えてくるような気がします。その最たる例が七段ボスTHE SAFARI(HYPER)でしょう。

いわゆるテレテレテッテ地帯は、微縦連との混合フレーズによって
他の☆10と比較して極めて視認性が低くなっている。
譜面画像はてふたげ(https://textage.cc/)様より

筆者エリクソンは、このように「自然に何かができるというレベルでは満足できない場合」の壁の破り方として、2段階目の練習法、『目的のある練習』を明文化しています。

 

「目的のある練習」の4つの原則

原則一
一、目的のある練習には、はっきりと定義された具体的目標がある

 本では、愚直に練習を繰り返すもののなかなか上達しない音楽学校の生徒を例に挙げて、次のように述べています。

(前略)生徒に次のような練習目標が与えられていたら、彼ははるかに上達していただろう。「課題曲を適切な速さでミスなく最後まで三回連続して弾けること」。そのような目標がないと、その日の練習がうまくいったかどうか判断することもできない。

 ビートマニアでは、例えば

  「七段に合格する」→「サファリを正規or鏡で段位ゲージで突破する」

とより具体的に言い換え、その目標を達成するために

  ①「サファリ開始までに○%ゲージを残す」

  ②「サファリの難所でゲージを保つ」

  ③「サファリの簡単な部分のミスを減らす」

と目標を細分化し、それぞれを具体的に達成するために例えば

  ②ー①「プレイ動画を見てゲージが減っている原因を考える」

  ②ー②「難所を押しやすいオプション・運指を考える」

  ②ー③「難所のリズムを把握する」

  ②ー④「押せていない・見えていないなら同系統の別の譜面も触る」

  ②ー⑤「必要以上に押しすぎているなら思い切ってノーツを間引いてみる」

  ②ー⑥「難所で緊張するならランダムで何度もプレイして曲に慣れる」

……などなど、より定義を明確にして目標を具体的にし、行った練習が目標に対して上手く行ったかどうかを検証できるようにすることが重要です。

 

ここまでお読みになった中には、「当たり前のことを言ってるだけ」「そんなことはわざわざ考えなくても無意識にやってる」と感じる方もいると思います。

 その感覚は正しいと思います。少なくともこの2段階目『目的のある練習』までは、それほど目新しい特別な内容が書かれているとは、私は思いませんでした。

 とはいえ明文化して「4つの原則」のようにまとめられたことは、例えば他人にアドバイスなどを伝える際には効果的ですし、自分だけでもスランプに陥って思考が狭小化しているときなど有効な場面は多いと思います。何よりビートマニア以外に対しても汎用的に役立ちます

 

原則二

二、目的のある練習は集中して行う

 この原則は本当に文字通りですが、得てして弐寺erは選曲画面に入った途端に直前のプレイで考えていたことを忘れがちです。

 その瞬間の気分で好きな曲をプレイするのは全く悪いことではありませんが、「上達のために練習している」と思って投入したクレジットだけでも、「何となくquasar」「何となくAA」で何となく練習した気になるのは控えたいものです。

 真剣にやるなら、ゲーセンに着く前に原則一で提示したようなその日の具体的な課題を決めておき、具体的な練習譜面一覧をスマホに用意しておくのが良いでしょう。そうすれば、プレイ中に次やるべき譜面を考えるような事態も防げます。

 

原則三

三、目的のある練習にはフィードバックが不可欠

 筆者は自身の学生スティーブに対して、ランダムな数字列を暗唱させる課題を出した際のことをこう記しています。

われわれの記憶力の実験では、スティーブは挑戦のたびにシンプルかつ直接的なフィードバックを受けた。記憶は正しかったのか、不正確だったのか、成功したのか、失敗したのか、と。彼は自分の状態を常に理解していたのだ。

 この点はビートマニア含むビデオゲーム全般の良いところで、一曲ごとにリザルトという形で客観的かつ総合的なフィードバックが帰って来ます。

 しかしそのようなフィードバックが十分なものとは限りません。カーネギーメロン大学生であったスティーブの凄いところはここからです。

だが、それ以上に重要なフィードバックは、スティーブ自身の取り組みだった。スティーブは自分が数字の並びのどの部分に手を焼いているのか、じっくり観察していた。正解できなかったときには、なぜ間違えたのか、またどの数字を間違えたのか、たいてい正確に把握していた。(中略)自分の弱みがどこであるかわかっていたために、適切な部分に注意を向け、弱みを解決するような新たな記憶テクニックを考案することができたのだ。

 要するにスティーブは、自身の暗唱結果に対するフィードバックの解像度が高いのです。

 ビートマニアのリザルトは、2分間のプレイ結果をまとめて表示しているだけに過ぎず、押せなかったノーツの押せなかった理由を報告してくれるわけではありません。最近はプレイ中の細かい情報や鍵盤ごとの精度なども(新筐体なら)参照できるようになりましたし、自分でカメラを用意せずとも課金してプレイ動画を保存できるようになりました。

 フィードバックの解像度は、原則一とも極めて深く関係します。目標を細分化するためには、自分の現状を正確に把握する必要があります

 私の例を出すと、最後の未難だったΧ-DENを攻略するためにプレイ動画を撮影したら、決まって卑弥呼地帯の縦連を押し過ぎていることがわかりました。鍵盤の押し過ぎ・皿の回し過ぎに自分の感覚だけで気付くのは難しく、「地力は足りているはずなのに何故か上手く行かない」と悩む要因になりがちです。現に自分も他人にそのようなアドバイスをしたことがあったのに、自分ではプレイ動画を見返すまで気付かなかったのです。

 そういう意味では身近に自分と同程度以上の腕前を持つプレイヤーがいるのは重要かもしれません(後述します)。

原則四

四、目的のある練習には、居心地の良い領域(コンフォート・ゾーン)から飛び出すことが必要

 筆者は4つの原則の中でこれが「最も重要」だと指摘しています。

 先述のなかなか上達しない音楽学校の生徒の話に戻りますが、

(前略)自分にとって勝手のわかった、居心地の良い領域を超えようと努力した形跡が見られない。生徒の言葉からは、すでに楽にできるところを超えて努力することのない、かなり漫然とした練習姿勢が透けて見える。こんなやり方では絶対にうまくいかない。

と、筆者はなかなか厳しい注文を付けています。

 本の中では別の例として、ベンジャミン・フランクリンのチェスの腕前を挙げています。日本でフランクリンは凧を使って雷が電気だと示した実験で有名ですが、政治家、外交官、著述家としても卓越した業績を残しており、アメリカでは100ドル紙幣の顔にもなっています。

 一方でチェスに関してはいわゆる下手の横好きだったようで、

このようにベンジャミン・フランクリンは頭脳明晰で、チェスに何千時間も費やし、当代屈指のプレーヤーとも打ったことがある。では、それによってフランクリンは優れたチェスプレーヤーとなったのか。答えは否だ。(中略)今日の私たちには、その理由がはっきりわかっている。あえてコンフォート・ゾーンから出ようとしなかった、そして上達するのに必要な、長時間にわたる目的のある練習をしなかったためだ。同じ曲ばかり三〇年間弾き続けているアマチュアピアニストのようなものだ。それでは向上ではなく、停滞するのが当然だ。

と、筆者はアメリカ合衆国建国の父を容赦なくバッサリ切り捨てています(アメリカ人にとってフランクリンが偉大なことは説明不要だからかもしれません)。

 

フランクリンも自分が努力していないつもりでは無かったでしょうし、「当代屈指のプレーヤー」と対局するなどの挑戦は行っていたのです。

 一方で、これが真にコンフォート・ゾーンを超えた練習であったかは疑問です。「当代屈指のプレーヤー」には負けるのが当然だと考えられ、言わば胸を借りるだけになってしまうこともありそうです。

 ビートマニアでも、簡単すぎる譜面だけではなく、難しすぎる譜面も練習にならないことがあります。BPが山のように出てゲージが地を這う譜面をプレイして、「やっぱり難しい譜面は難しいな、でも何となく練習になったな」と満足してしまうことは無いでしょうか。

 

コンフォート・ゾーンを超えた、言わば「不快な」譜面というのは、例えば「見えてるのに押せない」や「初めは押せるのに段々押せなくなる」や「覚えないと押せない」といった譜面では無いでしょうか。

 弊サイトCPIでまず初めにリコメンド機能を搭載したのも、そういったコンフォート・ゾーンを超えた譜面たちを一目瞭然にしたいという意図がありました。そのため、リコメンド一覧を見ると生みの親の私も極めて「不快な」気持ちになることがあります。そのような譜面から逃げてはいけないと、頭ではわかっているんですが……。

 

さて、ここまで4つの原則を紹介しましたが、それでもなお「その程度のことは全てやっているが、その上で停滞している」と考える人がいるかもしれません。その人たちは次なる段階の練習法に進む前に、筆者のこの提案を試してみるのも良いかもしれません。

壁を乗り越えるのに一番良い方法は、別の方向から攻めてみること

 数字を暗唱していた学生スティーブの話に戻ります。

ティーブは数字が二二個に達した時点でそんな壁にぶつかった。そのときは四つずつ四グループにまとめてさまざまな記憶術の方法を駆使して記憶し、そこに最後の六つの「リハーサルグループ」を加えるという覚え方をしていた。(中略)だが、最初はどうすれば二二個の壁を越えられるか、どうしてもわからなかった。頭の中で数字を四個ずつ五つのグループにまとめていたが、グループの並び順で混乱してしまったのだ。

 スティーブは新たな方法を自力で編み出します。

最終的に数字三個のグループと四個のグループを併用するというアイデアを思いつき、それが数字四個のグループを四つ、数字三個のグループを四つ、それに数字六つのリハーサルグループを加えるというブレークスルーにつながり、最大三四個まで覚えられるようになった。

 スティーブはその後も壁にぶつかるたびに新たな手法を探し、最終的には82個もの数字列を一回耳にしただけで暗唱できるようになったのでした。筆者のもとに訪れた初めの数日は、7~9個の記憶が限界なごく人並みの成績だったことを考えると、これは驚異的な事実です。

 

ビートマニアの話に戻ると、例えば普段選ばない曲を触ってみる、オプションを変えてみる、姿勢を変えてみる、ウォーミングアップを工夫してみる……などでしょうか。

 また私事になりますが、Χ-DENハードを達成した最も直接的な変更点は、緑数字を278から280に増やしたことでした。とはいえ、同様の工夫は以前に何度か試したことがあり、その際には目立った成果は得られなかったのです。このことから、手当たり次第に新たな手法を試しても効率的ではなく、適切なタイミングで適切な変化を加える必要がありそうだと考えられます。

 

筆者はこの点に関しても、身近な上級者の存在が必要だと強調しています。

(前略)教師やコーチの存在が役立つ理由の一つはここにある。あなたが直面する壁がどのようなものかを、すでに経験している人であれば、その克服法を提案してくれるだろう。ときには壁が精神的なもののこともある。

 私がやった「高難度譜面の攻略で緑数字を増やす」というアプローチも、同様のやり方で上手く行った先達の例をいくつか見たことがあったので、手札として取り出せたというだけです。誰も思い付かなかった新しいアイデアを閃くことはとても難しいです。

 

超一流を目指す「限界的練習」には指導者が必要不可欠

いよいよ「目的のある練習」を越えた3段階目についてですが、結論から言うと現状のビートマニア環境では誰もがアクセスできる練習法ではありません。

 なぜなら、筆者の言に従うと

(前略)限界的練習には、学習者に対し、技能向上に役立つ練習活動を指示する教師が必要だ。当然ながらそうした教師が存在する前提として、まずは他人に伝授できるような練習方法によって一定の技能レベルに到達した個人が存在しなければならない

- 以下、『超一流になるのは才能か努力か?』第四章より、太字は編者

からです。早い話が、楽器・スポーツと同様にレッスンプロの存在が必要だということです。優れたレッスンプロは、前述の「目的のある練習」をさらに洗練させることができ、上級者を超上級者に引き上げることが可能なのです。

 指導を受けるプレーヤーに対して、レッスンプロが常に上級である必要はありません。筆者は本の中で、モーツァルトを熱心に指導した父レオポルト・モーツァルトの事例や、3人の娘を世界的チェスプレーヤーに育て、うち1人は歴史上最強の女性チェスプレーヤーとなった、心理学者ラズロ・ポルガーの例を挙げています。どちらの例でも、子供は親の腕前を十代前半までには追い抜いてしまったそうです。

 

優れた指導者たる秘訣は本書の核心部分ですし、一般プレーヤーの多くには関係が薄い部分なので本記事では割愛しますが、筆者はレッスンプロのいないような分野においても

最高のプレーヤーを特定し(中略)、それほどの成果をあげられたのはなぜかを調べ、同じ能力を身につけるための訓練方法を考案すればいい。レッスン内容を考えてくれる教師役はいないかもしれないが、過去のエキスパートが本やインタビューで語っているアドバイスを参考にすることはできる。

 とトッププレーヤーから学ぶことの重要性は強調しています。

 ここで重要なのは、トッププレーヤーの言うことをそのまま真似したり、全く同じ練習法を行うわけではない点だと思います。必要なのは、あくまで「同じ能力を身につけるための訓練」です。

 例えば、別の音ゲーでトッププレーヤーになった後、ビートマニアも触れるようになってそちらもトップになった人の練習法は、多くの人にとってそのまま真似られるものでは無いはずです。全てのプレーヤーにおいて、身長・手の大きさ・筋肉の付き方・楽器や音ゲー経験などなど、背景は十人十色なことに注意する必要があります

 

この点において避けられないのが才能と努力の議論でしょう。この本の筆者エリクソン教授はほとんど全ての能力は努力で説明可能だという立場ですが、個人的にはそれはエンジニアの言う「技術的には可能」と同レベルの話だと感じました。

 もちろん人生を捧げて取り組む上では「技術的には可能」なことは何でもやるべき、ということになるとは思いますが、多くのプレーヤーにとってはビートマニアはあくまでゲームなので、実生活に決定的な影響が出ない範囲でやっていくのが現実的なところだと思います。毎日5時間欠かさずにプレイすることが必須だという計画を立てたとき、それを実行しながら社会生活が問題なく送れるのなら、それはもう恵まれた環境という意味で才能があると言って差し支えないのでは無いでしょうか。

 

そういう意味でも、今後もビートマニアのレベルが上がっていき、それに従って初心者の裾野も広がっていくことを望むのであれば、より多くのプレーヤーがより効率的に一定の目標に到達する上で、ビートマニアのレッスンプロ制度が生まれていくことが重要だと感じます。

 例えば一週間おきに一時間ずつゲーセンでの直接指導とオンライン面接を受け、数ヶ月程度の期間で一定の目標達成を目指すようなレッスン体系ができて、指導者の質KONAMI公式などが担保するような仕組みです。もちろん、BPLスポンサー等の有効活用があるとなお良いと思います。

 

最後に

私がCPIを世に出して以降も、上達を望むプレーヤーがより効率的に上達するためのツールが、ビートマニアにはまだまだ足りていないことを痛感しています。

 私はこのゲームが(実生活に決定的な影響が出ない範囲で)大好きですし、その要因には音楽の素晴らしさ・音に合わせてデバイスを操作する楽しさ、だけでは語り尽くせない点があると考えています。それはまさに、公式の言う「過去の自分より上手くなる。beatmania IIDXの本当の面白さは、ここから始まります。 」に他なりません。

 IIDX20の頃にはゲーセンに通うようになっていましたが、IIDX30を次回作に控えたビートマニアではプロリーグの設立とともに、上級者・超上級者が練習方法を共有しやすい空気感が醸成されてきたと感じます。私はIIDX40を真剣に楽しみにしています(その頃も今と同じ程度にプレイを続けているかは別として)。

 初心者・初級者・中級者プレイヤーの増加という観点からも、レッスンプロ制度の整備が真剣に検討されるといいなと願ってやみません。

 

上記記事内容に関連して、これまでのビートマニア歴で考えたこと・取り組んだことに関するインタビューに答えてくださるトッププレーヤーを探しています。このような区切り方を私がするのは大変おこがましいですが、クリア力・スコア力のどちらかで概ね世界100位前後までに該当する方であればより望ましいです*2

 インタビューにご協力くださる方や、本記事についてのご意見・ご感想のある方は、記事へのコメントあるいは冒頭のTwitterまでご一報をお願いします。


それでは、良き音ゲーライフを。

*1:詳しくは別記事にて紹介したいと思っています

*2:この記事を書いている私は☆12の総合BPI・総合CPIでともに推定500位台程度です

「やってないだけ」を見つけ出す~IIDX難易度推定の再改良~

記事内容の要約

  • CPIの難易度推定で利用しているモデル方程式に、新たなパラメータを追加することで、クリア割合・適正CPIの予測精度が向上しました。
  • 追加したパラメータを譜面ごとに比較することで、CPIとクリア割合の分布が特徴的な譜面を抽出することができました。
  • 抽出された譜面の<特徴>は、プレイヤーの平均試行回数が譜面ごとに大きく異なっている事実を反映していると予想されます。
  • これにより、クリア状況のみから難易度推定を行う上での従来の弱点であった、「プレイヤーの試行回数を予測に利用できない」点をある程度克服できた可能性があります。

 

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 

前回記事から引き続き、CPIのクリア割合・適正CPIの予測精度向上に向けて、モデル方程式の改良を試みていました(本記事を読むにあたって、前回記事を未読でも問題ないと思います)。

 

現行モデルは対称性を前提としている

現行のモデル方程式である(2パラメータ)ロジスティック方程式

{ \dfrac{1}{1+e^ {-\left( a+bx\right) }} }

において、xに入るものは説明変数*1であり、CPIではプレイヤーの総合CPIが対応します。

 

まずは現行のモデルにおけるパラメータa,bの挙動を確認してみます。

以下のグラフは縦軸にクリア割合、横軸にCPIをとり、図中央の横線がクリア割合50%となります。グラフと横線の交点が適正CPIに相当します。

CPIではaが大きくなる=適正CPIが低くなるという関係になります。

 

同様にbが大きくなる=個人差度が小さくなるという関係になります。

 ここで重要なのは、現行の式ではグラフがy=0.5に対して常に対称であるという点です。すなわち、クリア割合が10%→20%に上がるまでのCPIの変化量と、80%→90%までの変化量が等しくなるということです。

現行の式では、パラメータに依らず全ての曲線は上端と下端で傾きが等しくなっている。

このような対称性の前提を置いても、プレイヤーの腕前が正規分布*2のように左右対称に分布していれば問題ありませんし、実際多くの譜面ではそれなりに正しく予測ができています。

クリア割合の実測値を表した100%積み上げ縦棒グラフ。
1つの縦棒がCPI10に相当し、赤がクリア達成、青がクリア未達成。
黒い曲線は現モデルによる予測を表す。

一方で前回記事でも述べたように、必ずしも上記の前提に当てはまる譜面ばかりではありません。特に、難易度が極端・譜面の癖が強い・LEGGENDARIAなどで非対称性が顕著になる傾向があります。

 

非対称性を表現できる新モデル

そこで非対称なグラフも表現できるよう試行錯誤した末に、新たなパラメータc*3を追加することにしました。

パラメータcを追加した新モデルの方程式がこちらです。

{ \dfrac{1}{\left( 1+e^ {-\left( a+bx\right) }\right) ^ {c}} }

現モデルの分母全体を底とする指数関数の形をとります。

 

a,b同様にcを変化させて、グラフの動きを見てみます。

cを大きくするとグラフの「立ち上がり」が急になり、逆に小さくすると「立ち上がり」がなだらかになっています。

 若干わかりにくいので、cと一緒にbも動かして、適正付近での傾きを揃えて比較してみます。

 適正CPI付近での傾き=個人差度が同じでも、cが大きくなると低クリア確率の領域ではグラフの傾きが大きく、cが小さくなるとその逆になっています。具体的には、クリア割合が10%→20%に上がるまでのCPIの変化量と、80%→90%までの変化量が異なっているということです。

 

このように、パラメータcを追加したことで、非対称なグラフが表現できるようになりました。

赤い曲線はパラメータcを含む新モデルによる予測を表す。
(現モデルの予測と比較して)高CPI帯でクリア割合が高くなっていることが
上手く表現できており、それに伴って適正CPIも上方修正されている。

 

このように新たなパラメータを導入した新モデルが、実際にどの程度だけ予測精度を向上させたのか確かめてみます。

 新モデルと現モデルを逸脱度(deviance)*4という指標で比較したものが次のグラフです。逸脱度が大きい≒新モデルの方が優秀な場面もそれなりにありそうだとわかります。

有意水準を0.05とした場合、対象425譜面*5クリアタイプ=2125ランプのうち
およそ3割にあたる638ランプで新モデルが有意となった。

 

新モデルの特徴

具体的にどのような譜面で変化が大きいのかを確かめてみます。

 まずはHARD CLEARについて、パラメータc*5が大きい譜面を10個示します。

 cが大きい譜面はソフラン・LEGGENDARIAなどが選ばれており、どちらかと言えば選曲が避けられる傾向のラインナップに感じられます。

いくつかピックアップしてグラフを確かめてみます。

特にFire Beatで顕著ですが、(適正と比較して)高CPIプレイヤーのクリア割合が低くなっており、このことが現モデルと実際のクリア分布との乖離を生んでいるようです。

 上で予想したとおり、腕前的にはクリアできるのにプレイしない=選曲を避けているプレイヤーが一定数いる、という傾向を見ていそうです。LEGGENDARIAはシステム上で選曲に制限がありますし、Fire Beatは記事執筆時点では通常解禁が困難なはずなので、どちらもプレイ回数が平均より少なくなることは充分にあり得そうです。

 

同様にHARD CLEARについて、パラメータcが小さい譜面を10個示します。

 cが小さい譜面は未難一桁に残るような超高難易度かつ地力譜面、あるいは低難易度かつ昔からある皿譜面(SCREAM SQUAD、TROOPERS)が選ばれています。

 こちらもグラフで確認します。

(適正と比較して)低CPIプレイヤーのクリア割合が高くなっていることがわかります。卑弥呼・Verflucht [L]などは超高難易度の地力譜面として広く知られており、明らかにハード狙いのプレイ回数が増えそうな譜面です。

 一方でTROOPERSやSCREAM SQUADなどは、皿譜面が得意なら相対的に簡単になることが広く知られており、難易度的には☆12の中でも低いため、こちらもハード狙いのプレイ回数が増えそうだと推測することができます。

 グラフを見比べると、現モデル(黒線)から新モデル(赤線)への変化の仕方が、卑弥呼・Verflucht [L]では高CPI帯のクリア割合を上げる方向なのに対して、TROOPERSでは低CPI帯のクリア割合を挙げる方向になっています。これは、クリア状況のモデルへの当てはめがプレイヤー数の影響を受けているため、プレイヤー数の多いCPI1600前後の当てはめが最も良くなるようにモデルが生成されるためです。この辺りも今後の予測精度向上のヒントになるかもしれません。

 

モデル変更によってハード適正CPI順位が変化した譜面を、上位50譜面から抽出してまとめました。

新モデルで上方修正となった(赤ハイライトの)譜面はいわゆる”地力譜面”、下方修正となった(緑ハイライトの)譜面はいわゆる”個人差譜面”が多くラインナップされていそうです。

 

他のクリアタイプについても、同じように見てみます。

(フルコンは極端な数値をとる譜面が多いため割愛します)
各クリアタイプで概ね、cが大きい譜面は(適正CPI・個人差度に比して)選曲回数が少なさそうな印象を受けます。

 また、表のパラメータc=0のとき現モデルと新モデルの差が無いことになりますが、cが大きい方には10を超えるような値となるのに対して、小さい方には(黒イカEXHを除いて)たかだか-1点台にしか届いていません。すなわち、cは大きい方に動きやすいパラメータだと考えられます。

 

追加したパラメータの意義

次に、パラメータcの意味について考えるために、モデル式とプレイ回数の関係を確かめてみます。

 ある譜面のクリア確率がp\left( x\right)のとき、その譜面における全プレイヤーの平均プレイ(厳密にはランプ更新を試みた)回数がn倍になると、クリア確率を表す式は

1-\left( 1-p\left( x\right)\right) ^{n}

となります。このp\left( x\right)に現行のモデル式を代入し変形すると、

1-\left( 1-p\left( x\right)\right) ^{n}=1-\left( 1-\dfrac{1}{1+e^{-\left( a+bx\right) }}\right) ^{n}
=1-{ \dfrac{1}{\left( 1+e^ {\left( a+bx\right) }\right) ^ {n}} }

と、微妙に違ってはいますが、分母の肩にパラメータcを追加した先ほどのモデル式とよく似た形になりました。

 グラフでもnの挙動を確認してみます。

 cを動かしたときとは上下左右が入れ替わっていますが、パラメータを変化させるほどグラフの非対称性が強まっていく点は共通しています。

 nを大きくすると、グラフは左方向へ動き、傾きは急になっています。これは、各プレイヤーの試行回数を増やすことによって予想される変化(適正CPIは低くなり個人差度も小さくなる)と一致しています。

 数学的な論証を全部省いてしまいましたが、まとめると新モデルに追加した新パラメータは譜面ごとの平均プレイ回数の違いを反映していそうだということになります。

 そう考えると、先述したcが大きい方に動きやすいという傾向は、nとcが逆方向に動くパラメータであることを踏まえて、「平均プレイ回数が極端に少ない場合と比較して極端に多い場合は起こりにくい」と解釈することができそうです。

 

実際には、譜面ごとの平均プレイ回数がプレイヤーのCPIに依らず一定とは考えにくいため、nにあたるパラメータも定数ではなくxの関数と考えるのが自然です。

 そのため、新たなパラメータを1つ増やしただけで、プレイ回数の違いによる効果を完全に説明することはできないと考えられますが、クリア状況のみから難易度推定を行う上での従来の弱点をある程度克服できたと言えるのでは無いでしょうか。

 

記事内容の要約(再掲)

  • CPIの難易度推定で利用しているモデル方程式に、新たなパラメータを追加することで、クリア割合・適正CPIの予測精度が向上しました。
  • 追加したパラメータを譜面ごとに比較することで、CPIとクリア割合の分布が特徴的な譜面を抽出することができました。
  • 抽出された譜面の<特徴>は、プレイヤーの平均試行回数が譜面ごとに大きく異なっている事実を反映していると予想されます。
  • これにより、クリア状況のみから難易度推定を行う上での従来の弱点であった、「プレイヤーの試行回数を予測に利用できない」点をある程度克服できた可能性があります。

 

本記事についてのご意見・ご感想は、記事へのコメントあるいは冒頭のTwitterまでお願いします。


それでは、良き音ゲーライフを。

*1:結果(ここではクリアの可否)を説明する変数

*2:ロジスティック回帰では正規分布によく似て計算のしやすいロジスティック分布を前提とします

*3:5パラメータロジスティック方程式(Gottschalk, Paul & Dunn, John. (2005))を変形したものです。

*4:わかりやすく説明されているサイト

clover.fcg.world

*5:わかりやすさのために表ではln(c)を示しています

適正CPIの精度を上げるために新しい推定方式を検討した話

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 先日CPIの登録ユーザー数が4000人を超えました。日頃のご愛顧に感謝いたします。今回の記事はCPIの難易度推定に大きく関わる話題です。

 

CPIにおける「適正CPI」

CPIで推定している様々な項目のうち、いわゆる譜面難易度に相当するものは「適正CPI」です。ここではクリア割合が50%であることを「適正」と呼んでいます。

 具体的に、Boomy and The Boost*1のHARD CLEARについて、プレイヤーのクリア状況をグラフにしてみます。

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 総合CPIを20ごとに区切り、該当するプレイヤーのクリア割合を100%積み上げグラフで示しています。クリア割合が最も50%に近いのは、総合CPIが1610~1630のプレイヤーであることがわかります。つまり、適正CPIは1610~1630の範囲内にあることが推定されます。

 より正確な値を知りたいと思い、総合CPIを区切る幅を狭くしてみたらどうでしょう。CPI幅を5にしたグラフがこちらです。

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 ご覧の通り、CPI幅20のグラフと比較して赤(ハード未達成)と青(ハード達成)の境界がギザギザしていることがわかります*2。これではクリア割合が50%に最も近いCPI帯がいくつか決めかねてしまいます。

 

これを解決するためには、全体の状況をいい感じに近似できるような式を探して、クリア割合が50%となるCPIの値を数値的に求めるのが良さそうです。

 そのためのモデル式として、CPIではロジスティック方程式を採用しています(詳細は後述)。

 先ほどのグラフに式を当てはめたものがこちらです。

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 黄色いS字が当てはめた式の描く曲線です。赤と青の境界の中間あたりを良い感じに通過していることがわかります。これで適正CPIが1624.69とわかりました。

 

ここまでは現在の推定方式についての確認でした。少なくともBoomy and The Boostのハード難易度に関しては、推定された適正CPIが実際のクリア状況とよく対応していそうです。

 一方で、推定が上手く行くのは、「全体の状況をいい感じに説明できるよう」に探してきたロジスティック方程式が、実際のクリア状況を表すものとして適切な場合に限られます。

 

適正CPIは本当に適正か?

ロジスティック方程式による確率推定は、社会学・経済学・生物学・医学などなど幅広い分野で古くから使われているもので、近い所では発狂BMSの難易度推定でも使用されています。

 確率0%(事象が全く発生しない)から確率100%(事象が必ず発生する)にかけて、滑らかにS字を描くのが特徴であり、実社会に起こる出来事をモデル化するのに適していると言われています。

 一方でこのモデルにはいくつかの前提があり、例えば確率50%を境に対称であることは重要です。これはロジスティック方程式の描く曲線が点対称であるためです。

 弐寺においても、全てのプレイヤーがその時点で持てる全力でランプを点灯させようと努力したと仮定すれば、上記の仮定は成り立つと考えられます*3

 

しかしながら弐寺のクリア状況においては、譜面の難易度・個人差度および解禁の有無といった条件のために、必ずしも確率50%を境に対称とならない場面は存在します。

 具体例としてSinus Iridumのイージーのクリア状況を見てみます。

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 説明のために先ほどまでとグラフの体裁を変えています。該当CPI帯におけるクリア割合は水色の縦棒が表し、該当CPI帯におけるプレイ人数は灰色の縦棒が表します*4

 グラフを見てみると、クリア割合が低いCPI帯と高いCPI帯のそれぞれで、実際のクリア状況よりも高めにクリア割合を推定しているようです。逆にクリア割合が50%に近いCPI帯では低めにクリア割合が推定されており、水色の縦棒がクリア割合50%(黒の横線)の高さに近くなるCPI帯よりも、推定される適正CPI(黒丸)は右の方に位置しています。つまり、クリア割合が50%となるような実際のクリア状況と比較して、適正CPIが高めに推定されているように見えます。

 同じような傾向の譜面をいくつか示します。

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今度は同じSinusのハードを見てみます。

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 イージーとは反対に、クリア割合が低い・高いCPI帯では実際より低めにクリア割合を推定しており、適正CPIも実際より低めに推定されているように見えます。

 こちらも同じような傾向の譜面をいくつか示します。

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新しい多項式モデルの導入

ここまでのように、少なくとも一部の譜面のクリア状況は理想的なロジスティック曲線から乖離していることがわかりました。

 クリア確率の予測精度を上げるためだけであれば、総合CPIとは別の新たな特徴量を探すという手もありますが、その場合は(一次元の)難易度推定が出来なくなり、譜面同士の比較が難しくなってしまいます。

 上述のグラフを見ても総合CPIとクリア割合にある程度の相関があるのは確かなので、当てはめる曲線そのものの形を改良するのが良さそうです。

 具体的に、現行のロジスティック曲線は

\displaystyle{ \frac{1}{1+e^{-(a\times(CPI)+b)}} }

と表されますが、これを

\displaystyle{ \frac{1}{1+e^{-(a\times(CPI)^2+b\times(CPI)+c)}} }

と総合CPIの2次式にしてみます。イメージとしては、元々のロジスティック曲線が(クリア割合50%の部分で)曲線の動きを1回だけ変えることができるのに対して、2次式を導入すると曲線の動きを2回変えられるようになる、というところです。

 曲線の様子をグラフにしたものがこちらです。

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 グラフのとおり、2次式を導入したことで「クリア割合が低い・高いCPI帯では高めにクリア割合を推定する」といったより複雑なクリア状況の再現ができるようになりました。

 同様に3次式のグラフも見てみます。

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 曲線の動きを3回変えられるようになり、より複雑な曲線を描けるようになりました。

 このまま4次式、5次式、……と次数を上げていけば精度も上がって行きそうに見えますが、実際には不必要に複雑なモデルを選択すると手元のデータに過剰に当てはまってしまい、手元にないデータを予測する際の精度が低下することが知られています(no-free-lunch theorem)。

 前述のクリア状況のグラフのように、「低CPI帯ではクリア確率が上がり、中CPI帯では下がり、高CPI帯ではまた上がる」といったクリア状況は実際に存在するようなので、今回は上限を3次式までとすることにしました。

 

実際に先ほどピックアップした譜面で確かめてみます。

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 1次元だけの時と比べて、より柔軟に当てはめられていることがわかります。それに従って適正CPIの推定値も変化しています。

難易度推定の対象となる全譜面・各クリアタイプについて、同様の推定を行いました。

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適正CPIの変化量のヒストグラム
全体の93.5%は変化量が10以内だった。

 新方式で適正CPIが下がった譜面トップ20がこちらです。

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 個人的な印象としては、それなりに対策が必要かつ難しそうな譜面が揃っており、何となく手を出しにくいラインナップに感じられます。

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減少量が全体1位だったGo Beyond!!エクハのグラフ。
新方式では高CPI帯でのクリア割合が(現行と比べて)低く推定されている。

 反対に新方式で適正CPIが上がった譜面トップ20がこちらです。

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 こちらは積極的に狙う人が多い超高難度の譜面が選ばれていそうですが、フルコンに関してはその限りでは無さそうです。フルコンはサンプル数の少なさや、クリアゲージに関わらずランプが点く仕様などから、他のクリアタイプと比較して著しく個人差が大きくなります。そのため(適正CPIと比べて)低CPI帯の挙動に大きく影響されると考えられ、より柔軟な曲線への当てはめの結果として適正CPIが上方に修正されたと考えられます。

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「個人差度」の再定義

良いことづくめに見える新推定方式ですが、複雑な曲線を描けるようになった代償として、解釈がわかりにくくなったというデメリットがあります。

 以前こちらの記事で述べましたが、現行方式ではロジスティック曲線の「傾き」の逆数を「個人差度」と定義する*5ことで、純粋な難易度情報とは別に、いわゆる地力譜面(総合CPIとクリア確率の相関が強い)と個人差譜面(相関が弱い)の違いを知ることができました。いちいちグラフを参照しなくとも、2種類の数字だけでクリア状況の様子をうかがえるということです。

 

ところが2次式・3次式となると話はそう単純ではありません。曲線の動きが途中で複数回変化するために、単に曲線の「傾き」を見るだけでは、グラフの全体像を把握することができなくなります。

 具体的には、2次式を把握するためには3種類の数字が、3次式を把握するためには4種類の数字が必要となります。

 個人的には(少なくとも難易度表に表示させる分については)指標のさらなる複雑化は避けたいです。そのため、例えば適正CPIの他にクリア確率25%CPI・75%CPIを計算し、それぞれを信頼区間のような形で表示させるといった案を考えています。

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適正CPIの「信頼区間」の表示案
上が現行方式(適正CPI±個人差度)、下が新方式

 

まとめ

・クリア状況の分布が対称とならない一部の譜面について、適正CPIの推定値と実測値にズレが生じることがある。

・難易度推定に使用する関数を工夫することで、一部の譜面では実際のクリア状況に近付けた推定を行えるようになった。

・関数が複雑化した反面、個人差度などの指標は解釈が従来どおりでなくなるため、新たな指標案を考える必要がある。

 

参考にしたサイト様

funyakofunyao.click多項式回帰のメリット・デメリットについてわかりやすく説明されています。

 

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それでは、良き音ゲーライフを。

*1:ビートマニアで一番いい曲。データに基づかない意見です

*2:白く抜けている部分は該当するプレイヤーが存在しなかったCPI帯

*3:厳密にはプレイヤーの実力分布などに関しても前提条件があると思われます

*4:式の当てはまりをプレイヤー全体に最適化する過程で、CPI帯ごとのプレイ人数の多寡は重要となります

*5:正確には、前述の式

\displaystyle{ \frac{1}{1+e^{-(a\times(CPI)+b)}} }

における

\displaystyle{ \frac{1}{a} }

で表されます。

「地力Sを何曲ハードしたら皆伝に合格できるのか?」を調べてみた+皆伝チャレンジ課題譜面リストを作ってみた

※2021/10/11 一部追記しました

 

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 

IIDX28 BISTROVERも残すところあと数日となりました。次回作に向けて、上の段位を目指す/現段位を維持するといった目標を立てているプレイヤーも多いと思います。

 ところで皆伝受験の目安として、「地力○が×曲埋まったら受けてみる」といった目安を決めている方もいるのではないでしょうか。

 今回はプレイヤーデータから、地力表の埋まり具合と段位合格の具体的な関係を探り、そこから改良を加えて皆伝合格の指標となる課題譜面リストを考えてみました。

 

なお、以前こちら↓の記事で、皆伝取得に必要な譜面要素を考察しましたが、

今回は具体的に「どの譜面を何曲クリアしたら何割の確率で受かるのか?」を調べていく記事になります。興味のある方は↑の記事もあわせてご覧ください。

 

地力Sを何曲ハードしたらどれくらいの確率で皆伝に合格できるのか?

まずは記事タイトルどおり、地力Sについて調べてみます。

<前提条件>
 対象プレイヤー:IIDX28 BISTROVERで2021年8月時点で中伝or皆伝を取得していた公開プレイヤー、うちアクティブ度の高い半数を抽出(詳細は上記記事参照)
 対象譜面:対象プレイヤーの8割以上がプレイ済の譜面、「地力○/個人差○」は記事執筆時点の☆12参考表を参照

【ハード地力S対象譜面】全11譜面
Almagest、Confiserie、Elemental Creation、EMERALDAS、perditus†paradisus、Sigmund、駅猫のワルツ、焔極OVERKILL、共鳴遊戯の華、嘆きの樹、煉獄のエルフェリア

【対象プレイヤー】<前提条件>+上記11譜面すべてをプレイ済のプレイヤー

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割合で示した方のグラフを見ると、クリア譜面数が増えるのにしたがって皆伝の割合も増えることがわかります。(対象11譜面中)3譜面ハードで中伝と皆伝の人数がほぼ均等になるようです。

ところで、皆伝には連皿・ソフランなどの個人差要素が多く含まれており、個人差譜面のクリア力も当然問われることが予想されます。

 

ということで、個人差Sに関しても同様に調べてみます。

【個人差S対象譜面】全8譜面
BLACK.by X-Cross Fade、Dynamite、ECHIDNA、Fascination MAXX、Level One、NZM、The Chase、THE PEERLESS UNDER HEAVEN

【対象プレイヤー】<前提条件>+上記8譜面すべてをプレイ済のプレイヤー

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個人差Sに関しても地力Sと同様に、クリア譜面数とクリア割合には正の相関がありそうです。8譜面中3~4譜面ハードで皆伝合格率は50%となります。

 

指標の”優秀さ”の定量

さて、ハード地力S・個人差Sの埋まり具合と皆伝合格率には一定の関係があることがわかりました。

 ここで疑問となるのは、地力Sと個人差Sのどちらを参考にするべきか、はたまた両方を参考にした方が良いのか、という点です。

 何をもって「参考になる」と考えるかは簡単な問題ではありませんが、このような問題に関してよく使われる指標にAUC*1というものがあります。

 細かい説明は割愛しますが、今回の記事にあたっては
 ・ある指標における2つの群(今回は中伝と皆伝)の”分離”具合を表す
 ・最高が1(2つの群が完全に分離)、最低が0.5(2つの群がランダムに入り交じる)、0.9を超えたらかなり良い指標
という点を抑えていただければ充分だと思います。

 

AUCを計算してみると、地力S:0.894、個人差S:0.881、地力S&個人差S:0.904となり、地力Sと個人差Sは両方を参考にしたほうが良いことがわかりました*2

 地力S&個人差Sのグラフは以下のようになります。

f:id:rice_Place:20211009150027p:plain

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 対象19譜面のうち、7譜面ハードで合格率50%、14譜面ハードで合格率80%となります。

より使いやすい指標を探す

さて、ハード地力S&個人差Sが皆伝合否の良い指標となりそうなことがわかりました。

 一方で、☆12は今作で410譜面を数え、その中で中伝・皆伝の8割がプレイ済の譜面は300以上あります。地力・個人差S以外の譜面についても上手く探せれば、指標としてより優秀な課題譜面リストを見つけることができそうです。

 すべての可能性を試すには総当たりすればいいですが、たった5譜面のリストでも300^5≒2兆通り以上の組み合わせを見に行く必要があります。手元のPCでは厳しいものがあるので、今回は「候補から1譜面ずつ抜いてAUCを比較し、最もAUCが高かった譜面(=指標への寄与が最も小さい譜面)を除く」操作を繰り返すことで、より少ない譜面数でより高いAUCを持つリストを探すことにしました。

 

出力された候補トップ10がこちらです。

譜面数 譜面名 地力・個人差S
計19譜面とのAUCの差
1 シムルグの目醒め -0.096
2 + EMERALDAS -0.025
3 + quell~the seventh slave~ -0.015
4 + Fascination MAXX -0.005
5 + 3y3s +0.000
6 + GuNGNiR +0.003
7 + JOMANDA +0.005
8 + お菓子の王国 +0.006
9 + 華麗なる大犬円舞曲 +0.007
10 + Level One +0.007

 上手く選んでやればたったの5譜面で、地力・個人差S計19譜面と同等の指標を作れることがわかりました。

 ちなみに1位のシムルグの目醒めは、前述の記事でも皆伝合否との相関が最も高い譜面に選ばれています。異なるアプローチで結果が一致するのは驚きです。

 

トップ5を課題譜面として今までのようにグラフを作ってみます。f:id:rice_Place:20211009171211p:plainf:id:rice_Place:20211009171216p:plain

視覚的にもそれなりに分離できていることがわかります。

 一方で、ハード譜面数1→2で皆伝合格割合がガクッと増えているのが見て取れます。 原因として、シムルグ・quellの2曲とEMERALDAS・FAXX・3y3sの3曲との間に結構な難易度差があることが考えられます。

譜面名 ☆12ハード参考表 ハード適正CPI / 個人差度
quell~the seventh slave~ 地力A 1634.54 / 26.16
シムルグの目醒め 地力A+ 1696.90 / 33.67
EMERALDAS 地力S 1816.87 / 64.52
Fascination MAXX 個人差S 1840.50 / 110.11
3y3s 地力S+ 1823.12 / 69.16

 

そこで、GuNGNiR(地力A+、1700.09 / 34.71)+ JOMANDA(個人差A、1709.37 / 40.54)も含めたトップ7まで入れたものもグラフ化してみます。f:id:rice_Place:20211009191220p:plainf:id:rice_Place:20211009191223p:plainトップ5譜面と比べてAUCの差は殆どありませんが、各譜面の難易度勾配がなだらかになったことで、割合グラフの”階段”が緩やかになりました。モチベーションの観点からはこちらの方が良い指標かもしれません。

ハード譜面数 皆伝合格率
0 3.0%
1 13.2%
2 29.9%
3 46.1%
4 66.2%
5 79.9%
6 90.5%
7 94.8%

 この指標では、地力・個人差S未満であるquell・シムルグ・GuNGNiR・JOMANDAを全てハードした場合、皆伝合格率は66.2%になります。

 一方で、前述の地力・個人差S計19譜面による指標では、ハード譜面数0の合格率は5.5%となり、両指標の推定値には大きな開きがあります。

 実際にはquell・シムルグ・GuNGNiR・JOMANDAを全てハードしているプレイヤーの多くは、何だかんだ地力Sにも何譜面かハードが点いていると考えられるため、この推定値の差にはあまり大きな意味はありません。すなわち、地力S未満のハードが増えると、地力S以上のハードも増えがちということです。

 このことを皆伝合否とクリアランプ指標との関係に当てはめて再確認すると、示されるのは「指標の課題譜面を多くクリアしているプレイヤーは、皆伝に合格している確率が高い」という相関関係であり、決して「指標の課題譜面を多くクリアすると、皆伝に合格する確率が高くなる」という因果関係ではありません。とはいえ、「ハード0譜面なら地力不足で時期尚早」「全譜面ハードならあとは対策次第」といった大まかな基準には充分使えると思います。

 

このように分類指標の評価方法は一次元ではなく、精度・使いやすさ・頑健さといった様々な点を加味しながら、組み合わせて選んでいく必要があります。

 ぼくのかんがえたさいきょうの指標を探して、これからも色々な方法を試していこうと思います。

 

まとめ

・ハード難易度表 地力/個人差Sの埋まり具合と皆伝合否にはそれなりの相関がある

・地力/個人差Sを4割弱ハードすると皆伝合格率は50%に、7割強ハードすると合格率80%になる

・☆12から上手く5譜面(シムルグの目醒め+EMERALDAS+quell~the seventh slave~+Fascination MAXX+3y3s)を選ぶと、地力/個人差Sに匹敵する性能の皆伝合否指標になる

 

余談

・記事を書く前にハード以外の全てのクリアタイプに関しても実験しましたが、上位は一部を除いてハードランプばかりが占める結果になりました。

・十段vs中伝で同様のことを試すと、いわゆる「十段止め」プレイヤーの影響を強く受けて解釈の難しい結果になりました。一方で九段vs十段はそれなりに納得の行く結果が出たので、需要があれば追記したいと思います。

・段位指標に関する統計的な考察はこちら↓により詳しいものを寄稿しております。
この記事についてのご意見・ご感想は、記事へのコメントあるいは冒頭のTwitterまでお願いします。


それでは、良き音ゲーライフを。

*1:ROC AUCとも。より詳しい説明はこちら↓

qiita.com

*2:とはいえ大した差ではありません。今回の記事におけるAUCの定量的な意味は、「中伝・皆伝からそれぞれランダムに1人を選んだとき、後者の方がクリア譜面数が多くなる確率」です。AUCの差が0.01なら、その確率が1%変わるということです。この差が有意なものか否かを検定する方法もありますが、仮定が複雑になるため今回は行わないことにします。