メモ:<音ゲーの才能>と目標達成との関係

以下は考えたことをまとめたメモ書きです。根拠は後から必要に応じて付け足します。また内容そのものを後から追記修正する可能性があります。

考える上で参考にしたいので、様々な形でコメントをくださるとありがたいです(内容に反映されるとは限りません)。

 

 

・以下では<音ゲーの才能>の定義を、「音ゲーの上達にとって有利となるあらゆる要素のうち、自己の意識的努力によって獲得したのでは無いもの」とする(単純に<才能>と表記することもある)。

音ゲープレイヤーが持つほとんどの要素は、<才能>が説明できる割合に違いがある。例えば、身長は個人の努力で変更することは極めて困難であるが、筋力や動体視力は訓練によってかなり向上することが知られているし、記憶した譜面情報とその対策方法は完全に後天的なものである。

・<音ゲーの才能>と見なされる様々な要素は、実際のところどの程度までが<才能>かは、厳密にはわからないことが多い。先述の例では、動体視力が同程度のプレイヤーが二人いたときに、それぞれの行った意識的努力の量も、それが動体視力へ与えた影響も、いずれも測定することはできない。

・<音ゲーの才能>と見なされる様々な要素は、実際のところどの程度までが音ゲーの上達に有利であるかは、厳密にはわからないことが多い。同様に、動体視力の高さが音ゲーに有利であったとしても、例えば「2倍の動体視力を持つ人は2倍上手くなる」というようなことは不明である*1

・<音ゲーの才能>は、上達の過程でいつ顕在化するかわからないことが多い。例えば、驚異的な動体視力を持っている人がいたとしても、音ゲーのボタンの配置を覚えていないとしたら、その能力は充分には発揮されない。

・<音ゲーの才能>は、どの要素がどのように発揮されているかわからないことが多い。同程度の難易度の譜面を同程度に処理できる2人のプレイヤーがいたとして、その2人がこれまでに行った意識的努力の量が同程度だったとしても、例えば1人は高い動体視力によって、もう1人は高い筋持久力によってその能力が裏支えされているということは有り得る。

・ここまでをまとめると、個々人の持つ<音ゲーの才能>は多くの要素が複雑に絡み合って発揮されるもので、他者どころか自分自身であっても、その<才能>の多寡を知ることはできないと言える。

 

音ゲーの何らかの目標を達成するにあたって、その目標達成に<音ゲーの才能>が一切関係しないと考えることは、あまり妥当ではないと思われる。なぜなら、上記のように<才能>は多くの要素が複雑に絡み合っており、その構成要素全てが目標達成に一切関係しないということは極めて起こりにくいと予想されるからだ。

・また、ある程度以上の難易度の目標を達成するうえで、意識的努力が一切不要であるということも極めて起こりにくい。一方でこの点について、意識的努力を行った当人が、例えば「私は楽しくプレイしていただけで、努力とは考えていない」と述べたとき、プレイそのものを楽しめるということそのものも、<音ゲーの才能>に含まれるという立場を取れば、その<才能>を持つプレイヤーの必要な意識的努力は、そうでないプレイヤーに対して少なくなるだろう。

 

・ここまでの一般論から、ミクロの視点に移ったときを考える。すなわちもし「私」や「あなた」が達成したい音ゲーの目標があったとき、自分に<音ゲーの才能>があるのか、あるいは他人に<音ゲーの才能>があるのか考えることは、目標達成に対してあまり有益でないかもしれない。なぜなら、<才能>がどれだけあり、<才能>が目標達成にどれだけ重要であるかを知る手段はないからである。

・一方で、目標に対して自分の能力がどの程度不足しているかを客観視することは重要であると考えられる。この場合であっても、自分の能力は定義上<才能>と意識的努力の総和であるので、<才能>の多寡が不明な以上、行われてきた意識的努力の量について他者と比較することもまた有益でないことが導かれる。

・加えて、行うべき意識的努力そのものを、できるだけ楽しめるような形・方向性で設定することも、極めて重要であると言える。これにより、必要な意識的努力を減らすことができるかもしれない。この点について、「楽しんでプレイすることが目標達成にも最も有益である」とは述べていないことに注意が必要である。

 

文:りせ(X/Twitter: @rice_Place)

*1:一方で、この点はその気になればデータを集めて統計的に調べることは可能かもしれない

【IIDX】一流の<心的イメージ>を手に入れよう② ~SEIRYU選手インタビュー~

 

はじめに

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 

今回は、<心的イメージ>についてのインタビュー第2弾ということで、IIDXトッププレイヤー・BPLプロとして活躍される一方、青龍塾などのレッスン活動でも有名な、SEIRYUさんにお話を伺いました。

https://p.eagate.573.jp/game/bpl/season2/2dx/team/silkhat/01/index.html

 

心的イメージについては以前のこちらの記事をご覧ください。

 

また今回は、トッププレイヤー同士でしか語れない視点を提供いただくために、第1弾から引き続きNORIさんにも参加いただいております。

 NORIさんへのインタビューをまとめた記事は、こちらをご覧ください。

 

以下、S:で始まる文章はSEIRYUさん、N:で始まる文章はNORIさん、――で始まる文章は筆者のコメントとなっています。

 

インタビュー本編

――前回のインタビューでNORIさんが仰っていたことを、自分なりに解釈してやってみたら、明らかにスランプが減って、これまで10あった(パフォーマンスの)ブレが3ぐらいになって、ゲーセンに行くのが楽しくなりました。

――そのインタビューで、NORIさんがSEIRYUさんからお話を聞いて、すごく上達したと仰っていて。僕もSEIRYUさんのことは昔から憧れていたので、今回お話しさせていただきました。

――今回お伺いしたいことは、「SEIRYUさんはアドバイスするときに、どこに注目するのか」です。

 

なりたい目標とやるべき練習

S:今まで塾とかイベントとかで、級位からランカーを目指す人まで幅広くアドバイスさせていただいて、前提として教え方の根幹はあまり実力によらないところがあるので、そこから話していけたらなと思ってます。

 

一番大事なのは最終的な目標

S:僕の塾のスタイルとして、最初に情報を5つもらうようにしていて。①現時点の実力、②目標、③悩み、④プレイ動画、⑤その他の情報。⑤はクリア状況で、CPIとかBPIとか地力表とか。

S:それで、一番大事なのが②目標なんです。僕はここをすごく大事にしていて、(塾に)入ってもらう方には、めちゃめちゃ詳しく聞くようにしてるんですよ。本人の中で「上手くなりたい」って言っても、どういうプレイヤーになりたいのか、どういう所を目指してるかって全然違うと思っていて。現時点の実力に関係なく、最終的にどこを目指してるかが一致していないと、僕とすごくギャップが生まれちゃう。

S:具体的に言うと、例えば八段くらいの人がいて、最終的に☆12でAAAをいっぱい出せるようになりたいのか、☆11とかをもっと楽しく遊べるようになりたいのかで、全然違います。皆伝になれればいいなら、一回なれればいいのか、それとも毎作取れるくらいがいいのか。それによって、やるべきことが全然変わってくるので、そこを最初に掘り下げるようにしてるんです。

――なるほど、なるほど。

S:最終的な目標を合わせていないと、僕が勝手に「こうやったら絶対ランカークラスになれる」とか、「ランカーがみんなこうやってる」って言っても、そもそもそこを目指していなかったら、温度感が全然違うので、モチベーションもかなり下がっちゃうと思うんです。

 

目標に合わせた悩みの交通整理

S:その後に、悩みが目標に本当に関係することなのか、今やるべきことなのかを確認する。例えば、「67トリル*1ができません」っていうときに、今それが必要なのか。(目標が)「皆伝になりたいです」だったとすると、BPM200の67トリルが完璧に取れるようになる必要は、多分ないと思うんですよね。

鍵盤と番号の対応

S:本人にとってやるべきことと、いま悩んでることが合っていなかったら、「まずはこっちから先にやった方がいい」っていう軌道修正ができて、その後の質問内容も変えられるんです。

――そういう事って、(比較的)上手い人に聞かないとわからない情報の、大きな一つですよね。

S:そうですね、どの技術が難易度が高くて、どの技術が簡単かみたいな。 それで、段階的にできるようになるためには、「まずこれからでしょ」みたいな、順番の整理が必要なんですよね。それに気づいてもらうことを、結構やってますね。

 

実力別 壁になるポイント

S:ここからは個別の実力の話です。

 

実力別 フィジカル面とビジュアル面の壁になる要素

S:級位~青段位の人にとって、まず難しいのが異色の同時押しなんですよね。隣接(した鍵盤)もそうですし、14とか47とか25とかっていうのが、 ボタンの配置を完璧に把握できてない状態だと、鍵盤自体が一直線に並んでいないので(難しい)。白黒分かれてると、全部下、全部上で認識がしやすいんですけど。

 

S:次が八段くらいの人で、☆10くらいから軸+乱打みたいな譜面が増えてくる。☆9までは、階段は階段ばっかり、軸は軸がいっぱい降ってきてと、どっちかというと分かれてるんですけど。☆10くらいになると、バスをしながら乱打みたいなのが増えてきて、同時押しも3つ以上みたいなのがいっぱい出てくる。その辺りから、右手と左手で別の動きをしなきゃいけない場面が増えてくる。それが難しく感じると思うんですよね。

S:この辺(の難易度)はHYPERの方が簡単なんですよ。密度が全体的に薄くて、階段ばっかりバスばっかりみたいに、あまり混ざりがなくて比較的取りやすい。けれどもANOTHERになると、同じ☆10でも横の密度が上がって、軸+乱打みたいなのが増えてくるんです。そういう新しい認識の仕方や、右手左手で別々の動きをしなきゃいけないので、すごく難しくなるんです。

――同じ☆10でも、ANOTHERの方が難しい。

S:☆11とかはちょっと特殊なんですけどね、☆11は結構HYPERが難しいんですよ。☆10まではHYPERの方が圧倒的に手が出しやすいと思うんですよね。ここが、壁に感じるんだろうなっていうのがあります。

 

S:九段十段くらい、☆11とかになってくると、だんだん正規らしい譜面配置がなくなってくるんですよね。(☆10以下の)正規らしい配置は、同色のトリルとか、同色の階段とか、同色の同時押しとかが多いんですけど、☆11くらいになると隣接もいっぱい出てくるし、階段らしい階段もあんまり来なくて、めちゃめちゃ乱打譜面が降ってきたり。

S:階段がどこかっていう認識は、すごく難しいんです。正規があんまり好きじゃない人って、階段がちょっと入ってるだけで階段が見えるんですけど、多分☆11を初めてやるくらいの人は、階段が入ってるかどうかもよく見えないんですよ。同時押しや乱打が混ざってるのが多くなるので。 そういう横に広く認識しなきゃいけない譜面が、すごく壁になってくるんですよね。今は☆11に難しい曲がいっぱいあるから、余計に。

 

中伝~皆伝合格まで 苦手と向き合う苦しい時期

S:中伝くらいになると、段々と得意・不得意がはっきり出てくるようになって、 苦手譜面にどうしても向き合わなきゃいけなくなると思うんですよね。物量はできるけど、皿(スクラッチ)曲ができないとか、ソフランができないとか、縦連ができないとか。「縦連ができなきゃいけない」とか「皿ができなきゃいけない」みたいになると、色んな記事とかを見始めたりして、 からしたらいいのか迷走するみたいなのが、ここら辺から出てくるかなと。特に皿複合がみんな課題になるかなと思ってます。

S:それまでは、考えずに量をやって直感的に対処してたと思うんですけど、皿とかソフランって、ちょっと違うことをやらなきゃいけなくなるんですよね。逆も然りで、皿が得意な人は皿をすごくやってるので、片手処理とかもあまり考えずに気づいたらできてるんですけど、逆に鍵盤主体の認識のコツを掴まないまま、自然と伸び続けてしまっている。物量はどう対処するのかとか、皿複合はどうやって取るのかっていう、ちょっとした座学だったり、別の視点を持ち込まなきゃいけなくなるんですよね。

――つまり、自然にやってたことだけじゃダメだと気付いたから、新たな悩みが生まれるんですね。

S:そうですね。そこから、皆伝を取るまで何をしたらいいかがわからなくなってきて、解決策がずっと見えないままっていうのが、この辺から出てくるのかなと。

――モチベーションが結構下がったりとかも、出てくるのかなっていうイメージはありますね。

S:(中伝の時点で)もう相当、上達したところではあるんですけど。でも、皆伝っていうのが、まあやっぱり大きいひと区切りであり、みんな目指すところではあるからこそで。

S:特にいまTwitterとかで、周りの人が早く上手くなったりすると、どんどん影響されてメンタルがやられやすい環境下ではあるなと思うんですよね。ある意味、周りに影響されないで、一人でやってた方が伸びる時期なのかもしれない。なので、ここら辺からがすごく難しいところにはなって来ると思うんです。

 

皆伝のその先へ 目標の再確認と、アプローチの細分化

――(皆伝取得以降の)そこから先はどうなんでしょうか。

S:また目標に立ち返るところはあって、何を目指すかによってだいぶ変わってくるんですよ。全白・全EXHを目指すのか、全AAAを目指すのか、ランカーになるのか。

S:全白を目指すのであれば、順当に新規クリアをどんどん増やしていこうとするとは思うんですけど、残ってる曲が10曲20曲とかになってくると、なんだか困りますよね。そうなると、単曲に対してアプローチするみたいなのが、より必要になってくるんですよね。

S:それまでは、同じように量をやって、コツを掴んで、似たような譜面をできるようになって、を繰り返してたと思うんですけど。それだけじゃ一筋縄じゃいかない部分があって、最難関の譜面をHARDするために、自分は何が足りてなくて、どうやったらクリアできるのか。そのクリアできる想像じゃないですけど、ここまでは何%ゲージ残して、ここからはこうやって逃げ切るとか、ここはこうやって抜けるみたいな。段々と座学が必要になってくるポイントで。

S:単曲に対する粘着というよりは、単曲の攻略をして行って、攻略できた結果、それの応用が他につながるっていうところがある。単曲粘着は良くないかもしれないですけど、攻略すること自体は悪いことじゃないと思うんです。

 

譜面攻略のポイント

単曲攻略と単曲粘着の違い

――粘着が良くないという話について、僕も同じ意見なんですが、青龍さんのお考えを教えていただいてもいいですか。

S:人によるかなとは思うんですけど、少なくとも僕はモチベーションが続かなくなるのが大きいですね。なんか、曲に縛られてしまうってのがあって。その曲ができないと次に行けなくなって、他のこともできなくなっちゃう。

S:実力上げの面でも、一回一回経験値が得られる粘着だったらいいと思うんですけど、それはどちらかというと、単曲攻略って言葉に合ってるかなと。一回遊ぶにつれて、その曲に対する解像度を上げていって、攻略に繋げていく経験値が得られればいいんですけど。「粘着」って、よく言われてる言い方としては、あんまり考えずにたくさんやり続けるって感じだと思うんですよね。

S:固定オプションだと比較的、解像度を上げるきっかけを掴めるかもしれないですけど、 RANDOMとか使ってしまうと、当たり譜面の時に上手く行っちゃうと、それが経験値にならないまま、たまたま上手く行ったになっちゃう。壁を越えた、できるようになった、みたいなところが無しにクリアできちゃう感じになるんです。 なので、RANDOMで粘着すると、ランプ自体は増えてるんですけど、できるようになることが増えてないので、あんまり成長してないっていう状態になるんですよ。それで慣れちゃうと、地力が上がらないままランプだけが増えて行く

N:サイコロ3個振って全部1が出るまでやってるだけで、それは(単に)サイコロを振ってるのと一緒だよみたいな。サイコロ投げの地力みたいなものはないですけど。

S:もしかしたら、自分の出したい数字を出すために、投げ方を変えるみたいなのはあるかもしれない。そういう、ゾロ目を出すための練習をするときに、投げ方をこうやったら上手く行くとか、1個ずつこういう風に投げるといいとか、同時に投げ続けてたら難しいからダメとか、そういう経験値が得られればいいんですけど。

N:もちろん、目標としてどうしても全白になりたくて、どうやら100回粘着すればできるかもしれないみたいな時には、「モチベーションが出るなら良い」みたいなアドバイスもできなくはないんですが。

S:でもアドバイスとしては、粘着をするっていうより、 本当に単曲のコツを教えるようにしていて。特に、皆伝とかはわかりやすいですけど、皆伝ってけっこう曲のコツが掴めれば抜けられると思うんですよね。ある程度地力があれば。そこは僕が(プレイ)動画とかを見て、地力が足りてなかったら「もっと付けてから挑戦した方がいい」って話をしますし。地力が足りてるなら後は単曲の攻略だけなんで、 冥の抜け方とか、卑弥呼の抜け方みたいな、「ここを抜けるためにはこういうポイントがある」みたいなアドバイスになると思うんですよね。

 

成功例を想像して、必要なものを逆算する

■コメント:「問題の整理に活用してるフレームワーク的なものはありますか」

――冥で言うと、冥は難しいよねみたいな所から、どれぐらいまで切っていくか、みたいな話ですが、たぶん1小節1ノーツ単位で全部覚えろとか、そういうことではないと思うんです。いいやり方はありますか。

S:他の方に言ってるのは、成功例を想像できないとダメだよねって。成功できる想像ができないのに、どうこうしても意味がなくて。

S:僕とかNORIさんとか、「なんかできそう」みたいなのがすごくわかると思うんですよ。「これはなんかいけそうだ」、逆に「これは無理だ」みたいなのが、多分なんとなくわかっていて。

N:すごく遠いけど、絶対に無理ではない。「絶妙な距離でいるな」みたいな感覚ってことですよね。

S:冥だったら、抜け方みたいなものがわかって、「ここでゲージ100%あったら逃げ切れるのに」とか。逆に「100%あっても抜けられないの、なんで?」みたいな。(その場合は)「ここで減りすぎてるよな」みたいなところで、じゃあどうやってそれに対して勝つかっていう、自分なりのロジックみたいな、できてる時を想像する。「これだけ指が動けばできるのに」とか、「この配置が急に見えないから、じゃあ正規で配置がわかった上で早入りして、あんみつで取ればいいじゃん」とかってなると思うんで。

S:できる算段みたいなのをちゃんとつけて、それがあると何が足りてないのか見えてくると思う。そういうギャップを取っていく方がいいのかなとは。

――全体として達成できるのかを考えると、自然と細部が見えて来るという形がいいってことですね。

――皆伝の冥なら、加速する段階で「ゲージ100%あれば、ガシャガシャやってもいけるんじゃない」みたいな人から、「BPM170ぐらいから急に減る」みたいな人もいたりして。それって同じそうでも全然違いますね。

S:そうなんですよね。これがじゃあ、BPM110・120の段階で全然押せてないとなると、「ここは簡単なんだよ」ってことを理解する。仮に等速だったら、多分押せるはずなんですよね。前半を100%で抜けられる地力があるんですから。

S:僕のアドバイスでは、その低速に対してどうやって認識できるようにするとか、そういうアプローチの話はするんですけど、そういう感じでできる想像があるだけで、全然違うのかなと思うんですよ。

 

”憑依”と心的イメージ

あえて抽象的なアドバイスをする

――(アドバイスのときは)手取り足取り全部言っていくのか、その人自身に工夫する方法を考えてもらうのか。

S:段位抜けに関して言えば、地力とか認識力とは別の軸で、抜け方のイメージがつかない状態になってたりして止まってるものだと思うので。自分で掴んでもらうのは最終的にはやらなきゃいけないんですけど、どちらかというとけっこう丁寧に伝えるようにしてますね。

――逆に、そういう感じではない(その人自身に考えてもらう)時もあるんでしょうか。

S:認識力の時とかはそういう場面が多いかなとは思いますね。 NORIさんへアドバイスした時とかがそっち寄りだったかな。

N:確かに「ちゃんと譜面見なさい」って言われたんですけど。

S:それしか言ってない(笑)。

N:もちろん直接的に、SUDDEN+とか姿勢とか変えてもらったりもしたんですけど。認識力の時は「ちゃんと譜面見なさい」って言われて。それって多分、丁寧にSEIRYUさんに「譜面を見るっていうのはね」って言われるよりも、譜面を見るってなんなんだろうっていうのを、 自分の中で試行錯誤なのか、見つけないことには、掴まないとどうしようもない

N:「漫然とノーツを見ていて、ブロック認識みたいな感じに寄りすぎてる。それは、それでも押せちゃうからだろうな」っていうのはあれども、それを「頑張って横認識に切っていってください」っていうのは、(アドバイスされた相手が実際に)できるようにならなきゃ仕方ないことだから、なんですかね。手取り足取り教えるというよりかは、 「これが今できてない、だからできるようになるために、自分の中で考えてやってみろ」って言うのが良かったのかなって思ってます。

S:そうですね、割とそういう感じで。やっぱり完璧に言語化して伝えるみたいなのは不可能だと思ってるんですよね。

S:一般的に横認識とか縦認識とか言われてますけど、正直 僕もよくわかっていなくて。恐らくこういうことだろうなって理解はできるんですけど、いわゆる横認識を本当に意識できてるかどうかはよくわからないですし、それを伝えることも僕はできないですし。やっぱり言語化はできない。 

S:じゃあ、それに対してどうやって教えるかというと、僕はまずいったん、その人に”憑依”するみたいなことをするんですよ。

 

アドバイスする相手に”憑依”して、相手の心的イメージを手に入れる

憑依:霊などがのりうつること。 ―デジタル大辞泉より

S:(例えば)NORIさんに憑依するんですよ、NORIさんと同じくらいの身長になって、同じように足を上げて、NORIさんのカスタマイズのまま、同じように認識をしてみるってことをするんです。それで、「多分ここを見て、こうやって認識してるから、この譜面をこうやって拾ってるんだろう」みたいなのを、自分なりに直感的に、まず知覚するんですよ。そうすると、それ(今の見方)をやってるとこの状況のままだから、別の見方をしたらどうかっていうアドバイス(ができる)。新しい視点で別の見方、こういう認識の仕方をしたらどうかっていうのを伝えるんです。

S:僕がやってる心的イメージを掴むきっかけを持ってもらうところで、NORIさんに「譜面をちゃんと見てください」って言ってたとき、(NORIさんが)譜面を抽象的にふわっと認識していて、ノーツにあんまりピントを合わせずに見てるんだろうなっていうのを、僕は憑依して感じてました。実際、僕も普段そっち寄りのプレイをしてる。

S:じゃあ、NORIさんのやるべきことは何かっていうと、ノーツにピント合わせることだったり、ノーツとノーツの間隔を理解することだったり、 ノーツをどこのタイミングで押したら光るかを理解することだったり。そのためには、目線をちゃんと固定する必要があるんですよね。

S:これをじゃあ、そのまんまNORIさんに伝えたところで、逆にわからなくなると思うんですよ。何をしたらいいか、ノーツにピントを合わせるだけじゃうまくいかないし、じゃあ目線固定してくださいとかって言われても、 よくわからないしで。

N:「(既に目線固定は)してるんだよ」みたいな。

S:そうなんです、自分なりにはしてるつもりですから。だから、あえて抽象的に言うように、はっきり言わないようにしていて。そこは自分で、直感的に掴んでもらう必要があるから。

 

具体的すぎるアドバイスは、相手に正しく伝わらないかもしれない

S:NORIさんは勘が良かったので、「ちゃんと見てください」だけで、僕の心的イメージを全部キャッチできてたんですけど。それでダメなら、ちょっとずつ具体性を持たせたりはするんですけど、やっぱりハッキリ伝えすぎることは避けるようにしているかなと思ってます。あんまり具体的なことを言うと、それに意識が引っ張られて、それ(だけ)を意識しようとしちゃうんですよね。

S:「ノーツにピントを合わせてください」って言ったら、それを意識しても目的に沿わなくなっちゃう。ピントを合わせることだけが目的じゃないですし。今までふわっと見てたのを、ちょっとだけスコープを絞って、塊の幅を狭めて、そうすることで見えてるノーツの解像度をちょっと上げるみたいなことをする。その解像度を上げるために、目線固定が必要だっていうのが、(理由の)後付けであったりするので。

S:それを伝えるために、あんまり言葉で言いすぎると、 その意識だけに捉われすぎちゃう。なので、抽象的に言うことで、 (アドバイスされた相手が)自分で咀嚼して、肌感で伝わるようにして、なんとなく理解していくってのが、大事だろうなと思うんです。

――僕自身は言葉で考えるタイプなので、今の青龍さんのお話はすごく為になったと思ったんですけど、場合によっては今みたいな話を聞いた時に、最後の「目線固定」ってところだけ一人歩きすることがあるのかなと。

S:そうなんですよ。

――(アドバイスの全体を)文字とかにしちゃうと全部一緒になりますけど、青龍さんの伝えたさみたいな物は結構違うんじゃないかなって思うんですよね。少なくとも言えるのは、受け取る側と教える側によって、言葉にするのがいい場面と悪い場面がありそうですよね。

S:そうなんですよ。なので人によっては、一生懸命たくさんやれみたいな、 ある意味すごく抽象的に(アドバイスする事も)、あれはあれでいいことだと思うんですよね。

――間違いなく、それが必要だって人はいますね。

S:それで、何をやったらいいかみたいな、アドバイスに更にちょっとだけ具体性があると、良い見方ができると思う。それがわかっていれば、「たくさんやれ」だけでいいんですけどね。その辺、伝わる塩梅に抑えておかないと、具体的なことで余計に迷走することはすごくよくある

 

青龍塾のすごさ:アドバイスの経験値

――今のお話を聞いて、SEIRYUさんは本当に教えるのがうまいんだなと。憑依するみたいな話って、心的イメージの逆をやってるみたいな感じで、普通の人が上手い人の気持ちになるっていう(普通の意味での心的イメージ)の逆ですよね、要するに。

S:そうですね。

――なかなか、それをやってる人ばかりではないと思うので。みんな青龍塾を受けた方がいいなって思いました。

N:本当に思うのが、「NORIもプロ選手なんだから、やろうと思えばできるんじゃない」みたいに思われる方も、もしかしたらいるとは思うんですけど、私は人に憑依するっていう行動をどうやればいいのか、全くわからないです。 自分の地力じゃ足りないからなのかもしれないですけど、U*TAKAさんが同じことをできるのかって言われると、ちょっとわかんないです。

N:多分、SEIRYUさんがすごく考えながらビートマニアをしていて、本当にいろんな人にアドバイスしてきた経験があるから、そういった、"憑依の地力"がすごく高い。

――なかなか相手の気持ちになってっていうのが、そこまで(アドバイスする相手に)寄れないというか。

S:そうですね、やっぱり寄ろうとはしてるかなとは思いますね。

S:最初の方に話した、実力によって壁があるっていうのが、(アドバイスのために)用意する1個の要素ではあって。用意して、自分が同じ運指・目線でプレイ動画を見た時に、多分この辺を見てるんだろうなって。それで、自分も同じ見方をして押そうとすると、同じようなミスをきっとする。だったら、この速さはさすがに速すぎるから、カスタマイズの調整をするとかになる。

S:そういう、その人の目線に合わせて入り込んで、 カスタマイズとか認識の仕方っていう視点、新しい視点をちょっとだけアドバイスで入れてあげると、それで気づきが得られるといいなとは思うんです。

――どうでしょう、今のお話を聞いて、NORI塾を開けそうだなと思いますか。

N:私も、たまに(上達のための質問を)いただくことはあって。もちろん、今どれぐらいなんですか、何やりたいんですか、何に困ってるんですか、の3つは聞くんですけど、それを聞いたところで、「そうだよね」って寄り添うまでしかできない。ジェネラルなアドバイスはできるんですけど、青龍さんのように、オーダーメイドをされたものは、絶対できないですね。

――今のお話を聞いてると、完全に同じ目とか同じ手になろうとしてますもんね。

N:いや、本当にすごいです。

 

自分自身に上手い人を”憑依”させる

――青龍さん自身がすごく上手だということに関連しますが、そういう"憑依"みたいなことを、自分自身にもやっていたりするんでしょうか。

S:自分の場合は、最近だと特に上手い人を憑依させるのはあって。

S:やっぱり各分野のプロフェッショナルがいるわけです。例えば皿だったら、DOLCE.さんとか、U*TAKAくんとか。ズレハネが上手い人ってなると、PEACEさんとか、MIKAMOさんとか。中速精度でいうと、DON*さんとか、CHARMさんとか。そういうそれぞれのプロフェッショナルに、各分野である程度近づけられるようにすれば、自分も近しい実力になるだろうと思うんです。カスタマイズによってメリット・デメリットがあるので、完全な再現はちょっと難しいですけど。でも 押し方そのもの自体は、全く同じことができれば同じスコアが出せるはずなんですよね。

S:なので、押し方としてどうやるかっていうのを  、その人の動画を見て憑依させて、真似るみたいな。コツを掴んで、その曲のその配置、ズレハネとか、高速系とかが来た時には、こういう押し方に切り替えるってことができると、最強のキメラになるみたいな感じなので。自分が苦手としてたり、課題に思ってるところについては、上手い人を憑依させるみたいなことは、最近はやってるなと思います。

 

バイスとの位置関係を見直してみる

――押し方を真似するっていうのは、どれぐらいのところを見てるんでしょうか。例えば、「第1関節がこれぐらい曲がってるな」とか、そういう細かいことじゃないのか。

S:皿だと、皿に対して指を何本置いてるかとか、 皿を回してる最中に鍵盤をどこまで押してるのか、全部片手で取ってるのか、左手で1鍵2鍵まで取れてるのかとか。あとは、皿の入射角(下図参照)みたいな、どの位置を回してるのか、とか。X軸Y軸もちろん大事で、下の方を回してるのか、上の方なのか。

皿に対する「入射角」が小さい状態
引用:http://hatoking.com/journal/4352.html

皿に対する「入射角」が大きい状態
引用:http://hatoking.com/journal/4352.html

S:鍵盤だと、関節がどうっていうよりは、鍵盤からどれだけ指を離してるかとか、鍵盤に指を落とすときにどういう動きをしてるか、鍵盤をタッチするまでの動きですね。鍵盤に対する高さとか、打鍵する指の振り方とかを見て、それを自分と比較した時に、鍵盤から指がすごく離れてるなとか、大振りになってるなとか、柔軟な動きができてないなとか、色々と要素のギャップを出して、似たような動きを頑張ってするように。

 

目標の人のやり方で、目標のスコアを狙う

S:プラスして、 その人のスコア水準を狙うみたいなことをするんですよ。今までのスコア水準が、例えば☆11でMAX-30や40ばっかりだったとします。すると、めちゃめちゃ上手い人って、 普通にパッとMAX-1桁を出すんですよね。そのつもりでやる感じです。

S:押し方をなんとなく憑依させられたら、意識を集中させて、スコアを出す方に行く。そうすると、押し方が元に戻ったりして、行ったり来たりして、自分なりのいい押し方に持っていく感じ。

――目標にしている人と、同じ押し方で、同じスコアを出すことを目指すんですね。

S:そうですね。課題に対して、押し方で成功体験を得て、あとは同じ水準を出せるようにする。そうやって近づけていって、正解を知る、正解を憑依させるって感じ。

――例えば、皆伝を取ったばかり、全白になったばかりみたいな(プロに匹敵するほどの腕前がない)人が、プロ選手と同じ押し方を目指すのは、いいのか、悪いのか。どう思いますか。

S:何回か真似をして、そのコツ・感覚を掴むってことができればいいと思うんですよね。僕の場合は同じ水準のスコアを出す目標ですけど、(普通のプレイヤーでは)そこがなくなるイメージ。自分の水準で、自分がクリアしたい曲、スコアを出したい曲で、そのコツを掴めるだけで、ひとつ壁が壊せるみたいなのがあるといい。なので、そのコツを掴むきっかけとして、上手い人のプレーをなんとなく真似することは、実力が離れていても意味があると思うんです。

――上手い人のことを真似した状態で、実際に上手くなるっていう体験をするっていうのが大事。確かに自分自身のことを思い返しても、できるようになったことは、できる。当たり前のことを言ってるだけなんですけど。

S:そうです。言葉だと素っ気なくなっちゃうことが多くて。ただ、そういうのが本質なんですよね。

――(実際には)やらないことも多いですからね。上手い人の配信見て、「やっぱりこの人上手いな」で終わりますからね。

S:そうですね、何でできるんだろうな、みたいなところがあると思うんです。自分とどれだけ、何が違うんだろうっていうのがあるので、 そういうところの解像度を、頑張ってあげていくってことだと思うんですよね。

 

上手い人を積極的に真似して、自分に合う方法を模索する

N:さっきのレベルの差の話は、例えば「U*TAKAさんが緑数字200だから、俺も200でやんなきゃいけないんだな」は破滅すると思うんですけど。

S:それは破滅しますね。 

N:私が顕著だなと思うのは、ガチ押し(については)意識どうこうよりも体の使い方に寄ってるものなので、どんなレベルからでも、青龍さんがよく仰ってるやり方を(真似して)スナップってなんだ、手首で押すってなんだ、みたいなのを考えてみるっていうのはある。

N:特定の分野においてはどんなレベルからでも、上手い人を真似する、試してみることは有益なんじゃないのかなっていう気はしますね。「SEIRYUさんだからできるんでしょ、俺はまだ関係ないや」はもったいないんじゃないかな。

N:逆に、全てをやったからって上手くなるわけでもない。そこの塩梅は、自分で納得しなきゃいけない。真似したら上手く行くかもしれないから試してみようは、どんなレベルの人でも持っていていいんじゃないかな。

――試してみて、上手くなったら続けるし、ならないならやめる。

――緑数字は本当にその通りで、(実際に)どんどん上手くなるごとに減っていく人が多い。少しずつ少しずつ、ちょっと調整してみて、ダメなら戻すみたいな。

N:青龍さんとか260ですもんね。

S:260ですね、結構遅めかなと思ってます。

N:プロの中では相当遅めですし、それこそ(ドラフト)1巡目の中では一番遅いぐらい。

 

カスタマイズは、メリットとデメリットの塊

――気になるのは、同じぐらい上手い人で微妙に違ってる時に、「緑数字ってあんまり関係ないのかな」とか。(カスタマイズが)Aの人Bの人がいて、どう(選択)するんでしょうか。

S:やっぱり何を目指すのかが、ここはすごく大事になってくると思っていて。カスタマイズって、メリット・デメリットの塊だと思うんですよ。

S:緑数字が早ければ良いっていうか、早い遅いの軸と、 レーンカバー・リフトの表示領域の広さ狭さっていう2軸があって。その軸で、仮にめちゃめちゃ極端に寄せるとこうなる、っていうのの中間地点みたいな。

S:例えば、 表示領域がすごく広めだと、緑数字が他の人と変わらなくても早く感じるけど、ノーツの間隔が広がるのでズレハネとかをすごく捉えやすいんです。なので、一個一個のノーツを光らせる目的では割といいかなと思うんです。逆に、密度の高い譜面が来ると、NORIさんとか僕とかがやってる、フワッと認識するのがほぼできなくなるんですよね。視界が広すぎて(表示領域全体が)目に入りようがなくて、デニムがどういう形、階段がどういう形みたいな認識が、非常に難しくなるっていうデメリットがある。

S:(表示領域を)狭くすると、一体として見るみたいなのができるようになって、難しい譜面の認識のコスパがすごく良くなるんです。逆に、ズレハネとかがどれだけズレてるかよくわからない。どのタイミングで押せばスコアが出るのかが、ちょっと難しくなると思うんですよね。

S:U*TAKAくんみたいな、(表示領域が)めっちゃ狭くて緑数字も小さい人は、その両方をある程度持つようにしていて、視野が狭い状態で目線固定もしやすくて*2、ズレハネの幅もわかるから、難しい譜面でもスコアが出しやすいカスタマイズではあると思うんですけど。ただその分、いわゆる人間の動体視力は音ゲーマーならだいたい同じくらいだろうっていう前提*3だと、あれ(U*TAKAさんのカスタマイズ)ってかなり厳しい状態だと思うんですよね。だから、集中力がすごく高くないと見逃しちゃう。譜面を目線固定して捉えるっていうのは、幅が広がろうが狭かろうが、(ノーツが降る速度が)早い状態ではしなきゃいけないので、そういう難しさはあります。だからこそ、急に難しい譜面が降ってきた時に追いつかなくなって崩れやすくなったりとか。あと、体調がすごく影響しやすくなると思うんですよ。

S:だいたいプロがみんな同じくらい(の緑数字)になってるのは、多分そのバランスなんですよ。難しい譜面も、簡単な譜面も、どっちもある程度は認識できるバランス。早い方がスコアは出るし、遅い方が安定感は取れるしっていう。そのメリット・デメリットを、どこを重視して、何を自分は得意とするか。だからカスタマイズの違いは、得意不得意が大きく出るのかなと思うんです。

 

カスタマイズの選択は、目標と現在の中間地点に

――だから、(アドバイスされる側が)どういう風になりたいと思ってるかに対して(選択するべき)っていうことになるんですね。

S:そうです。結局、僕がアドバイスするときは、何ができるようになりたいかによるんです。(アドバイスされる)本人がなりたいのが、PEACEさんみたいになのか、 RAGくんなのか、U*TAKAくんなのか、それによって全然違う。難しい譜面を全部フルコンできるようになりたい、RAG君みたいになりたい、っていうんであれば、多分あんまり緑数字早くない方がいいと思いますし、ある程度(表示)領域も狭まっていた方が難しい譜面の認識がしやすいので、そういうカスタマイズの方がいい。

S:(仮に、アドバイスされる側が)広い方がいいって言っても、でも「今あなたがやってる状態だと、物量はずっと苦手ですよ」みたいなところがあるので。少し見やすくするためにも、ちょっと狭めた方が、もうちょっと難しい譜面も認識しやすくなるから、こう変えた方がいいかもしれないって。

S:僕も、そのアドバイスが絶対合ってるかはわからないので、はっきりとは言わなくて、本人が好きなやり方を選んでもらうようには、もちろんしてるんですけれど。どういったプレイヤーになりたいかっていう目標があるから、(目標に対して)そういうアドバイスをするみたいな感じです。物量をもっとできるようになりたいんだったら、同じカスタマイズだとちょっと広すぎるので、中間地点を目指すみたいに。

N:そこまで極端ではないんすけど、私もやっぱりGuNGNiR [L]とかVerflucht [L]とか、重たい(物量譜面)って、やっぱりいつものオプションのままだとしんどくて、緑数字をちょっと増やしたりするんですよ。ある程度は固まった中でも、譜面によって多少 増やしたり減らしたり。主軸は同じのまま、ある程度の幅の中で揺らすみたいなことは、やれるんじゃないのかな。

 

選択肢が多いと視野が広がる

――お二人のおっしゃる通り、(カスタマイズの)引き出しが色々用意できれば、自由に選べる。それこそ、最強は誰にでもなれるっていう状態だと思うので。ある程度以上うまい人はあんまり、「こう(特定のカスタマイズ)じゃなきゃいけない」みたいなことを言わないイメージがあるんです。

S:そうですね。さっき話したメリットとデメリットっていう、そのトレードオフみたいな関係がわかって、この場面ではこれがメリット、この場面ではこれがデメリットだってことがわかってると、選択肢を持てるし、視野の広さになる。そこが直感的に理解できてる人は(本人に合うカスタマイズを)選択してます。

――メリットが(重要)っていうのは、本当にそうですよね。メリット・デメリットをちゃんとわかってると、(例えば)ConfisrieとかGuNGNiR [L]とか、皿が降ってくる所が決まってる(譜面)で、できるだけ手首皿使いたくないんだっていう人も、そこだけなら(手首皿を使う)ってこともできる。

――青龍さんのおっしゃる通り、そのカスタマイズの何が良くて何が悪いのか、そのデメリットの一つに「自分が使いたくない」っていうのもあっていいと思うんですが、そこも含めてどう(選択する)かっていうことですよね。

S:そうですね。何事も、自分なりの答えが何なのかって話なので。手首皿はメリットがあるから、絶対に手首皿じゃないといけないわけではなくて。手首皿っていう答えを選ぶんであれば、手首皿を練習するしかないですし、Confisrieとか3y3sみたいな難しい曲が来た時に、僕みたいに小指で取るって決めるんだったら、小指皿で極めることに向かえばいいです。

S:できないことに対してどうするかっていう正解の方法は、なんでもいいと思うので。何か正解を自分で探して、どうやったらできるようになるのか、自分なりに答えを自分で選べばいいのかなと思います。あくまでどれも手段なので

――思ったのは、「上手い人はあまり何も考えてない」みたいに言う人もいますが、BPL観てると、そんなことはないだろうと思って。それこそ、どの曲を選ぶか、どのオプションにするか、すごく色々考えながらやられてると思うんですけど。でも、その考えるポイントっていうのが、そういう意味では結構(一般プレイヤーと)違う。メリット・デメリットみたいなことに逐一注目するっていうのは、プロの方とかは結構やられてるイメージがある。

S:そうですね。メリット・デメリットをちゃんと理解しておくことで、(本人にとって正しいカスタマイズを)選べると思うんです。

 

固定オプションと譜面傾向の変化

S:僕がいろんな方に教えていて、なんとなく自分の中では、正規の方が片手に寄った配置が多いので、地力がちょっとつきやすいと思ってるんですよ。(その代わり)正規だと正規の配置しか認識できなくなっちゃうので、(正規譜面ばかり触っていると)RANDOMの配置が認識しづらくなって。さっきの話に出たように、☆11以降だとランダムっぽい配置が正規で出てくるので、認識が苦手になるっていう構図だと思うんですよ。

S:逆に、RANDOMでクリアを狙うみたいなことをすると、当たった時だけ上手くいってしまうっていうのがある。 比較的、片手に寄った配置ではなくて、右手左手で分業になったような配置でクリアすることになるので、地力はつきにくい。ですけど、いろんな配置を目にすることで、それに対する押し方の答えっていうレパートリーが増えるから、認識力は上がる。そういうメリットとデメリットがあるのかなと、思ってるんですよ。

――いま仰っている地力というのは。

S:押し切る力ってことですね。片手に寄った譜面のほうが(押し切るのは)難しいので、そういう力はすごく培われるのかなと。

――意外とそういう話って、Twitterとかでもあまりどなたも話していないんじゃ。

N:ここまで考えてるの、この人(SEIRYUさん)ぐらいしかいないと思う。

S:僕の中では、メリット・デメリットなんで、どっちがどうはないんですよ、あんまり。どっちもいいところはあるし。どっちかに寄ると、どっちかが苦手になるだろうっていうのがあって。それで、得意でありたいのかっていうのも、それもなりたい目標がどうなのかに依ってくるので、やっぱり一言じゃ全く語りようがないんですよね。

――メリット・デメリットは、(単に)有無だけじゃなくて、どれぐらいのインパクトがあるのかっていう量(の問題)も結構ありますよね。(正規とRANDOMの)どちらかだけだと皆伝になれないレベルなのか、みたいな。実際そんなことはないと思っていて。

S:そうなんですよね、あくまでメリットとデメリットってだけなので、別にメリットを無視しても培われるものはあるんですけど。ただ、RANDOMで正規と同じ配置はほぼ降ってこないので、RANDOMで正規の力をつけるのは難しいんですよね。逆に、最近は正規でRANDOMっぽい(配置の)譜面があるおかげで、正規だけでもRANDOMの力はちょっと培われてくる。

――10年前と今だと全然違うという面があると。

S:譜面の傾向が昔と大きく変わりすぎているのもあるので。一概に、正規かRANDOMかっていう言葉でどっちがいいみたいなのは、もう無いなっていう感じはいつもしてるんです。

S:後は、BPLとか大会とかで、固定オプションを使う使わないは、リスクをどれだけ取るかみたいな部分もあったり。(特に)昔からある譜面は、右手左手に寄る譜面が多くて。それでスコアを出すのは難しいけど、外れ配置よりはマシなのか、大差ないのか。そのバランスと、自分の押せる力とかとのリスクを取って、どっちの方が安定するかで選んだりって感じだと思うんですよ。

――それこそ、相手の上手さによっても変わったりするのかなと。

S:そうなんですよね、戦略の取り方がやっぱり色々あって。

 

プロになって変わったこと、変わらないこと

S:それこそさっき、プロ選手は色々考えてるって話があったと思うんですけど、プロになるまではあまり考えてなかった人が多かったのかなとは思っていて。

S:どちらかと言うと、プロになった以上 今までより使命感が強くなって、どうしても勝たなきゃいけなくなったんだと思うんですよね。それによって、解像度を上げざるを得なくなった。色々考えないと、ただやってるだけじゃ勝てない状況になったから、プロは今考えてるってのもあって。逆に、そうじゃない(使命感に追われていない)人はそこまで考えてないのかなとは思いつつ。

S:ただ、普通の実力の人より、たぶん解像度はあり得ないほど高いんですよね。

――間違いないです。

S:そこがやっぱり違うんですよね。考えてないように見えて、本人も考えてるつもりはなくても、 気付いたら解像度がめっちゃ高かったっていう感じ。ただ言葉に落とし込まないだけで、それを咀嚼して試行するみたいなことも、あまりにも当たり前すぎて考えてないのかなとは思うんですよね。

N:私とかそうだと思います。(BPL以前は)漫然とビートマニアやって、「これやったら上手くなりそう」「これできないからこれやろうかな」「これ今やってて面白くないからああやってやろうかな」みたいな。たまたま上手い方に転がっていったんだろうなっていう気はしますね。

――もう一つ思うのは、一緒に音ゲーやってる知り合いが多い人って、上手い人が多いなって。解像度って、1人で見るより色々な人が見てる方が、見えるものが増えるのかなと思うので。色々な人が色々言ってるのを聞いてっていうのも。

N:万事そうですけど、こうやって話していて初めて言語化できることって、多分いっぱいありますよね

S:そうなんですよ。

N:音ゲーの会話を、「あれができなくてさ」みたいなとか「これができてさ」みたいなのを、友達と話してる中で、「ということは、つまりこうか」みたいに形作られていくチャンスが多い方が、解像度なのか、考え方なのかっていうのを、具現化してくことができる。 

 

青龍塾のこれから

教える人が増えると、全体のレベルが底上げされる

――プロが教えてくれるのはすごく大事だと個人的にはすごい思っていて。(青龍さんは)今後も塾みたいな活動は続けていかれるのかなと思うんですけれども、今後こうしていきたいなっていうのはあるんでしょうか。一対一なのか、もっと広くなのか。

S:僕みたいに教える人が増えるといいなとは思ってるんです。それはプロに限らず、 教えるの得意っていう人はいると思うんですよね。なので、そういう人がこういうサービスをやる、それの足がかりじゃないですけど。実績作りとか、いい教え方みたいなのをみんなで共有したりして、そういうサービスが増えていくと良いなとは思ってます。

S:それによって、そのプレイヤーの実力もすごく上がりますし、上手くなりたいっていう目標を持つ人も増えたり。プロになれる人もどんどん増えると、プロのレベルも上がりますから、そういう全体の底上げっていう意味で、やっていきたいなとは。 

 

マンツーマン形式の良いところ

S:(形式は)一対一が基本的にはメインかなとは思っていて。大多数に対してわっというのは、それこそ定説みたいに、「メリット・デメリット(について)喋ります」みたいなので終わっちゃう気がするんですよね。

S:(アドバイスする上では)さっきの目標ってところが一番大事で、あれが人によって違うんですよね。現時点の実力もそうですけど、それよりも何を目指してて、何が必要なのかっていうことを話すときに、個別じゃないと目標もわからない。実力と悩みだけを言われても、どこを目指して僕がアドバイスすればいいかっていうのが、わからないところはあるんです。なんとなく、その悩みに対するコツは言えるんですけど、本当にその悩みを解決することが本人の目標と合致してるのかどうかは、ちょっと僕が保証できないんです。 そういう意味でも、確度の高い話ができるようにするためには、個別の方がはやりやすいなとは思って。

S:(目標は)本人もあまり意識してないことですし。別に目標を立てろってことではないんですよ、これって。立てることが目的なのではなくて、自分がどうなりたいか。目標っていうと、なんか立てて達成しなきゃいけないみたいですけど、そういうわけじゃなくて。立てて達成する必要は別になくて、深層心理として「自分がこういうプレイヤーを目指している」っていうところを、あぶり出すみたいなところが、目的としてあります。

――みんながみんな上手くなる必要はないっていう。

S:そうそう、そうなんですよ。上手くなることを目的としてるのか、楽しめる実力になりたいのかでも、やっぱり違うので。楽しめむために上手くなる人と、他人に勝ちたいから上手くなる人、肩書きが欲しいから上手くなる人と、色々あると思うので。

S:本質的にこういう状態がいいよねっていうのは、単に段位とかランプとかスコアとかじゃあ測れないかもしれないですし。どういう状態がいいんだっていうのは、すごくハッキリさせるようにはしてますね。

――なるほど、なるほど。

S:たまに話題に上がる、「上手くなるには楽しむことだ」みたいなのがあるじゃないですか。でも、楽しむことで上手くなれるわけではなくて、本人が本当に達成したい目標というか、なりたい形っていうのに沿ってると楽しいとか、なりたい形になれてるから楽しい、みたいなのはあると思うので。

S:その辺りがやっぱり自己分析が必要だったり、そのために僕と話して、それを見つけ出すとかっていうのが必要なんだろうなと思うんですよ。何が自分にとって楽しいとか、何を目指してるのかとか。

 

なりたい自分が見つかると、ビートマニアはもっと楽しくなる

S:僕はもともと、得意な曲ばっかりしかできなかったですし、得意な曲もかなり狭かったんです。超クリアラーで、スコアも後回しでいいってずっと思っていて、クリアだけがこのゲームだって思ってたので。

S:ただ、同じクリア水準の人とスコアを比較して、(相手のスコアが)めっちゃ高かったりすると、それが恥ずかしいみたいに思ったり。恥をかきたくないから、そのスコアを埋めるみたいなのとか。そういうのが積み重ねで。元々はそのスコアも、BPM180から190ちょっとぐらいまでしか光らなかったんですけど、そこから高速もできるようになりたいとか、中速も光るようにしたいとか。

S:アリーナっていうのが出てきて、皿とかソフランもどうにかしなきゃいけなくなったりして。負けないようにこっそりやったり、苦手を詰めるようにしたり。上手い人に絶対勝てる武器を作るために、より得意を伸ばすみたいなこともしたり。いろんな感情があって、それをやりたいから、これを上手くなるみたいなのが。

S:それは目標を立てるとかじゃなくて、そういうことをしたいからやるっていう。なので、そういうのを他の人にも見つけてもらって、 それに向かって僕もアドバイスできるのが一番確度が高くて、楽しめるんだろうなと思うんですよね。

 

最後に

20000文字超におよぶインタビュー記事、最後までお読みいただきありがとうございました。

前回のインタビューに引き続き、トッププロにしか見えない貴重な視点がたくさんありました。今回のSEIRYUさんはそれに加えて、青龍塾主催としての「教えるプロ」の観点からも、ここでしか聞けない話がてんこ盛りだったのではと思います。

インタビューの発端になった<心的イメージ>について、より実際的・実践的なとらえ方を知ることができた今回は、ビートマニア音ゲーの範疇を超えて多くの人に知ってほしい内容を含んでいると、個人的には感じました。

 

記事化するにあたって、インタビューの内容をギュッと凝縮してお届けしています。そのため、書けなかったエピソードや、細かいニュアンスの違いなど、気になる方はYouTubeの配信アーカイブもご覧になってください。

 

改めて、インタビューに応えてくださったSEIRYUさん、インタビュー内容をより豊かなものにするためにご協力いただいたNORIさん、本当にありがとうございました!

 

 

本記事についてのご意見・ご感想のある方は、記事へのコメントあるいは冒頭のTwitterまでご一報をお願いします。


それでは、良き音ゲーライフを。

 

*1:6鍵と7鍵の交互連打。1Pプレイヤーの場合、多くは薬指と中指を使って処理する必要があり、最も取るのが難しいトリルの形となる。2Pプレイヤーなら12トリル

*2:多くの場合、表示領域が小さいほど目線を固定する位置が上下にブレにくいと言われています

*3:動体視力の個人差については不明な点も多いですが、持って生まれた個人差と比べて、訓練によって向上する部分は無視できないほど大きいと考えられています

【お願い】CPI含む私の創作物の紹介・宣伝に関して

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 

 

表題に関して、これまで基本的にはCPI含む私の創作物の紹介・宣伝をお願いしてきており、実際に多くの方に拡散していただいて、CPIは6000人を超える方にユーザー登録をいただいています。

 

一方で、一部のSNSや匿名掲示板などで、参加者に快く受け入れられていない状況で紹介・宣伝が繰り返され、いわゆるレスバトルのような形に発展している状況が見受けられています。

 

前提として、データに基づく推定値に一定の客観性があること*1は、「その推定値を利用すべきである」という結論には関係ありません。

 IIDXをはじめとして、基本的にはゲームをどのようにプレイするか、何に従ってプレイするべきか、ということは、プレイヤーおよびそのコミュニティの自由な意思に委ねられています

 

データの解釈は常に直感的なものではありません*2。例えば「95%に当てはまる」推定値はすなわち「5%には当てはまらない」ことを意味しますが、中には「95%に当てはまるのに自分に当てはまっていないということは、自分は普通ではない/おかしいのではないか」感じる方がいます。

 また、データや数字には、それら特有の「有無を言わせない」力があります。その推定の前提を共有しない状態で、「とにかく正しいから」と結果だけが与えられることは、健全な議論にはつながりません。

 すなわち、「自分にはこの指標は当てはまらない」と感じて指標を利用していない人に、客観性を振りかざしてその指標の利用を押し付けることは、データによる暴力に他なりません。

 

ついては今後、善意に基づいてCPI含む私の創作物の紹介・宣伝をしていただいている方においても、ある特定の人・コミュニティに一度拡散していただいたあと、そのことが積極的に望まれている状況でないと判断した際には、二度目以上の拡散は控えていただけると幸いです

 

私はこれまで、個人の経験に基づかない形でIIDXのプレイの指針となるような情報を作ることを目的に、様々な創作物を発表してきました。それは、身近にプレイの指針となるような上級者のいないプレイヤーであっても、IIDXの上達を楽しめるよう、情報格差をできるだけ少なくすることが目的でした。

 その観点において、現状の指標(投票に基づく難易度表など)に私の創作物が取って代わることは、私の望むところでは一切ありません。むしろ経験的な上達論を含むすべての指針がコミュニティに増え、様々なやり方で一人一人が上達を楽しめるようになっていくことが一番の願いです。

 

今後も上記の方針に従って創作物の発表は気ままに継続していきますので、ありがたいことに利用・応援してくださっている皆様においては、IIDXの上達を望むすべてのプレイヤーがそのプレイヤーの望むかたちで上達を楽しめることを支援していただきたいです。

 

 

本記事についてのご意見・ご感想のある方は、記事へのコメントあるいは冒頭のTwitterまでご一報をお願いします。


それでは、良き音ゲーライフを。

*1:そもそも推定の過程には創作者たる私の主観があるていど関与しており、その影響は可能な限り小さくしようと試みてもゼロになるものではありません

*2:データに基づく推定が様々な条件のもとで常に正しくならないことは前提です

700人のIIDXプレイヤーにアンケートして、迷ったときの最適なプレイ画面設定の探し方を考えた

要約

IIDX SPのプレイ画面設定に関するアンケートを作成し700人弱の回答をいただきました。

・その結果、段位・アリーナランクが上がるほど、緑数字が小さくなる相関関係を認めました。上下合計の白数字には同様の相関関係はありませんでした。

・また、判定タイミング・目線位置で緑数字を調整して得られた、ノーツの視認から判定までの時間(以下、反応時間)について考えると、段位が上がるほど反応時間は大きくなる一方で、アリーナランクが上がるほど反応時間は小さくなりました

・このことから、プレイヤーが緑数字を減らすとき、クリア力を上げることが目的の場合は、判定タイミング・目線位置を調整することでノーツの視認から判定までの時間が短くなりすぎないようにすると良いかもしれません。

・この結果を踏まえて、迷ったときの最適なプレイ画面設定の探し方を提案しました

 

====以下本文====

 

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 

今回はこちらの記事↓

the-safari.comを拝見し、「(プロに限らず)設定とクリア力・スコア力との相関を知りたいな~」と思いTwitterでアンケートを募ったところ、ありがたいことに約700件もの回答が集まったので、その分析結果をまとめてみました。

 

質問項目

アンケートの目的はプレイ画面設定とクリア力・スコア力との相関を調べることです。

そのために、以下の項目を用意しました。

  • 段位 +(利用者のみ)総合CPI
  • アリーナランク +(利用者のみ)総合BPI
  • SUDDEN+白数字(画面上部の白数字)
  • LIFT白数字(画面下部の白数字)
  • 緑数字
  • 判定タイミング
  • 目線位置

 

目線位置は以下の図のように、ノーツの流れる範囲を下から10段階に分け、プレイ中に平均的に眺めている高さを答えていただきました。

https://p.eagate.573.jp/game/2dx/29/howto/play/option_speed.htmlより筆者改変
アンケートに使用したものと同じ図です

緑数字・判定タイミング・目線位置から、プレイヤーがノーツを見てから判定されるまでの時間(以下、反応時間)を求めることができます*1

 

以下では、アンケートで直接質問したプレイ画面の各種設定と、後から算出した反応時間について、クリア力・スコア力との相関を調べていこうと思います。

 

回答プレイヤーの全体分布 

クリア力の指標として調べた段位の分布です。

約半数が皆伝、1/4が中伝となっています。こちらのサイトによると前作*2皆伝は9.3%、中伝は13.1%だそうなので、明らかに上級者に偏った分布となりました。

 クリア力の指標として用いるにはこのままだと分布が偏りすぎている*3ので、皆伝のうち総合CPIを回答したプレイヤーのみを分析に採用し、その中でも総合CPIが2200を超えているプレイヤー(IIDXプレイヤー全体の上位500人≒上位1%程度)を別枠として集計しました。

 再集計したものがこちらです。

 このうち、外れ値処理などの関係で、実際には初段以上のプレイヤーを分析に採用しました。

 

次に、スコア力の指標として調べたアリーナランクの分布です。

https://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWwhttps://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWwhttps://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWwhttps://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWwhttps://twitter.com/TheSafaricom/status/1567050114040221697?s=20&t=W9lHNegXCXuJQcInSZkJWw

Aランクが6割弱と、こちらも段位同様の上級者に偏った分布となりました。ですが、段位と違って特定のランクにプレイヤー分布が偏っているわけではないので、特に区分変更を行わずに分析に採用しました。

 こちらも処理の都合でアリーナモード既プレイのプレイヤーのみを分析に採用しています。

 

段位とアリーナランクの対応を図にまとめてみます。

 当然ながら段位が上がるほどアリーナランクも上がります。相関係数*4ρ=0.86でした。相関係数は完全な正の相関があると1に、一切の相関が無いと0になる指標で、0.8を超えているのは一般に強い正の相関があると言って良いはずです。

 

このように調べたい要素同士に強い相関がある状況では、擬似相関の出現に注意する必要があります。

 

相関係数で疑似相関を調整する

早速クリア力・スコア力と各種設定の相関を調べていこうと思いますが、その前に少しだけ以下の説明にお付き合いください。

 とってもわかりやすい↓のサイトに沿って説明します。

bellcurve.jp

次のデータは2015年12月末時点の各都道府県内にある映画館のスクリーンの合計数と可住地面積100km^2当たりの薬局数を表したものです。このデータを用いて相関係数を算出すると、「0.82」でした。つまり、映画館のスクリーン数と薬局の数には強い相関があるという結果でした。

しかし、一般的に考えて都道府県ごとの映画館のスクリーン数と可住地面積100km^2当たりの薬局の数は直接的に関係がないような気がします。映画館のスクリーン数が多いから薬局の出店数が増えるわけでも、薬局の数が多いから映画館のスクリーン数が増えるわけでもないためです。このような場合には、「第3の因子」の存在を考慮する必要があります。

https://bellcurve.jp/statistics/course/9593.html

この例では、「第3の因子」として人口密度を想定することができます。

 似たような例は、「小学生の漢字テストの成績と走る速さ」や「アイスクリームの売上と水難事故件数」などでも見られます。前者は早生まれ・遅生まれが、校舎は気温の高低が関わっていることが推測できます。

 

今回のアンケートに戻って、例として緑数字とクリア力・スコア力の関係を図にしてみます。

 この場合、仮に緑数字とクリア力とに強い相関があったとしても、スコア力の影響を除いて考えないと、「純粋なクリア力」と緑数字との関係がわからない、ということになり、逆もまた然りです。このような調整を行った相関係数相関係数と呼びます。

 

以下では、この偏相関係数を使って、クリア力・スコア力と各種設定の相関を調べていこうと思います。

 

緑数字とクリア力・スコア力

図の上に行くほどアリーナランク≒スコア力が、右に行くほど段位≒クリア力が高い。
青い四角形は各領域を表し、白い数字は各領域における中央値を示す。
n=1の領域については個人の特定を避けるために表示していません
相関係数の計算には採用しています)。

 図左上(L字記号)に偏相関係数を表示してあり、この図では

 ・アリーナと緑数字の偏相関係数:-0.11

 ・段位と緑数字の偏相関係数:-0.07

であることを示しています。すなわち、

 ・クリア力が一定のとき、スコア力が高いほど緑数字は小さい

 ・スコア力が一定のとき、クリア力が高いほど緑数字は小さい

ことを意味していると考えられます。認識力が向上するに従って、プレイヤーは緑数字を減らし、画面上に表示されるノーツ数を減らすことで、スコア狙い・クリア狙いともに有利に働かせようとしていると予想できます。

 もちろん、緑数字を減らすことは、画面のノーツを減らすだけでなく、(先述の)反応時間を小さくすることにも関係するはずです。その辺りについても後ほど詳しく見ていこうと思います。

 

白数字とクリア力・スコア力

次は、SUD+白数字(画面上部の白数字)、LIFT白数字(画面下部の白数字)、および上下合計の白数字を見てみます。

  偏相関係数だけをまとめると、

      上  下  合計

 アリーナ:0.07 -0.08 0.02

 段位  :-0.06 0.12 0.02

と、合計の白数字は一定(約350)のまま、

 ・スコア力が高いほどノーツの表示領域は画面下方に位置する

 ・クリア力が高いほどノーツの表示領域は画面上方に位置する

ことがわかります。

 ノーツの表示領域の上下位置に関して、実際にはプレイヤーの身長が寄与する部分が大きいと思うので、迷ったら合計白数字を固定した上で、プレイ中の感覚で微調整するのが良さそうです。

 

判定タイミング・目線位置

 白数字はノーツの表示領域を上下に調整するための設定ですが、次はノーツの表示領域を変えずに視認から打鍵までのタイミングを調節できる設定*5を見てみましょう。

クリア力が高いほど、判定タイミングは下方に設定されているようです。

 

目線位置については、

 ・スコア力が高いほど、ノーツ表示領域の下方を見ている

 ・クリア力が高いほど、ノーツ表示領域の上方を見ている

ようです。

 

さて、判定タイミングと目線位置、および緑数字を統合して議論するために、先述した反応時間についても確認してみましょう。

 相関係数を解釈すると、

 ・スコア力が高いほど、視認から判定までの時間が短い

 ・クリア力が高いほど、視認から判定までの時間が長い

ようです。

 相関関係を直ちに因果関係とすることは出来ませんが、このことからは反応時間(マージンと言い換えても良いでしょう)が大きいことはクリア狙いでは有利に働き、スコア狙いでは不利に働くと言えそうです。

 マージンが大きいと視認から手指を動かすまでの時間的猶予が生まれるはずですが、そのことは脳内で視認から打鍵までの時間差を予測する上でのブレが大きくなることとのトレードオフになるのかもしれません。

 もちろん、余りにもマージンが大きいとクリア狙いにも影響する(BADが出る)ほどブレが大きくなるので、クリア狙いのことだけ考えても最適な反応時間は存在すると考えられます。

 

ここで、緑数字の分析結果についてもう一度見直してみると、

 ・スコア力が高いほど緑数字は小さい

 ・クリア力が高いほど緑数字は小さい

と、反応時間と違ってスコア力・クリア力で同じ方向に相関していることがわかります。

 このとき、緑数字・反応時間と、偏相関係数を使って調整した(≒純粋な)スコア力・クリア力との関係は下図のようになります。

 反応時間は緑数字を使って計算しているので、反応時間と緑数字に相関があってもおかしくありませんが、実際に計算してみるとρ=0.10程度でした。

 念のために段位・アリーナランク・緑数字・反応時間の4変数で偏相関係数を計算してみると、以下の図のように調整前とほとんど変わらない値になりました。

 色々とややこしい計算をして来ましたが、要するに緑数字を減らすと

 ①画面上に表示されるノーツ数を減らす

 ②(判定タイミング・目線位置が一定なら)反応時間を短くする

という2種類の効果が発生し、今回のアンケートでわかった相関関係から推測すると

 ①はクリア力・スコア力ともに高める方向に働くが、

 ②はクリア力は低める方向、スコア力は高める方向に働く

と予想されるため、緑数字を減らすとき、クリア力の向上を重視するなら、反応時間が短くならないように判定タイミング・目線位置を調整する

のが良いかもしれない、ということになります。

 

アンケート結果から考える、プレイ画面設定の手引き

最後に、ここまでを振り返って、迷ったときの最適なプレイ画面設定の探し方を提案したいと思います。

  1. 現在の段位・アリーナランクからおおよその緑数字を決める。
  2. 白数字は上下合計で約350にする。
  3. 目線位置はとりあえず6/10(冒頭の図参照)として、身長などに合わせて(SUD+・LIFTを調整して)ノーツ表示領域の上下位置を決める。
  4. 上記の設定で適切な難易度の譜面*6を何曲かプレイし、判定タイミングを調整する。
  5. 上達によって認識力が向上し、緑数字を減らしたくなった際は、(SUD+・LIFTを調整して)ノーツ表示領域の上下位置は変わらないようにする。スコア力の向上を重視するなら、他の設定は変更しないで良い。クリア力の向上を重視するなら、判定タイミング・目線位置を調整して反応時間が短くなり過ぎないようにする。

 

もちろん、これはアンケート結果から考えた平均的な手順として提案されるものです。相関関係は直ちに因果関係を意味しないため、身も蓋もありませんが最終的には個人差に合わせた調整が必要になります。

 あくまで、迷ったときの一つの道しるべとしてご活用いただければと思います。

 

まとめ

・段位・アリーナランクが上がるほど、緑数字が小さくなる相関関係を認めた。上下合計の白数字には同様の相関関係は無かった。

・ノーツの視認から判定までの時間(反応時間)は、段位とは正の相関を、アリーナランクとは負の相関を認めた。

・このことから、プレイヤーが緑数字を減らすとき、クリア力を上げることが目的の場合は、判定タイミング・目線位置を調整することで反応時間が短くなり過ぎないようにするのが良いと推測できる。

 

 

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*1:緑数字は60fpsにおけるノーツの表示フレーム数を表し、緑数字10は判定タイミング1に相当します。よって、緑数字をG、判定タイミングをT、目線位置をLとして、反応時間は(G*L/10-T*10)*(5/3)で求めることができます(単位はミリ秒)

*2:IIDX28、記事執筆時点はIIDX29

*3:相関を見る上で現実のプレイヤー分布との乖離があること自体は問題ありませんが、最高ランクに分布が偏っている状況はいわゆる天井効果の影響を受けてしまいます

*4:以下Spearmanの順位相関係数のこと。なお、以下では読みやすさのために有意水準について敢えて触れていません

*5:目線位置は設定ではないですが

*6:簡単すぎず難しすぎず、クリアとスコアの両方を狙って行ける程度がちょうど良いと思います

【IIDX】一流の<心的イメージ>を手に入れよう ~NORI選手にインタビュー②~

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 

今回はこちら↓の記事の続きとなっております。

riceplace.hatenablog.jp

 

 以下、―で始まる段落は筆者の、それ以外はNORI選手(文章中ではのりみそさんとお呼びしています)・配信へのコメントとなっています。

 

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スランプとプレイスタイル

(続き)

EXIT選手コメント「DP一番やってた頃は、歴代記録が出ても、自分の限界と感じたスコアが出るまでは少なくともやり続けてました。限界値出た曲も限界は時が経つと変わるので、たまに様子見して、まだ伸ばせそうだったらまたやるという感じでやってたと思います。」

―これで結局重要になってくるのは、元の話に戻ると、また伸ばせそうだと思ったっていうところかなっていう風に思うんですよね。 スコアですごいレベルの高い人たちって、そのスコア見た時に、行けそうとか行けなさそうみたいなのが結構あるっていうか。

NORI選手:あー、はいはい。

―まだ自分ぐらいのスコア力(アリーナA3)だと、思ってもみなかった曲が150点伸びたりとかするんですよね。上手な人たちと比べて、日によってのブレが大きいなと思うんです。

 

―タイミングがいいので、スランプの話になってきますが。のりみそさんは、ここ最近スランプって感じないですか。

NORI選手:うん……ないですね。

NORI選手:最近ちょっとだけあったのは、叙情やたらやった日があったんですけど、あれはなんか筐体に立ってアップを始めた時に、「え、俺、いつもどこ見て、何を思ってノーツ光らせてたとか、全然わかんなくなっちゃった」みたいな瞬間があったんですよ。 めちゃめちゃ焦って、びっくりして。

NORI選手:もう今日は考えてた練習全部やめようって。で、U76NERさんが叙情伸ばしてて、「あんだぁ〜?」と思ったんで、 帰るべき場所というところで叙情をずっとやって、そしたら「こうやってたな」って思い出して。

U76NER選手コメント:「あんだぁ~?」

NORI選手:コメントが来ましたけど、思い出したぐらいですかね。だから、スランプっていうほどの最近ダメだなみたいな日はあんまり。 今日この後いくらやっても自己ベ出ないなみたいなのはあるんですけど、それはやっぱり明らかに前日の睡眠が悪かったとか、仕事疲れたとか、そもそも普段と違う靴履いてるとか、なんか明確な理由がある気はします。

 

―じゃあ、理由のないスランプは、あんまりないってことですよね。

NORI選手:と思ってますね。

―昔はありましたか。

NORI選手:あんまりない方の人間な気がするな。

―他のBPL出てる方とかから、そういう話って聞きますか。

NORI選手:あるんじゃないですか。プロが言うと怒られそうですけど、やっぱ珍ビって言ってる人結構いる気はしますけどね。それも、きっと何らか理由はあるんじゃないですかね、睡眠の問題とか。

 

NORI選手:それ(スランプ)って、押せてたものが押せない日って、筋肉的な問題か、認識が間に合ってないか、どっちなんだろうなっていう風に考えるんですよ。

―自分はフィジカルだなって思うんですよね。(特に)思ってるのは姿勢で、筐体からのフォームとか、靴とか。

NORI選手:それはもしかしたらあるというか、調子の良し悪しを減らすのに、多分自分が意識した、それはBPLで一発勝負でいいスコアを出すために考えたのかもしれないですけど。 

NORI選手:最近、ビートマニアしてる時の姿勢、ずっと同じにできてるはずなんですよね。

NORI選手:今までって、極端にやるとこう(下図左)やってた気がするんですよ。上体を前にして集中するみたいな。こういう姿勢になってたのを、左足を開いて、いつも同じニューバランスさんの靴履いて。ライトニングの足入れるポイントあるじゃないですか、あそこに左足の小指のあたりを絶対当てて。で、右足はこんぐらい引いて、後ろの膝を曲げるみたいな。

配信より

NORI選手:その姿勢になってから、ビートマニアやるっていう風に決めてるので、姿勢っていうのは(調子の良し悪しを減らす意味が)あるかもしれないですね、もしかしたら。

 

―BPL選手のフォームを(配信で)見たときに、U*TAKA選手とかは上半身を倒してるイメージがあるんです。実際ご覧になったことあると思うんですけど、 どうですか。

NORI選手:多分、上半身を倒すことが(全員にとって)悪ではないんでしょうね。

―ここが最初の話の、人によってってところになる。

NORI選手:そうなっちゃう。多分、いつ何時でも再現性のある姿勢を見つける必要があるんでしょうね。

―理由がなければ同じ姿勢でやるようにするっていうのは、プロは皆さん一緒ですかね。

NORI選手:あると思います。RIOOさんとかも姿勢、大体一緒な気はします。そんなにフリースタイルでやってる人、あんまりいないんじゃないかな。皆もしかしたら、 立ち位置ぐらいまでちゃんと決めてビートマニアしてるんじゃないかなっていう気はします。

―(プロ以外のプレイヤーでも)立ち位置を一定にしようって決めてる方は結構いらっしゃるんじゃないかと思って。そこの解像度の問題なのか、後はまだ言語化してないポイントがあるのか。要するに姿勢だけ真似してもいけないのかどうか、難しいポイントですよね。

NORI選手:姿勢は、きっと要素の1つではあると思うんですけれども、全部ではないでしょうね。

 

―昔から、緑数字・白数字・判定とかをガチャガチャ変えるのは良くないよっていう認識は、一定以上うまい人はみんな持ってるかなと思うんですが。

NORI選手:僕それどうなんだろうって。なんか、みんな結構変えてない?っていう気がしてます。プロって主語でやると怒られるような気はするんですけど。

NORI選手:僕は……ほとんど変えてないですね。たまに判定位置を0.05上げてみるか、下げてみるかっていうのを、3か月に1回ぐらい思うぐらい。

―これは自分の持論なんですけど、 下(判定ライン・判定文字)からの距離が一定のところに達したところで押すっていう考え方と、上のレーンカバーから出てきて(の距離でタイミングを測る)ってあって。どっちの認識でもビートマニアはできるので、 それ(認識スタイル)がどっちなのかによって、数字とか判定とかを変える変えないが変わるのかなって思ってるんですよね。

NORI選手:U76NERちゃんは緑は変えてるらしいですね。

NORI選手:いま昨日の自分の配信のプレーを見直して、いつも自分の中のイマジナリー判定ラインをどう作ってるのかを考えてるんですけど。特に叙情をやってるとき、判定位置(判定文字)から、どれだけ上下(にノーツがあるか)で見てる気はしますね。赤い判定ラインとか、サドプラの下端とかは、あんまり意識してない気はします。やっぱり叙情の1番早いところは、判定文字よりちょっと上見ようって思いますし、遅いところは判定文字より下を見ようとか思います。

 

―必ずしも上手な人はスランプにならないってわけでも無いですか。

NORI選手:名前は伏せますけど、やたら調子悪いし、判定位置とか色々変えたけど、 全然改善されないっていう(上手な)人もいるのは認識してます。

―そういう人と割と安定してる人で、どこが違いそうっていうのはありますか。

NORI選手:難しいですね。

―1つあるのは絶対的な能力(スコア力・クリア力)。1つあるのはプレイスタイルですよね。光らせる派か、地力で難しい曲(を武器にする派か)で、さっきの70% vs 90%と、90% vs 95%理論じゃないですけど。

NORI選手: 僕の感覚とか、聞いた話なんですけど、確かにうまい人、極端にうまい人たちって、調子のブレが少ない気はしますね。そう考えると、やっぱりあるのかな。それこそ、SEIRYUさんが調子悪いとか想像できないし、RIOOさんが調子悪いとかも想像できないなって。本人たちも調子いつでもいいですみたいなこと言ってる気がするんですよね。なんでですか、って聞いてみたいです、俺が。

―いつでも、全ての曲の自己ベ狙いが可能ということですよね。

NORI選手:まあ自己ベは出ないしろ、なんかこう97%ぐらいは絶対出るみたいな。調子が97%から100%ぐらいしかないみたいな。

―そういう人と、(調子が)105%から95%みたいな人の違いは興味ありますよね。絶対的なうまさもありそうだけど、必ずしもそうでもない。

 

―上手くなりきったら、あとはそんなにブレないっていう1つ仮説はあると思うんです。上手くなろうとする時って、いろんなこと試すと思うので。上手くなりきった人はブレないけど、代わりにもしかしたら、そこから劇的に上手くもならないのかもしれないですよね。

NORI選手:うん、そうかもしれないですね。

NORI選手:ああ、なんか……上手い人たちの中でも、僕みたいに極端に、もう1年間緑数字も白数字もリフトの位置もいじらない、みたいな人たちばっかではない気はしてます。それで、体感的にいじってる人たちの方が、調子のブレがある気はする、確かに。サンプル数がめちゃめちゃ少ないので、そんなことないのかもしれないですけど。

NORI選手:ああ、でも僕、去年SEIRYU塾でリフトも白数字も緑数字も判定位置も、全部変えた瞬間にめちゃめちゃ上手くなった

 

SEIRYU塾のすごさ

―その話すごく聞きたいです。どれぐらい具体的なのかっていうのはあるにしても、やっぱり心的イメージ変わったんじゃないかと思うんです。

NORI選手SEIRYUさんが「いやNORIさんはもっとできるよ」って言ったことに、多分全て起因してるんですよね。心的なキャップを全部取っ払ってくれたみたいな。

NORI選手:「いや、もうAAなんて3560までしか出ないっすよ」「俺に600は出ないっすね、はは」みたいな。そこまで卑下してなくても、多分どこかで思ってたんでしょうね。

NORI選手:SEIRYUさんとかはそれがなくて。AAではそうは言われてないですけど、「NORIさんなら多分3620は出るんで、とりあえず3600出してください」みたいなこと急に言うんですよ。自己べが3560の人間に対して。多分それは心的イメージなんですかね。なんか、この自分の中の限界像みたいなものを一気に取っ払ってくれた感じがして。

―完全にそれは限界的練習そのものですね。1つあるのはそこで、SEIRYU選手が他人の腕前の把握が、

NORI選手:そうなんです。上手いんですよ、どうやってんだろうなと思います。僕は同じことできないです。

 

―BPLを見ていて、これは観客の立場として言うんですけど、自選を取られる試合も多いなと思っていて。(パフォーマンスの)ブレもあると思うんですけど、これぐらい上手い人でも、自分と相手の力量を把握するのって、そのことだけでも1つ取り柄になるんじゃないかっていうぐらい難しいんだなって印象は(受けました)。

NORI選手:いやあ、難しいですね。

―「あの人はこれぐらい出しそう」みたいなのとかって、 上手い人は上手いからわかるんだっていうような考え方もあると思うんですけど、けっこう心的イメージに近い部分だと思うんですよね。

NORI選手:なるほどね。僕、それ下手なんですよね。だから、チーム内(の他の人)にしょっちゅう聞いてます。 「あの人が戦うことになるんだけど、本番でどんぐらい出してきますかね」みたいな相談するんすよ。で、振り返ってみると、おお本当だ、みたいなのは結構ある。

NORI選手:自己ベはあの人とんでもないけど、そもそもこの曲って自己ベ出すの無理だよね、みたいな。曲単位の解像度もそうですし。そのプレイヤー自体のことをよく知ってて、見定める能力は高いなって思います。僕はそれを特にRIOOさんに感じるんで、1巡目すごい説みたいな話になるんですかね。

 

―それ(他人の本番スコアを予想すること)がスコア力とは別の話だと思いきや、スコア力の水準と関係するのかもしれないっていうのは、ちょっと面白いですよね。

NORI選手:そうですね、不思議ですね。なんなんですかね。

―元の話に戻るんですけれども、小さな目標・正確な目標を立てていくところで、(他人との比較をせずに)自分のことだけっていう時にも、やっぱり自分がどれぐらいできるとかってのがないと。

―例えばもっとできるとか言って、「AA1桁落ち出ますよ」とか言われても困っちゃう。そんな人間はいないみたいな。単に高い目標を与えたから良かったんだっていう美談じゃないと思うんですよね。

NORI選手:そうそう、そうなんですよ。丁度よくSEIRYUさんは、その気にさせるぐらいのを出してきたっていう感じはしますね。

NORI選手:恐らくなんですけど、SEIRYUさんと去年ずっと色々やってた中で、「NORIさんこの曲こんだけできるってことは、AAサボってんだけだな」みたいなのが弾き出せるんでしょうね。

―そうなってくると、人の解像度っていうよりは譜面の解像度によるんですか。

NORI選手:人の解像度も、多分ある曲でこれぐらい出すような人がこの曲このスコアしか出ないわけはないみたいな。

NORI選手:U76NERさんとかと話してても、U76NERさんが「俺この曲苦手だわ」とか言うことがよくあるんですけど、「真面目にやったらもっと出るでしょ」って言っちゃうことはよくありますよね。って言って、1週間後ぐらいにきっちりライバル挑戦状が飛んでくるみたいな。当たってて嬉しいけど、嬉しくないみたいな(笑)。

 

―自分のことだけ考える時でも、なんとなく曲を選ぶんじゃなくて、これやるときにはこの譜面みたいな。 一次元の難易度では考えてる人は多いと思うんですが、それがもっと(高解像度に)寄ってくると、よく言う全曲練習曲じゃないですけど、それに近づくのかなっていう感じはありますかね。

NORI選手:ありますね。みんな絶対どこかで、☆12ってスコアが出ないとか、難しいからAAAが出ないとか、絶対思いがちだと思うんですけど。絶対あると思うんですよね、そういうのが。

心理的キャップですよね。

NORI選手心理的キャップ絶対あると思ってて。例えば☆12でも、それこそさっき話にもあったTodestriebの前半とか、☆8だぜあれみたいな。それを、「Todestriebは☆12だから前半黄ばんでもいい」とか絶対思っちゃダメで。☆12いろんな曲やってても、「ここはなんか☆10より簡単だな」とか(思うほうが良い)。

NORI選手:だから、せめてここは黄ばんじゃいけないなとか、マイクロな目標はちゃんと立てた方がきっと良いんじゃないのかなっていう気はしますね。 

NORI選手:負けるんですよ、☆12は難しいって思った時点で。そうすると、☆12の譜面どこ見ても☆12に見えてきちゃうんですけど、そんなことないですよって。

―「負けない」みたいなのは精神論的に聞こえますけど、そういう要素を取り払って言うと、目の前の譜面を要素要素に分解していって、その要素に対してベストを尽くすっていうことをするのが重要で、上手い人たちはそれもわかってるから、「この曲でこれぐらい出る人は、この曲だったらこれぐらい出るだろう」っていうのが、比較的正確に予測がつくっていうことですよね。

NORI選手:きっと、そうなんだと思います。

 

練習曲の選び方

NORI選手:りせさん、例えば普通の16分乱打系で、最近AAA出た曲っていうと、どんな曲ありますか。

―FUZIN RIZINです。これは、アリーナで投げられてやったら1位を取ったっていう、THEアリーナ効果みたいな。

NORI選手:FUZIN RIZINとかだと、地力が十分にあれば、PLASMA SOUL NIGHTとか全然(AAA)出るんじゃないなとか思っちゃいますよね。同じでしょっていう感じするんで。

―1つあるとすると、やっぱり疲れちゃいますね。やっぱり疲れないようにしないといけないなっていうのは最近思っていて。どうするかっていうのを最近考えてはいるんですけど、そこの答えは出ないです。

NORI選手:僕もそんなこと言ったら、Verflucht [L]後半、いつも疲れてます。どうやったら後半疲れずに押せるんだろうっていつも思います。

 

NORI選手:僕、3時間ぐらいが大体限界なんですよ。3時間超えてやるビートマニアはもう大体ろくなものにならないことが多いですよね。その3時間の間は大体いつでも自己ベが出得る気はしますね。

―僕は1時間20分ぐらいです。昔から短いんですよね。でも逆に、最初から3時間やるぐらいでやった方がいいのかもっていうような考え方はあるんですよね。

NORI選手:できないっていうのは、何が起きるんですか。僕の場合は分かりやすくて、涙が止まらなくなるし、足が痛いし、腕が痛いんですよ。

―そういうこともありますけど、でも難しいのをやらなければ、3時間できるかもしれないですね。

NORI選手:ああ、☆12を3時間やってると、それは疲れる。僕もLEGGENDARIA☆12しか選べないビートマニアやらされたら、多分2時間ぐらいで疲れる気がしますね。

―言われてみれば、自分はその辺の重い譜面選んでる(ことが多い)。そこで言うと、コンフォートゾーン的なところで、難しいのやるのが正義みたいな考え方もあるじゃないですか。

NORI選手:最近すごい思うんですけど、Verflucht [L]も皿地帯の後の1番難しいところだけで2分間構成されてるわけではないじゃないですか。前半の密度軽いところとか、それこそPLASMA SOUL NIGHTとかぐらいなんじゃないのって気はするんですよ。

NORI選手:そういった時に、例えばVerflucht [L]上手くなりたい人は、PLASMA SOUL NIGHTやっても意味ないのかっていうと、俺全然そんなことないと思ってて。脱力・認識力をPLASMA SOUL NIGHTを長くやることでつけると、Verflucht [L]の本当に難しいところまでたどり着いた時の体力の残り方って、多分増えてくと思うんですよ。PLASMA SOUL NIGHT毎日やってればVerflucht [L]上手くなる」とかは多分嘘で、Verflucht [L]の1番難しいところは、Verflucht [L]の1番難しいところでしか降ってこないので、そこは避けては通れないですけど。

NORI選手:超難しい曲を30分やるのを10分にして、難しい曲を1時間やったりした方が、良いこともあるんじゃないかな、なんて。

―(そう思うことは)あるんですよね。でも、「これ(最難関譜面を選ばない)って良くないんじゃないか」っていう感覚が先立って、超難しいやつをやりに行っちゃうんですよね。Verflucht [L]を4連奏とかやっちゃうんです。

NORI選手:わかります。

―確かに言われてみると、例えばVerflucht [L]のEXHを狙おうって思った時に、EXHゲージで言うと、最難箇所に毎回100%で入れるとしても、実は残ってる体力っていうゲージで出てこない観点で言うと、違うことはあり得ると思うんですよね。鼻歌歌いながら100%で入るのと、なんとか100%で入るのは違うと思う。だから、思ったよりも難しくない曲をやる価値はあるかもしれないですよね。

NORI選手:全然違うと思います。「それ100%フルコンできるの」みたいな話で。

 

―自分がここ最近考えるのは、簡単な曲のように難しい曲をやれたらいいなっていうのがあって。

NORI選手:ああ、それはそうですよ。

―昔は簡単な曲と難しい曲って(押し方を)変えてたんですけど、ある時ぐらいから中難易度曲のスコア狙いがクリアに良いなって気が付いた時があって、その時ぐらいから、Sleepless DaysとVerflucht [L]の間にBrokenがいるな、みたいなのを意識するようになった。自分はBrokenはSleepless Daysにはならないんですが。

NORI選手:僕もBrokenはSleepless Daysにはならないんですけど(笑)。でも最近、☆10から普通の12ぐらいまでは、全部ちょっと降ってくる量が違うぐらいで、もう難易度とかないよ、全部同じ譜面だよって思うようには意識してる気はしますね。

―そのときに、いま上手くなってる最中の人が心配・不安になるのが、そのままだと難しい譜面ができるようにならないんじゃないかってところだと思うんですよね。実際、難しい譜面をやらないといけないと思うんですが、のりみそさんの今のお話で言うと、難しい譜面をやる瞬間っていうのは言うほど長くないかもしれない、っていうのはありそうです。30分しかできない人が40分やるよりは、10分やや難しい・やや簡単なやつをやった方が良さそうっていうのが今のお話になるんですかね。

NORI選手:僕の意図としては、30分間激ムズの曲をやる日があってもいいし、 そうじゃない日もあってもいいし、そうじゃない日がクリア狙いに対して無益ってことはないので、 難しい曲だけを絶対30分やり続けなきゃいけないんだっていう風には思わないといい、になるのかなっていう気はします。

NORI選手:僕も適当ですからね、本当に。☆9でSleepless Daysやってたかと思えば、難しい☆12急にやりたいなとか思って急にやったりもしますし。

―どういう時でもニュートラルにっていう点で言うと、実は(選曲難易度を)グチャグチャにやった方がっていうのはありますよね。そういう意味でも、結構アリーナって(良い点が多い)。

NORI選手:いいです、いいです、うん。「急に?」みたいなのやらされるんですよ。

 

ニュートラルな状態を意識する

NORI選手:これは心的イメージなのかもしれないですけど、126(鍵の同時押し)しか降ってこない3ノーツの譜面があるとするじゃないですか。それって多分みんなできるじゃないですか。その前に何にもないし、後ろに何にもないから、126をニュートラルな状態から押して、またニュートラルな状態に戻る、みたいな話で。地力が上がるって、そのニュートラルな状態から何らかのボタンを押して、 またニュートラルな状態に戻るまでの時間が短いことだと、最近なんとなく思ってるんですよ。

NORI選手:縦連とかまさにいい例で、bpm150で5連打って、結構むずいじゃないですか。でも、1個しか降ってこなかったら、簡単じゃないですか。それって、あるボタンを押して、次の動作に入るまでに自分がニュートラルな状態に戻れてないから、すごく難しいと思うんですよ。

―なるほど、なるほど。

NORI選手:そのニュートラルな状態に素早く戻る練習って、 結構スコア狙いの練習で身についてきた感覚があって。ていうのも光らせるためには、 まさに横認識なんですけど、あるノーツを押して、またニュートラルな状態で次のノーツを押してっていうのができるようになってくると、その前のノーツを押した後の体の状態に依存せず、常に一定の気持ちでノーツを捌けるようになってくる気がしていて。

NORI選手:そのニュートラルに戻る時間が短くなればなるほど、スコアも上がってくし、難しい譜面をやる時の疲れ度合いとかも変わると思うんですよ。AからBの状態遷移を考えるのってすごく難しいと思うんですけど、それが常にAが絶対ニュートラルな状態で、 次このノーツ、次このノーツってやれるのって、多分すごく考えることが少ないはずで、楽なはずなんですよね。その観点で、僕は結構「クリア行き詰まった人は、スコア狙いした方がいいですよ」ってよく言うんですよね。それは☆12の難易度表で言うS+ができない人は、Sのスコア狙いじゃなくても、全然11とかでもいいと思ってて。指をニュートラルな状態に戻す練習とか、すごく意識するようにしてます。ニュートラルな位置とかいうか、心理的にもそうですよね。

 

―ここまでお話聞いてきて、実は、なんですけど。これ(ニュートラルな指の状態に戻すこと)は1個1個ではやってないことが科学的にわかっていて。ピアノの話ですけど、例えばドレミファソって弾く時、ピアノだと親指→人差し指→中指→薬指→小指としますが、ドレミファソとソファミレドだと、その1個1個の指の動きが違うっていうことがわかってるんですよ。ド→レとミ→レで、(人差し指の)動き方は違うので。ピアニストは楽譜を見た瞬間に、どういうふうに次の指を動かすか、その準備を始めるっていうのはわかっていて。

―人間は1個1個をバラバラに動かす頭にはなってなくて。 例えば物を掴もうとした時は、物を掴むって動作をするのであって。手を伸ばして指を開いて、その指を入れて閉じて、ってしようと頭は思ってなくて。

NORI選手:思ってない!

―頭は掴もうとしてるだけっていうポイントがあるんですよね。だから横認識が難しいっていうのを昔ブログに書いたんですが、要するにゲシュタルトに分解しないといけないんですよね。

―ていうことで、自然には(指の位置は)ニュートラルになってないんですよね。で、ニュートラルにすることが最適とも限らない。そのピアニストの話でもそうですけど、多分こういうニュートラルにした方が良いっていうのがあると思うんです。つまり、完全にゼロじゃなくて。あんみつは良くないけど、 全てのディレイをバラバラに分解するわけじゃないし。

NORI選手:それ最近友達に聞かれて、ディレイの認識どうやってんのって言われたんですけど。僕は左右方向に押せる単位を1として認識してるっていう話をして。例えば1234567は単位が1です。1237654は2回見て、1235467は3つに分けて見てます。

NORI選手:始点は必ずそれで合わせて、あとはジャラっと行くことを願う。だから、1234567が光らないのはそうなんですよね。 1で視点を合わせて、あとは祈るみたいな感じだからだろうなと思います。

―横認識ではなくて、実は横方向のブロック認識をしてるっていう。ここは恐らくある程度以上(ビートマニアを)やられてる方は、みんな同じ心的イメージなんじゃないかな、と思います。 

―ただ、指(の動き)でそこまで考えてる方って多くないと思うんですよね。自分は最近、近いことを考え出すようになって、そこまではっきりと「ニュートラルに戻す」とかまでは思ってなかったですが、疲れてくると姿勢が悪くなってくるとかっていうのに、ちょっと近いんですよね。

NORI選手:私、指をニュートラルに戻すとか言ってますけど、 指戻ってないんだろうな。だから指っていうより、意識なんでしょうね、多分。指は全然ニュートラルじゃないんでしょうね。

ニュートラルに戻すっていう心的イメージは、そうかなっていう風に思うんですが、実際のところで言うと ニュートラルになる幅がどれぐらいか、やや難しいところがありますよね。でも、きっとそこが1番大事ですよね。一番楽にパフォーマンスが出る状態を保つ。

NORI選手:大事だと思う。

 

ざくろさん(Tradzアドバイザー)コメント「打鍵から指が戻る時間が、 直前の打鍵内容によって異なることを意識するようにしています。」

―逆に異なることを意識するんですね。

NORI選手:でも絶対そうですよね、どんだけ元に戻そうって言ったって、5個同時押しした後からニュートラルに戻るのと、どっかの鍵盤を1個押したのとは、絶対に違うっていうのは、その通りかなと思うので。今はニュートラルじゃないぞっていうことを分かった上で、じゃあ次どう押すのかみたいなのを考えてらっしゃったりするのかもしれないですね。

―そういう意味で言うと、ニュートラルがそもそも無いといけないので、すごく簡単な譜面だと、いつもこうっていう風にはなった方がいいですよね。

 

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全2回20000文字超におよぶインタビュー記事、最後までお読みいただきありがとうございました。

 今まさにBPLプロとして活躍している選手の、貴重な視点がいくつも垣間見えたと思います。

 

個人的には、NORI選手ほどに弐寺の腕前と自己への洞察を兼ね備えた人は他にいないのでは無いか、と思わせられるインタビューとなりました。

 改めて、突然のお願いにも関わらず快くご協力くださったNORI選手、本当にありがとうございました!

 

 

引き続き、これまでのビートマニア歴で考えたこと・取り組んだことに関するインタビューに答えてくださるトッププレーヤーを探しています。このような区切り方を私がするのは大変おこがましいですが、クリア力・スコア力のどちらかで概ね世界100位前後までに該当する方であればより望ましいです*1

 インタビューにご協力くださる方や、本記事についてのご意見・ご感想のある方は、記事へのコメントあるいは冒頭のTwitterまでご一報をお願いします。


それでは、良き音ゲーライフを。

 

*1:この記事を書いている私は☆12の総合BPI・総合CPIでともに推定500位台程度です

【IIDX】一流の<心的イメージ>を手に入れよう ~NORI選手にインタビュー①~

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 

以前こちらの記事

riceplace.hatenablog.jpで、これまでのビートマニア歴で考えたこと・取り組んだことに関するインタビューに答えてくださるトッププレーヤーを募集したところ、なんとBPLプロのNORI選手からご協力を得られました。

https://p.eagate.573.jp/game/bpl/season2/2dx/team/taitostation_tradz/04/index.html

今回は、そんなNORI選手へのインタビュー*1の様子を記事にまとめたいと思います。

 以下、―で始まる段落は筆者の、それ以外はNORI選手(文章中ではのりみそさんとお呼びしています)・配信へのコメントとなっています。

 

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限界的練習と心的イメージ

―限界的練習っていうのがありまして。英語で言うとdeliberate practice、直訳すると意図的な練習だと思うんですが、そこで出てきてるのが指導者が不可欠だっていう話なんです。

NORI選手:うん、うん、はいはい。

―で、そういう教える人がいなかった所で、一流・超一流を目指すときにできることとして、一流プレイヤーの心的イメージを手に入れようっていうのが大事になってくる。そういう最高のプレーヤーが成果を上げられた理由を調べて、 同じ能力・同じ心的イメージを身につけるために、自分がどうすればいいのかを考えましょう。ってのが、この本で言ってるところになります。

NORI選手:う~ん、なるほど。

 

―ここで問題になってくるのは、その一流のプレイヤーと同じことをしろって言ってるわけではないんですよね。例えば、身長が180cmある人と160cmの人だと、プレイスタイルって変わってくる。そういう大きな違いを自分にそのまま持って来るのはできなくて。それぞれ上げてる成果が何になるのか、それぞれどういう風にやってきたのかっていうことを知る。

NORI選手:はいはいはい。

―なので、今回のりみそさんが、のりみそさんの背景でやられていく中で、のりみそさん自身がどういうふうに考えてやってこられたのかっていうのと、それによってどういう風に変わったのかっていうのを聞くことによって、じゃあ自分はどうだろうっていう風に考えるっていうのが今回のポイントです。

NORI選手:なるほど、ありがとうございます。

 

NORI選手:上達論が最近定期的にバズる時があって、TLで誰かが大体言うのが、誰かの上達論がそのままあなたに当てはまることはなくて、色んな上達論の中で、これは自分に合ってるかなみたいなものを摘んでみたり、 合ってるかどうかもわかんないけど、ちょっと試してみようかな、みたいなのをやってみたりして。自分なりの答えじゃないですけど、やり方を見つけるしかないよね、みたいなもので。恐らくこの心的イメージってものも、のりみそはどうやらそう考えてるらしいが、じゃあのりみそが考えてる通りにやればのりみそぐらいになるのかって言われたら、別にそんなことはないけど、そういう風に考えてんだなみたいなものを考えるきっかけになってくれればいいかな、みたいな感じですかね。

 

―より細かく言うと、例えば横認識っていう技術があると思うんですが、なんで横認識が大事なのかって、昔ブログ書いたりしたんですけども、結論から言うと、たぶん最先端の脳科学者もあんまり答えられないんじゃないか。

NORI選手:なるほど、なんでなんすかね。

―とはいえ、みんな横認識できていて、特にプロになるような方とかだと、ある程度難しいごちゃっとした譜面を、横方向に分離していると思うんですよね。

―それをどう考えてやっているのかっていう時に、「横認識っていうのはこういう点で重要なんだ」っていう風にプロの方がおっしゃることには、興味が実はなくて、 それって後付けの理由かもしれないっていうことなんですよね。イメージってのはそうではなくて、横認識そのものっていう感じです。

NORI選手:横認識そのもの。

 

―画面に降ってくるものを見たときに、「どういう風に見てますか?」「横方向にこう分けてるな」っていうのが心的イメージなんで、そう意識してやってるっていうことですね。

NORI選手:なんでそうしてるかは、私も多分後付けです。

―それはその人にとってそう(いう意味)なだけだってこともあると思うんです。

NORI選手:はいはいはいはい、そうですね。

 

―大事なのは、その人がそういう風(な意識)になるにはどうなったかなので。考えてることっていうのは、意識してることとか、そういう感じになるんですかね。自分もこう一言で言うとこれだっていうのはなかなか言えないのと、この本も心的イメージってのはこういうものだっていうのですごいページ数を使ってるので、やっぱり一言で言うのはなかなか難しい概念だと思うんですが。今日インタビューさせていただきつつ、そのあたりについても詰めていければな、というのもありますね。

NORI選手:整理はお任せします。

 

―今回はその中で大きく分けて3ポイントあると思いまして。

―のりみそさんが初めてビートマニアに触れてからNORI選手になるまでに、それぞれ多分うまくなるポイントがあったと思うんですよ。例えば、初めて八段を取った時、十段、皆伝、☆12でAAAが出た時みたいな。そういうそれぞれのタイミングで、こういうことをやったらこういう風になったっていうようなこととか、このタイミングはこういうことを意識したなとか、そういうことをお話しいただきたいと思っています。

―2つ目が、今まさにプロとしてこう活躍なされてるこの瞬間に、普段の練習で自己ベストを出そうっていう時に意識してること。ちょっと今回は試合本番のメンタルについては割愛させていただいて。

―3番目が、上手くいかないな、上手くならないなっていうときに何を考えて、どういうことに意識したら上手くいった。逆にどういうことを意識するとスランプが長引いた、っていうのもお聞かせ願えたらと思います。

NORI選手:いいですね。わかりました、楽しそうですね。

 

NORI選手:あんまり私、振り返ってこなかった気がしてるんすよ。自分は割と場当たり的に、今日何しようとか、直近1週間なんかこうだったから、なんかこうするかみたいなぐらいでしかなってなくて。今までどうやって練習してきましたかとか、それこそビートマニア始めてきた頃からどうやってましたかって。自分がいま普通に楽しみです。

 

皆伝の壁、☆12ハード埋め

―一番最初にご自身の中で、なりふり構わず上手くなったっていうところを超えて、「あ、壁あるな」「これどうしよう」って、最初に考えたタイミングっていつだったでしょうか。

NORI選手:壁かー……。でも、やっぱ皆伝だったかなっていう気はしますね。 

 

NORI選手:ていうのも、始めたのは6thとかなので。 まず段位みたいな概念が全然ない時期*2でもありまして。それこそ大学に入るまでって、 本当に1人だったんですよ。CSの6th〜10thとかをひたすらやってた身だったので、あんまり段位のことも、それを取るとどうとかいうのも全然なく、目の前の好きな曲をただひたすらやってるみたいな。その頃SNSとかもほとんどやってなくて、意識せずにずっと遊んでて。初めて皆伝とかいう人たちに出会ったのが、多分高3の時とか、受験のシーズンとかで、それこそ、U76NERさんとか。

 

―作品でいうとどの辺りですかね。

NORI選手:僕の年齢と作品は比例してるので、SIRIUS、リゾアン(Resort Anthem)。

―その頃の皆伝はすごかったですもんね。

NORI選手:すごかったです。あの頃の皆伝は威厳があった。で、段位に執着した経験もこれまでなかったので、その時期に、なんか周りに皆伝が多いと。で、大学入って皆伝のやつがいると。でも、なんか俺は10段しか受かんねえなみたいになって。やたら皆伝を受けまくって、嘆きの樹に今でも壊滅的な癖がつき。

 

―皆伝の正規は行っちゃ(むやみに粘着したら)ダメって言われるようになったのって、わりと皆伝出てから随分後の話ですよね。

NORI選手:そうですね、皆伝は多分DistorteDとかですよね。なんで「皆伝が受かんない受かんない」ってすごい苦労したなっていう気がします。それ以前も壁はおそらくあったと思うんですけど、それに執着する意味を感じなくて、「他にできる楽しいことやってよ」ってすぐ逃げてた気はします。

―そこはやっぱり段位というか、皆伝の功罪というか。このゲームシステムで、皆伝を受かりたくない人はいないですよね。

NORI選手:ないんですよね。

―それがこう良くも悪くも、すごく視野が狭くなっちゃうところがありますよね。 

 

―肝心なところですが、のりみそさんがそこを越えるために、意識したこと、やったことってのは何だったんでしょうか。

NORI選手:やっぱ途中で気づいたんでしょうね。皆伝だけを受け続けても、多分皆伝には受からないと気づいて。じゃあどうするかってなった時に、ちょうど7強*3というか、☆12の難易度表が当時の2ちゃんねるとかで生まれ始めた頃*4に、じゃあまずそこからやるかみたいな。「☆12にはハードを付けていくと良いぞい」みたいな。 「あ、ハードゲージって使う意味があるんだ」みたいな、感じに多分気づいたんでしょうね。

NORI選手:じゃあ☆12のハード埋めしてみるかとなって。それって、やっぱり皆伝の壁と比べて小さかったので。例えばquell~the seventh slave~、Bad Maniacs、MENDES辺りにどうにかハードつけたいなとか言って頑張って。皆伝より低い壁にぶち当たって乗り越えていく、みたいなことをしてたんじゃないのかなと思いますね。

 

―じゃあ最初のところで言うと、同じことをやり続けていてもダメそうと考えて、☆12っていう難易度の中で、それを順番にやっていくことで、指標にしようっていう。要するに今では常識になってるような考え方が、当時はなかったってことですよね。

NORI選手:言われてみればそうですよね。体感的に蠍火がめっちゃ難しいとか、冥がやばいとかはあったんですけど。特別難しい、できないけどできそう、 ちょっと難しい、簡単の4段階ぐらいしか、自分の体の中にはなかった気がしますね。

―今そんなこと言ったらびっくりされちゃいますよね。

NORI選手:びっくりされますよね、CPIもBPIも☆12難度表もない世界みたいな。うん、今となってはなかなか信じらんないような時代だなと思いますよね。

 

上京、ライバルたちとの出会い

NORI選手:明確に皆伝っていう壁を乗り越えられた原動力としては、☆12のハード埋めだったんですけど。田舎の少年がですね、大学に来て、東京の大学で「え、ビートマニアって俺以外に遊んでる人いるんだ」みたいな感じになるわけですよ。高校に1人いたんですけど、 彼は十段前半か九段ぐらいだったのかな。まあ、お山の大将じゃないですけど、 1番うまい存在だったと思ったら、「同級生に皆伝いるじゃん」みたいになって。

NORI選手:その時はmixiで、「え、東大生ってこんなに皆伝いるの」みたいな感じになって、世界を知って、その人たちに追いつきたいみたいな。他人との比較が多分大学生になってから初めてやった概念で。誰が最初に全白になるのか、みたいなレースをしてたこともあったので、そこで否応無しに、「やばい、あいつが嘆き埋めたぞ」とか「バドマニに埋めたぞ」とか。俺も黙ってらんねえ、みたいな時期だったかなと思います。

 

―やっぱりそこで、クリア力みたいなものを比較する状況にもなったし、環境にもなったって感じですよね。

NORI選手:だと思います。周りの人がどうやってるかとか、どうやってやってけば良いかみたいなのが手に入るようになったし、それを欲しいと思うことは、かなり上手くなっていくにあたっては必要な要素だったかなっていう。

 

―じゃあ、その最初の壁を越えて、☆12をハード埋めしてみようっていうところから先は、またやればやるだけうまい期になったっていう感じですかね。

NORI選手:そうですね。だから皆伝から後で明確な壁って言われると、やっぱり穴冥ハード、穴冥AAAみたいな感じになりますね。もう冥に人生をなんか狂わされてる感じは結構しますね(笑)。 
NORI選手:最近だと、やっぱ3700*5とかも出ないな出ないなとか思ってましたし。これは多分古い人間なんでしょうけど、穴冥が全てのチェックポイントになってる感じはします。でも、皆伝ほどの壁ではなかったかなって感じはしますね。

 

―ちなみに穴冥ハード、穴冥AAAはどういう風に突破しましたか。

NORI選手穴冥はわりと充分な地力をつけて、殴った感じがします。とりあえず1000回とかやりたくなかったので。多分その頃にはEXHランプもあったので、 できるEXHランプをどんどん点けて行って、たまにランダムでやって、BPが20みたいなときに後100回もやればできるかな、やりたくねえなぐらいまで回り道してやった感じがします。

NORI選手:それもおそらく皆伝で学んだんじゃないですかね。できないことをやり続けてもしょうがないので、それ以外で上達を頑張って、大目標をたまに狙うみたいな。私のやり方は、多分そうなんだろうなと思います。

 

―ちなみに、穴冥ハードまで地力上げていくにあたっては、そんなに壁はなかったですか。

NORI選手:いや、でも苦労はしてたんですけど。 たまにやってダメなら、またちょっと他のEXHとか、その頃多分スコア狙いとかもやり始めてたと思うんですけど。そうですね、そんなに苦労はしてなかった気はしますね。なんかもう、他人との比較がとにかく楽しい時期だったと思うので。何も考えずとも、大学終わったらゲーセン行って、ビートマニアいっぱいやるみたいな時期だったので、気づいたら上手くなってた気はします。

NORI選手:時間はかかったし、穴冥ハードできないなってずっと思ってたけど、 その間にめちゃめちゃ長いプラトーがあったみたいな感じはしないですね。多分、着実に上手くなっていて、例えば半年前とかでも、3時間粘着したら穴冥ハードできてたのかもしれないですけど、僕は多分それをやらなかったんだと思います。

―じゃあ、ビートマニアをやっていて、目の前のあれこれそのものが楽しいっていう。

NORI選手:そうですね。かなと思います。

 

―これ以降は壁ってありましたか。

NORI選手:そうですね、あんまりないのかなあ、そういう意味では。

NORI選手:もちろん、いま例えば、僕はU*TAKAさんに叙情がワンチャンあるぐらいで、その勝てないことを壁と形容するなら、それは壁なんですけど。

―結構それこそ、まさに心的イメージかなっていうところはあって、 要するに無限に高いところに(目標を)設定すると、すべて壁になると思うんですよね。

NORI選手:ですよね。そうなんですよ。

 

―だからそこは、記事でもちょっと書いたんですけど、あまりに難しい課題とか高すぎる目標とか設定すると、それってむしろコンフォート。そこでアイデンティティが出来上がっちゃうっていうところもあるんですかね。

NORI選手:そうっすね、難しいですね。 なんで、言われてみると壁はあんまり感じたことがなかったかなと思います。

NORI選手:多分、壁って(言い)替えると長期的な目標とかになると思うんですよ、しかも達成が結構難しい。なんか、それを常に持ちながらビートマニアをするのは、辛いんじゃないかなっていう気が。

 

BPLプロとして

NORI選手:最近で言うと、僕は今BPLでプロやらせていただいていて、その巡目も4巡目で、 同じチームにはRIOOさんとPPJTさんとたっちゃん(TATSU選手)がいてってことを考えると、どう考えても僕が大将戦に出ることって、まあ多分なくて。そうすると、僕が出るべき場所って先峰か中堅かで、そうするとやる曲って☆11以下。

NORI選手:☆11以下で何しなきゃいけないかっていうと、自分を除く31人のバケモンみたいな人たちみたいに、いわゆる天井スコアみたいなものを出さなきゃいけない。っていうことを考えると、自分が毎日ゲームセンター行って意識することは、もう任意の曲で1桁落ちを出すとかいうことが目標になるので、なんかもう1ノーツも黄ばませない気持ちで、ビートマニアをただやるみたいな感じですね。無理なんですけど。なんで、黄グレが出た時は、なんでいま黄グレ出たんだろうなって、やっぱ考えますよね。認識が遅れたのか、 指がこんがらがってたのか、みたいな感じ。


―誰か上手な方が言ってたんですよね、理由がわからない黄ばみをなくすみたいな。

NORI選手:ああ、誰か言ってた気がする。

—例えば、Liberationのトリルが67に来ちゃったみたいなのはいいとして、交互で一応取れるところに来たし、予測もできてたのに、黄ばんだならどうするかとか。そういうことかなって自分は理解してるんですけど。

youtu.be

NORI選手:おっしゃる通りだと思います。

—67に来ても34に来ても17に来ても何も考えずに、「やっぱりLiberationのトリルは難しいな」っていう風に思うのかは、やっぱり変わってくるのかなっていうところありますよね。

NORI選手:そうですね。本当に全ての黄グレに、理由付けをするようにはしてるかもしれないです。

 

—疲れちゃいそうですけど……。

NORI選手:上手くなってきたことで、例えば1000ノーツ叩いて反省すべき箇所が10か所とかになると、まあそんなに疲れないですよ。

—なるほど、なるほど。そういう点でも、やっぱりあまりにも考えることが多すぎるっていうのは、効率が悪いのかもしれないですよね。

NORI選手:そうですね。なんで、僕も最初はある1小節でみたいな単位でやってましたよ。Todestriebの16分が降ってくるまでに黄ばんだら、筐体の床が開いて落ちてしまうみたいな、そういう感じでよくやってましたよ。気づいたら、それがちょっと伸びてきたのかな、みたいな感じはしますね。

www.youtube.com(16分が降ってくるのは動画0:40頃)


NORI選手:あとは、やっぱりBPLって形式なので課題曲があるわけで、わりと個別の曲に対しての研究とかは多いですよね。

—研究するにあたって考えてることっていうのは、何かありますか。例えば、譜面サイトで譜面見るとか、ハンクラを聞くとか。いわゆる座学って、いろんなやり方があると思うんですが。

NORI選手:これは結構人によります。PPJTさんとか、すごく予測がうまいんですよ。DOLCE.さん、U*TAKAくんも、なんかそういうの詳しい気がするし。

 

—1巡目の人がみんなやってるってほどでもないんですか。

NORI選手:例えば、MIKAMOさんが「これがここ来たからこれだね」っておっしゃってるイメージって、僕はあんまりない気がするんですけど、わかんないです。「いや、やってるよ」って言われたら、あの、ごめんなさいって感じです(笑)。

—穴冥のメインサブは皆さん気にしてると思いますけど、そのレベル感で全部の課題曲を把握してる人ばっかりじゃないっていうことですかね。

NORI選手:と思いますけどね、そんな気はしますね。


—のりみそさんの場合はどうなんでしょう。

NORI選手:僕はすごいそういうのできない人です。僕、ruin of opalsって曲めちゃめちゃ好きですけど、どのノーツがバスになるとか、何にも知らないですもん。最初割れると押しやすいんだよねってのは知ってるんですけど、何がどうしたら割れるのかも何も知らないですし。

NORI選手:わりと研究座学よりかはプレイして。僕は"歌えるようにする"って自分でよく言ってるんですけど、曲のリズムをひたすら体に染み込ませるようなやり方になりますね。それが多分良くて、この間のBackyard Starsみたいな、一般的にリズム難と呼ばれるような曲であっても、なんかまあ曲の通り押しゃあいいんだろうみたいな感じでやるようになってるのかなっていう気はします。

youtu.be


NORI選手:逆に均等な16分とかはもう均等なので、リズムも何もないみたいな。

—すごく浅い考えだと、変リズムが覚えられる人は、当然普通のリズムを覚えられるんじゃないかっていう風に思うんですけど。

NORI選手:いや、でも正しくて、僕のBPLの役立ち方というか。みんなが95点とる曲で 95点取るのは苦手なんですけど、平均点が70点の曲で90点取るのは好きなんですよ。もちろん、その16分の普通の綺麗なリズムの曲も、多分90点ぐらいは出るんですけど、周りの人は全然95点出るんですよ。

—最近ちょっとそういう戦いが多いですよね、BPL。

NORI選手:そういう戦いが多いです。なので僕はストラテジーカードが飛んできやすいんだろうなっていうのは思ってるので、今んとこ100%でいただいているので。

NORI選手:だからそれをどうにかしなきゃいけないっていうので、1ノーツも黄ばませない、基礎精度の向上が何よりも必須なんだなって、思ってるところですかね。

—なるほど、なるほど。

 

NORI選手:それこそ、もうチームメンバーに聞きます。あと、アドバイザー。PPJTさんとか4000クレとかじゃ利かないぐらいやってた時期があったとか聞いてるので、いろんな曲に対しての解像度がめちゃめちゃ高いんですよ。 
なので、僕が10曲やって「この曲ってここ難しいから意識した方がいいんだな」っていう気付きを、既に持ってらっしゃることが多いので、教えていただくような感じですよね。

—曲の解像度が高いって、いい表現ですよね。頭の中に「この曲ってこうだよね」みたいなのがある人とない人がいて、ない人が上手くないわけではないと思うんですが。 やっぱりある人は、少なくとも人にアドバイスするのとかって上手ですよね。練習曲が、ぽんと出てくるみたいな。

NORI選手:そうですね、まさにそう。

 

目標の小ささを意識する

コメント「大きな目標を持ちつつ、小さい目標をこまめに設定するのがよい」

NORI選手:僕はあの、 今「あなたの大きな目標ってなんですか」って言われると、最初にもそんな話したと思うんですけど、長期目標みたいなのはあんまり立ててないんで。多分それはあんまり良くないんだろうなと思いつつも、これまで逆に小さい目標を設定して、それをこなしていったところ、ある程度山は登れてるようになってるので。それは運がいいのか、 本能的に小さい目標立てがうまくできてるのか。

 

—心的イメージっていうことで言うと、"目標を立てる"とは、っていうところが結構ポイントになるんじゃないかと思うんですが。その小さい目標を立てるにあたって意識してることってありますか。

NORI選手:1回ゲーセンに行ったら、次ゲーセンに行ったら、多分できるなぐらいの壁の高さにしてる気がします。小ささですよね。

小ささを意識してるっていう感じですかね。

NORI:うん、じゃないと嫌になっちゃうんで。

 

NORI選手:だから、BPLの期間って結構辛いんですよね。対戦相手とかがわかってて、飛んでくる曲とかもなんとなく予想がついてたりするときとかは。

NORI選手:それこそ僕、明日ゲーパニ戦だからMIKAMOさんとやるんですよ、☆10のCHORDで。でも、MIKAMOさんのスコアと比較したくなんかないけど、 試合なんでしなきゃいけなくて。で、それって、次ゲームセンターに行ったら、達成できないですよ。なんで、多分スタンダードモードを選んだ瞬間に、その小さい目標を多分作ってるんですけど。 そんな計画立てて、ゲームセンター行ってないので。

youtu.be

NORI選手:で、多分そのMIKAMOさんになんとか勝てるかもしれない曲を作り出さなきゃいけないっていうのが、まさにコンフォートゾーンを抜け出すというか、限界的練習ということなんだろうなっていう気はしてます。

 

—そこで言うと、目標立てとしてのりみそさんが慣れてらっしゃるのかなっていうところですよね。フィードバックとかにも繋がりますが、結局そのクレジットが終わった瞬間には、フィードバックが返ってくると思うんです。

NORI選手:そうですね、ああ、できなかったなみたいな。極端に言うと、言われてみればですけど、もう、その次の曲、次の曲でワンチャン伸びる気がするっていうのを やってる気がしますね。それはやっぱり、例えばBPI的にもうちょっと出る気がするとか。それこそBPLの他の選手見て、 あの人がこの点数なら俺ならもうちょっと実は出るか、みたいなのを持ってやってみるとかになるんですかね。

 

NORI選手:だから(BPL)オンシーズンは「MIKAMOさんに勝て」みたいな感じになるので、小さい目標もくそもねえよみたいな感じになっちゃって。多分、息抜きに小さい目標をこなして「大丈夫。俺は上手くなってるんだ」って言い聞かせるような感じでやってますかね。

NORI選手:だから、やっぱりBeat Motivatorとかがあるので、 99%の表の曲が1個増えたとか。やっぱり嬉しいですし、そんな感じでやってることが多いですかね。

 

”終わった”スコアとの向き合い方

—既にやってる曲、この場合ランプよりスコアの方がわかりやすいと思いますけど、このスコア十分高いなっていう風な曲で、どうするかっていう問題が結構出てくるのかなと思うんですよね。

NORI選手:それ、すごいあります。もう満足スコアですよね、 自分的な。

—俗に言う”終わった”やつですよね。

NORI選手:そうです。だから、僕もAA3600*6初めて超えてから、多分AA1回も選んでないと思うんですけど。

 

—それってどう思いますか。やっぱりやった方がいいのか、終わってないやつやった方がいいのか。
NORI選手:難しいなとは思うんですけど。終わったか終わってないか基準って、僕の考えですよ、自分の身の周りの人たち・ライバルを見て、なんか俺が1番うまいなってなった時が終わったスコアになると思うんですよ。

NORI選手:AA3600とかは、キリの良さとか、もう歴史的な、こうAA3600出たらランカーみたいなのがあったりするので、外的な要因だと思うんですけど。それをいいライバルを持つと、ライバルが急に50点とか更新して、 「ああ、これって全然終わってないんだ」みたいな感じで叩きのめされる瞬間があって。それがあると終わってないスコアなので、終わったと思って手をつけてなかった曲を触り始められるような曲になるので。

 

—逆に言うと、そこまでは終わらせといていいかなっていう感じですかね。

NORI選手:そうですね、その曲が好きなら(プレイすれば良い)じゃないですかね。全ての曲を、自分の上振れ100%3σ*7のスコア出すまでやり込むぞ、みたいなのはそんなに意味はないかなっていう気はします。

―そうですよね。1000回やって1回を出すのにどれぐらい意味があるのかっていうのは、自己ベが一番の正義だった時代でも、ちょっと悩ましいところですよね。人間は無限にやっても時間の制約があって、1日に100クレはできない中でどうするのかっていうのは。
NORI選手:そうですね。もちろん歴代狙ってる人達とかになると、 やっぱり自分の中の100%のスコアを、それこそ1日100回も同じ曲やって出したりすることに意味があったりするのかなと思うんですけど。私はあいにく多分歴代を取るとかいう人間ではないので。

 

―どっちかというと、自分との比較っていうよりは、ライバル・周りの人と比較がモチベーションになってるっていう感じですかね。

NORI選手:もう完全にそうですね。

―それで言うと、歴代を狙うような人たちも、ライバルの比較が自分との比較に変わっただけなのかなっていう気はちょっとしちゃいます。

NORI選手:うん、そうですね、そうなんでしょうね。 ああ、大変なことしてるなあ。

 

―自分が上手くなったら、今度は自分の中で終わってないスコアになるっていう感じですよね。

NORI選手:だと思います。その到達っていうのは、今の自分の実力での到達したスコアが出たっていうだけなので。それで、例えば新しくクリアランプがつくとか。他の曲で「え、俺こんなスコア出るんだ」みたいな経験が積めた時に、最近あの曲やってないし、今1番ライバルの中でもうまいけど、でも俺はあの時より上手くなってると思うから、 もう1回やろうかな。みたいなのは結構あって。それは成長の実感になるので、1ヶ月前の自分が終わらせたスコアを今やってみるっていうのは、結構やるかもしれないです。

 

―心的イメージで言うと、MAXは誰が見てもMAXなのでMAXなんですけど、"終わった"かどうかってのも心的イメージだと思うんですよね。

NORI選手:いや、まさにそうだと思います。

―ライバルとの比較っていうのは結構わかりやすいとは思うんですが、 その代替がBPIやCPIになってくるわけですけれども、それがあると無いとって結構変わってきますよね。

NORI選手:変わってくると思います。

 

―逆にCPIの、まあBPIもそうだと思うんですけど、良くないところが、そこの基準があくまで1個の基準にしか過ぎないんで、言うほど難しくないこともあるし、言うほど簡単じゃないこととかもあったりして。だから、やっぱりCPI作った自分もあまりCPIのことは実は信用してない。

NORI選手そこは一緒ですね、僕もBPIのことは何も信用してないので。

―いや、こういうことを言うと、何なんだって感じになっちゃいますけど(笑)。(適正CPIのブレは)プラマイ50の間には入ると思ってます。CPI難度表の基準が50で分かれてますけど、やっぱり1個上1個下(の基準)には結構行かないですよね。

NORI選手:そうですね、そんな気はします。「確かにここで線引かれるのは納得するな」みたいなところに線引かれてるなとは思います。

 

―ここで言うと、(歴代レベルで)終わった終わってないみたいな時とかは、だんだんその線がシビアになってくると思って。そのレベルの世界観のことはちょっと、やっぱり自分はイメージつかないですね。

NORI選手:正直、自分もわかんないですね、まだ。

―ぶっちゃけ、6個と4個と2個と0個がどう違うのかってちょっとわかんないですよね。

NORI選手:僕の感覚だと、やっぱもう10と9は全然なんか違うんすよねえ。多分そんなにきっと差はない。よく考えたらない差はないんですけど。

―1桁か2桁かっていうことですか?

NORI選手:もう完全にそうだと思います。十進法のせいだと思う

―そこは気持ちの問題ですか。

NORI選手:ですし、きっと多分2と1と0は全部違うんだろうなって思います。 あんまり僕がそこまで詰め切ったことがないのであれですが。

 

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インタビュー後半は、

riceplace.hatenablog.jpをご覧ください。

 

 

引き続き、これまでのビートマニア歴で考えたこと・取り組んだことに関するインタビューに答えてくださるトッププレーヤーを探しています。このような区切り方を私がするのは大変おこがましいですが、クリア力・スコア力のどちらかで概ね世界100位前後までに該当する方であればより望ましいです*8

 インタビューにご協力くださる方や、本記事についてのご意見・ご感想のある方は、記事へのコメントあるいは冒頭の Twitterまでご一報をお願いします。


それでは、良き 音ゲーライフを。

*1:2022/8/23にYoutube上で行いました。該当動画は現在非公開としております

*2:段位認定は7thから

*3:当時の7強はAlmagest、Go Beyond!!、perditus†paradisus、冥、卑弥呼、灼熱Beach Side Bunny、3y3s

*4:☆12難易度表の歴史は十段スレの難易度表の歴史 | BPM@パプログ!↑に詳しい

*5:穴冥AAAは3556点

*6:AAの理論値は3668

*7:ここでは発生確率0.3%の上振れの意味

*8:この記事を書いている私は☆12の総合BPI・総合CPIでともに推定500位台程度です

ビートマニアと「限界的練習」

こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。

IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。

 

今回は、こちらの本

books.bunshun.jpを読んだので、ビートマニアの上達と関わりがありそうな部分を一部引用し、個人的な意見・感想も加えてみようと思います。

 

限界的練習(deliberate practice)とは

上述の本で、著者は以下のように紹介されています。

フロリダ州立大学心理学部教授。「なぜどんな分野にも、超一流と呼ばれる人が存在するのか」という疑問から、30年以上にわたり、スポーツ、音楽、チェスなど、あらゆる分野における「超一流」たちのパフォーマンスを科学的に研究。そこから、どの分野においても、トッププレーヤーは必ずある共通の練習法を採用していることを突き止め、それを「限界的練習(deliberate practice)」理論として発表した。(後略)

限界的練習の理論は多分野にわたって広く知られているようで、医学生物学関連の学術文献検索サイトでは、タイトル・抄録に"deliberate practice"を含む文献が850件以上ヒットしました。

 比較的ビートマニアと近いことをやっていると考えられるピアノの初見演奏*1に関しても、その能力の半分程度は限界的練習によって説明が付くと主張する論文があります。

 すなわち、ビートマニアの上達方法を探る上で、限界的練習を参照することは的外れでは無さそうだと考えられます。

 

能力レベルに応じた3段階の練習方法

ここから具体的に本の内容を見ていきます。

『超一流になるのは才能か努力か?』では、上達に応じて必要な3段階の練習方法があることを示しています。

 

1段階目は誰しもが新たなスキルを獲得するときに行うやり方です。

どんなことをできるようになりたいかという漠然としたアイデアから出発し、教師、コーチ、教則本、あるいはウェブサイトから方法を学び、許容できるレベルに到達するまで練習する。そうすると自然と体が動くようになる。この方法が別に悪いわけではない。人生における大方のことについては、そこそこのレベルに到達し、それで良しとしてもまったく問題はない。A地点からB地点まで安全に運転できればいいとか、ピアノで『エリーゼのために』を弾けるようになれたらいいというのであれば、この練習法で十分だ。

- 以下、『超一流になるのは才能か努力か?』第一章より、太字は編者

 

ビートマニアにおいては、初めて鍵盤を叩いたその日から自然とこの練習法を行うことになります。

 そこそこのレベルというのがどの程度かは、身近な上級者の存在・それまでの音ゲー経験の有無などにも大きく左右されると思いますが、多くのプレイヤーはSP七段~八段あたりまでに一度は壁にぶつかるのでは無いかと思われます。

 壁となる要素は人それぞれですが、大体このくらいの段位から見えたものをそのまま自然に押そうとするだけでは対応が困難な譜面パターンが増えてくるような気がします。その最たる例が七段ボスTHE SAFARI(HYPER)でしょう。

いわゆるテレテレテッテ地帯は、微縦連との混合フレーズによって
他の☆10と比較して極めて視認性が低くなっている。
譜面画像はてふたげ(https://textage.cc/)様より

筆者エリクソンは、このように「自然に何かができるというレベルでは満足できない場合」の壁の破り方として、2段階目の練習法、『目的のある練習』を明文化しています。

 

「目的のある練習」の4つの原則

原則一
一、目的のある練習には、はっきりと定義された具体的目標がある

 本では、愚直に練習を繰り返すもののなかなか上達しない音楽学校の生徒を例に挙げて、次のように述べています。

(前略)生徒に次のような練習目標が与えられていたら、彼ははるかに上達していただろう。「課題曲を適切な速さでミスなく最後まで三回連続して弾けること」。そのような目標がないと、その日の練習がうまくいったかどうか判断することもできない。

 ビートマニアでは、例えば

  「七段に合格する」→「サファリを正規or鏡で段位ゲージで突破する」

とより具体的に言い換え、その目標を達成するために

  ①「サファリ開始までに○%ゲージを残す」

  ②「サファリの難所でゲージを保つ」

  ③「サファリの簡単な部分のミスを減らす」

と目標を細分化し、それぞれを具体的に達成するために例えば

  ②ー①「プレイ動画を見てゲージが減っている原因を考える」

  ②ー②「難所を押しやすいオプション・運指を考える」

  ②ー③「難所のリズムを把握する」

  ②ー④「押せていない・見えていないなら同系統の別の譜面も触る」

  ②ー⑤「必要以上に押しすぎているなら思い切ってノーツを間引いてみる」

  ②ー⑥「難所で緊張するならランダムで何度もプレイして曲に慣れる」

……などなど、より定義を明確にして目標を具体的にし、行った練習が目標に対して上手く行ったかどうかを検証できるようにすることが重要です。

 

ここまでお読みになった中には、「当たり前のことを言ってるだけ」「そんなことはわざわざ考えなくても無意識にやってる」と感じる方もいると思います。

 その感覚は正しいと思います。少なくともこの2段階目『目的のある練習』までは、それほど目新しい特別な内容が書かれているとは、私は思いませんでした。

 とはいえ明文化して「4つの原則」のようにまとめられたことは、例えば他人にアドバイスなどを伝える際には効果的ですし、自分だけでもスランプに陥って思考が狭小化しているときなど有効な場面は多いと思います。何よりビートマニア以外に対しても汎用的に役立ちます

 

原則二

二、目的のある練習は集中して行う

 この原則は本当に文字通りですが、得てして弐寺erは選曲画面に入った途端に直前のプレイで考えていたことを忘れがちです。

 その瞬間の気分で好きな曲をプレイするのは全く悪いことではありませんが、「上達のために練習している」と思って投入したクレジットだけでも、「何となくquasar」「何となくAA」で何となく練習した気になるのは控えたいものです。

 真剣にやるなら、ゲーセンに着く前に原則一で提示したようなその日の具体的な課題を決めておき、具体的な練習譜面一覧をスマホに用意しておくのが良いでしょう。そうすれば、プレイ中に次やるべき譜面を考えるような事態も防げます。

 

原則三

三、目的のある練習にはフィードバックが不可欠

 筆者は自身の学生スティーブに対して、ランダムな数字列を暗唱させる課題を出した際のことをこう記しています。

われわれの記憶力の実験では、スティーブは挑戦のたびにシンプルかつ直接的なフィードバックを受けた。記憶は正しかったのか、不正確だったのか、成功したのか、失敗したのか、と。彼は自分の状態を常に理解していたのだ。

 この点はビートマニア含むビデオゲーム全般の良いところで、一曲ごとにリザルトという形で客観的かつ総合的なフィードバックが帰って来ます。

 しかしそのようなフィードバックが十分なものとは限りません。カーネギーメロン大学生であったスティーブの凄いところはここからです。

だが、それ以上に重要なフィードバックは、スティーブ自身の取り組みだった。スティーブは自分が数字の並びのどの部分に手を焼いているのか、じっくり観察していた。正解できなかったときには、なぜ間違えたのか、またどの数字を間違えたのか、たいてい正確に把握していた。(中略)自分の弱みがどこであるかわかっていたために、適切な部分に注意を向け、弱みを解決するような新たな記憶テクニックを考案することができたのだ。

 要するにスティーブは、自身の暗唱結果に対するフィードバックの解像度が高いのです。

 ビートマニアのリザルトは、2分間のプレイ結果をまとめて表示しているだけに過ぎず、押せなかったノーツの押せなかった理由を報告してくれるわけではありません。最近はプレイ中の細かい情報や鍵盤ごとの精度なども(新筐体なら)参照できるようになりましたし、自分でカメラを用意せずとも課金してプレイ動画を保存できるようになりました。

 フィードバックの解像度は、原則一とも極めて深く関係します。目標を細分化するためには、自分の現状を正確に把握する必要があります

 私の例を出すと、最後の未難だったΧ-DENを攻略するためにプレイ動画を撮影したら、決まって卑弥呼地帯の縦連を押し過ぎていることがわかりました。鍵盤の押し過ぎ・皿の回し過ぎに自分の感覚だけで気付くのは難しく、「地力は足りているはずなのに何故か上手く行かない」と悩む要因になりがちです。現に自分も他人にそのようなアドバイスをしたことがあったのに、自分ではプレイ動画を見返すまで気付かなかったのです。

 そういう意味では身近に自分と同程度以上の腕前を持つプレイヤーがいるのは重要かもしれません(後述します)。

原則四

四、目的のある練習には、居心地の良い領域(コンフォート・ゾーン)から飛び出すことが必要

 筆者は4つの原則の中でこれが「最も重要」だと指摘しています。

 先述のなかなか上達しない音楽学校の生徒の話に戻りますが、

(前略)自分にとって勝手のわかった、居心地の良い領域を超えようと努力した形跡が見られない。生徒の言葉からは、すでに楽にできるところを超えて努力することのない、かなり漫然とした練習姿勢が透けて見える。こんなやり方では絶対にうまくいかない。

と、筆者はなかなか厳しい注文を付けています。

 本の中では別の例として、ベンジャミン・フランクリンのチェスの腕前を挙げています。日本でフランクリンは凧を使って雷が電気だと示した実験で有名ですが、政治家、外交官、著述家としても卓越した業績を残しており、アメリカでは100ドル紙幣の顔にもなっています。

 一方でチェスに関してはいわゆる下手の横好きだったようで、

このようにベンジャミン・フランクリンは頭脳明晰で、チェスに何千時間も費やし、当代屈指のプレーヤーとも打ったことがある。では、それによってフランクリンは優れたチェスプレーヤーとなったのか。答えは否だ。(中略)今日の私たちには、その理由がはっきりわかっている。あえてコンフォート・ゾーンから出ようとしなかった、そして上達するのに必要な、長時間にわたる目的のある練習をしなかったためだ。同じ曲ばかり三〇年間弾き続けているアマチュアピアニストのようなものだ。それでは向上ではなく、停滞するのが当然だ。

と、筆者はアメリカ合衆国建国の父を容赦なくバッサリ切り捨てています(アメリカ人にとってフランクリンが偉大なことは説明不要だからかもしれません)。

 

フランクリンも自分が努力していないつもりでは無かったでしょうし、「当代屈指のプレーヤー」と対局するなどの挑戦は行っていたのです。

 一方で、これが真にコンフォート・ゾーンを超えた練習であったかは疑問です。「当代屈指のプレーヤー」には負けるのが当然だと考えられ、言わば胸を借りるだけになってしまうこともありそうです。

 ビートマニアでも、簡単すぎる譜面だけではなく、難しすぎる譜面も練習にならないことがあります。BPが山のように出てゲージが地を這う譜面をプレイして、「やっぱり難しい譜面は難しいな、でも何となく練習になったな」と満足してしまうことは無いでしょうか。

 

コンフォート・ゾーンを超えた、言わば「不快な」譜面というのは、例えば「見えてるのに押せない」や「初めは押せるのに段々押せなくなる」や「覚えないと押せない」といった譜面では無いでしょうか。

 弊サイトCPIでまず初めにリコメンド機能を搭載したのも、そういったコンフォート・ゾーンを超えた譜面たちを一目瞭然にしたいという意図がありました。そのため、リコメンド一覧を見ると生みの親の私も極めて「不快な」気持ちになることがあります。そのような譜面から逃げてはいけないと、頭ではわかっているんですが……。

 

さて、ここまで4つの原則を紹介しましたが、それでもなお「その程度のことは全てやっているが、その上で停滞している」と考える人がいるかもしれません。その人たちは次なる段階の練習法に進む前に、筆者のこの提案を試してみるのも良いかもしれません。

壁を乗り越えるのに一番良い方法は、別の方向から攻めてみること

 数字を暗唱していた学生スティーブの話に戻ります。

ティーブは数字が二二個に達した時点でそんな壁にぶつかった。そのときは四つずつ四グループにまとめてさまざまな記憶術の方法を駆使して記憶し、そこに最後の六つの「リハーサルグループ」を加えるという覚え方をしていた。(中略)だが、最初はどうすれば二二個の壁を越えられるか、どうしてもわからなかった。頭の中で数字を四個ずつ五つのグループにまとめていたが、グループの並び順で混乱してしまったのだ。

 スティーブは新たな方法を自力で編み出します。

最終的に数字三個のグループと四個のグループを併用するというアイデアを思いつき、それが数字四個のグループを四つ、数字三個のグループを四つ、それに数字六つのリハーサルグループを加えるというブレークスルーにつながり、最大三四個まで覚えられるようになった。

 スティーブはその後も壁にぶつかるたびに新たな手法を探し、最終的には82個もの数字列を一回耳にしただけで暗唱できるようになったのでした。筆者のもとに訪れた初めの数日は、7~9個の記憶が限界なごく人並みの成績だったことを考えると、これは驚異的な事実です。

 

ビートマニアの話に戻ると、例えば普段選ばない曲を触ってみる、オプションを変えてみる、姿勢を変えてみる、ウォーミングアップを工夫してみる……などでしょうか。

 また私事になりますが、Χ-DENハードを達成した最も直接的な変更点は、緑数字を278から280に増やしたことでした。とはいえ、同様の工夫は以前に何度か試したことがあり、その際には目立った成果は得られなかったのです。このことから、手当たり次第に新たな手法を試しても効率的ではなく、適切なタイミングで適切な変化を加える必要がありそうだと考えられます。

 

筆者はこの点に関しても、身近な上級者の存在が必要だと強調しています。

(前略)教師やコーチの存在が役立つ理由の一つはここにある。あなたが直面する壁がどのようなものかを、すでに経験している人であれば、その克服法を提案してくれるだろう。ときには壁が精神的なもののこともある。

 私がやった「高難度譜面の攻略で緑数字を増やす」というアプローチも、同様のやり方で上手く行った先達の例をいくつか見たことがあったので、手札として取り出せたというだけです。誰も思い付かなかった新しいアイデアを閃くことはとても難しいです。

 

超一流を目指す「限界的練習」には指導者が必要不可欠

いよいよ「目的のある練習」を越えた3段階目についてですが、結論から言うと現状のビートマニア環境では誰もがアクセスできる練習法ではありません。

 なぜなら、筆者の言に従うと

(前略)限界的練習には、学習者に対し、技能向上に役立つ練習活動を指示する教師が必要だ。当然ながらそうした教師が存在する前提として、まずは他人に伝授できるような練習方法によって一定の技能レベルに到達した個人が存在しなければならない

- 以下、『超一流になるのは才能か努力か?』第四章より、太字は編者

からです。早い話が、楽器・スポーツと同様にレッスンプロの存在が必要だということです。優れたレッスンプロは、前述の「目的のある練習」をさらに洗練させることができ、上級者を超上級者に引き上げることが可能なのです。

 指導を受けるプレーヤーに対して、レッスンプロが常に上級である必要はありません。筆者は本の中で、モーツァルトを熱心に指導した父レオポルト・モーツァルトの事例や、3人の娘を世界的チェスプレーヤーに育て、うち1人は歴史上最強の女性チェスプレーヤーとなった、心理学者ラズロ・ポルガーの例を挙げています。どちらの例でも、子供は親の腕前を十代前半までには追い抜いてしまったそうです。

 

優れた指導者たる秘訣は本書の核心部分ですし、一般プレーヤーの多くには関係が薄い部分なので本記事では割愛しますが、筆者はレッスンプロのいないような分野においても

最高のプレーヤーを特定し(中略)、それほどの成果をあげられたのはなぜかを調べ、同じ能力を身につけるための訓練方法を考案すればいい。レッスン内容を考えてくれる教師役はいないかもしれないが、過去のエキスパートが本やインタビューで語っているアドバイスを参考にすることはできる。

 とトッププレーヤーから学ぶことの重要性は強調しています。

 ここで重要なのは、トッププレーヤーの言うことをそのまま真似したり、全く同じ練習法を行うわけではない点だと思います。必要なのは、あくまで「同じ能力を身につけるための訓練」です。

 例えば、別の音ゲーでトッププレーヤーになった後、ビートマニアも触れるようになってそちらもトップになった人の練習法は、多くの人にとってそのまま真似られるものでは無いはずです。全てのプレーヤーにおいて、身長・手の大きさ・筋肉の付き方・楽器や音ゲー経験などなど、背景は十人十色なことに注意する必要があります

 

この点において避けられないのが才能と努力の議論でしょう。この本の筆者エリクソン教授はほとんど全ての能力は努力で説明可能だという立場ですが、個人的にはそれはエンジニアの言う「技術的には可能」と同レベルの話だと感じました。

 もちろん人生を捧げて取り組む上では「技術的には可能」なことは何でもやるべき、ということになるとは思いますが、多くのプレーヤーにとってはビートマニアはあくまでゲームなので、実生活に決定的な影響が出ない範囲でやっていくのが現実的なところだと思います。毎日5時間欠かさずにプレイすることが必須だという計画を立てたとき、それを実行しながら社会生活が問題なく送れるのなら、それはもう恵まれた環境という意味で才能があると言って差し支えないのでは無いでしょうか。

 

そういう意味でも、今後もビートマニアのレベルが上がっていき、それに従って初心者の裾野も広がっていくことを望むのであれば、より多くのプレーヤーがより効率的に一定の目標に到達する上で、ビートマニアのレッスンプロ制度が生まれていくことが重要だと感じます。

 例えば一週間おきに一時間ずつゲーセンでの直接指導とオンライン面接を受け、数ヶ月程度の期間で一定の目標達成を目指すようなレッスン体系ができて、指導者の質KONAMI公式などが担保するような仕組みです。もちろん、BPLスポンサー等の有効活用があるとなお良いと思います。

 

最後に

私がCPIを世に出して以降も、上達を望むプレーヤーがより効率的に上達するためのツールが、ビートマニアにはまだまだ足りていないことを痛感しています。

 私はこのゲームが(実生活に決定的な影響が出ない範囲で)大好きですし、その要因には音楽の素晴らしさ・音に合わせてデバイスを操作する楽しさ、だけでは語り尽くせない点があると考えています。それはまさに、公式の言う「過去の自分より上手くなる。beatmania IIDXの本当の面白さは、ここから始まります。 」に他なりません。

 IIDX20の頃にはゲーセンに通うようになっていましたが、IIDX30を次回作に控えたビートマニアではプロリーグの設立とともに、上級者・超上級者が練習方法を共有しやすい空気感が醸成されてきたと感じます。私はIIDX40を真剣に楽しみにしています(その頃も今と同じ程度にプレイを続けているかは別として)。

 初心者・初級者・中級者プレイヤーの増加という観点からも、レッスンプロ制度の整備が真剣に検討されるといいなと願ってやみません。

 

上記記事内容に関連して、これまでのビートマニア歴で考えたこと・取り組んだことに関するインタビューに答えてくださるトッププレーヤーを探しています。このような区切り方を私がするのは大変おこがましいですが、クリア力・スコア力のどちらかで概ね世界100位前後までに該当する方であればより望ましいです*2

 インタビューにご協力くださる方や、本記事についてのご意見・ご感想のある方は、記事へのコメントあるいは冒頭のTwitterまでご一報をお願いします。


それでは、良き音ゲーライフを。

*1:詳しくは別記事にて紹介したいと思っています

*2:この記事を書いている私は☆12の総合BPI・総合CPIでともに推定500位台程度です