こんにちは、りせ(@rice_Place)と申します。
IIDX SP☆12の難易度推定サイト、CPIの運営を行っています。
CPIは当初よりプレイヤーの目標設定に役立ててもらうことを目指していますが、中でも総合CPIの段位別平均(中央値)は一定数の方がターゲットとしているようです。
このことは個人的に予想外でした。というのも、総合CPIと段位合否との関係はそれほど強くないと考えているからです。
CPIを上げると皆伝が近付く?
試しに、総合CPIと皆伝合格率との関係をグラフにしてみました(以下で使用するデータは断りがなければ2020年10月頃に集計したものです)。
こうして見ると間違いなく相関はありそうですが、 中伝平均(1620)で1割弱が合格する一方、皆伝平均(1880)で2割弱は合格しないということで、【CPIを上げる≒とにかくクリアランプを点ける】だけでは、皆伝合格に関して回り道になりそうだと考えられます*1。
このようにCPIと皆伝合否の相関が弱くなる理由として、段位認定では適正より少し高いレベルの譜面を4連続&正規or鏡で完走することが必要であり、通常プレイにおけるランプ更新とは求められる要素が異なってくることが挙げられます*2。
特に皆伝においては、長いあいだ3曲目・4曲目が固定されており、なおかつ皆伝獲得の難関であり続けることから、「皆伝の合否は卑弥呼と冥の正規譜面がどれだけ押せるかで決まる」というトートロジーが、一種の決まり文句として言われることがあります。
そうは言っても(ひたすら皆伝を粘着することは合格を遠ざけるので)、何か指標となるものを探したいのが人情です。
というわけで、皆伝合否との相関が強いクリアランプを、先述のプレイヤーデータから探してみることにしました。
皆伝合否と相関の強い譜面
まずは【皆伝合否との相関が強い】ことを、【{(クリアかつ皆伝)+(未クリアかつ中伝)}÷{(皆伝全体)+(中伝全体)}=正解率 が高いこと】と定義します*3。
そして各譜面の正解率をガーッと計算すれば良いのですが、単純にこれをやると新曲の正解率が高く出てしまいます。なぜならクリアランプは一度点ければ消えない一方、段位は毎作ごとに取り直す必要があるため、最新の実力を示す新曲のクリア状況は段位との相関が強いと考えられるからです。
そこで、より”アクティブ”なプレイヤーを全体の半分ほど抽出し、曲の新しさの影響を補正することにしました(具体的な手法はこちら)。
このようにして求めた各譜面・クリアランプの正解率を縦軸にとり、横軸に適正CPIをとってプロットしたものがこちらです。
先ほどの棒グラフで皆伝合格率が約50%であった、CPI 1740付近を頂点とする上に凸の綺麗な分布が見られます。
頂点付近を拡大したものがこちらです。
こうして見ると、エクハは皆伝との相関が比較的弱く、イージー~ハードは混在している印象を受けます。
個人的にはこの時点でけっこう驚きました。ゲージの仕様を踏まえると、段位認定で重要なのは格上の譜面でもなんとか押し切る”イージー力”だと考えていたからです。
さらに譜面ごとの特徴を抽出するために、適正CPIの影響を除くような計算*4を行い、以下のような図を得ました。
このグラフで上方にプロットされるランプは、適正CPI≒クリア難易度の影響を除いても、なお皆伝合否との相関が強いと言えそうです。
相関の強い/弱い譜面の特徴
正解率の高いランプTOP20を表にまとめました。
いかがでしょうか。私がパッと見た時の印象は、意外と地力系ばっかりだなというところです。
詳しく見ていくと、例えばシムルグ・焔極・陰キャ・エルフェリア……など、高速16分主体+皿複合といった譜面が上位に来ているようです。表中で唯一のEXHである金十字も(BPMは遅いですが)この特徴には当てはまりそうです。
他にも軸や二重階段など、卑弥呼を彷彿とさせる要素も目立ちます。
一方、皆伝の代名詞であるソフランはエボアボダリアとJOMANDAくらいしか現れませんでした。また、連皿・CN・ディレイ*5を主体とするような譜面もあまり選ばれていないようです。
続いて、正解率の低さTOP20はこちらです。
20分の13譜面がエクハという結果になりました。TOP20に入っていた金十字との違いを考えてみると面白そうです。
また、連皿譜面のチェイスとラウンドテーブルが選ばれています。この辺り、灼熱が課題曲なことを考えると不思議な気もしますが、連皿が飛び抜けて得意なプレイヤーの影響が大きそうです。
残りのノマゲ(ワイコー、3y3s、ファーダリ、FTB†、FAXX)は全て難所以降でゲージを大幅に回復させられる譜面となっており、皆伝を取得できているプレイヤーはノマゲを飛び越えてハードを狙いに行く傾向があるのかも知れません。
ちなみに、昔から皆伝フラグとして挙げられるいわゆる三闘神については、対象539譜面中でバドマニハードが25位、クエルハードが41位、麺ハードが50位でした。SIRIUS環境ではバドマニが1位となります*6。この10年間で練習曲が増えたことのあらわれと言えそうです。
まとめ
以上の内容をまとめると、
・皆伝合格率と総合CPIとは相関するが、それほど強くはない
・皆伝の指標になりそうな譜面の適正CPIは一定範囲内に収まる
・適正CPIが1700~1800付近で、高速16分+皿複合が主体の譜面は皆伝合否のよい指標となる
と言ったところでしょうか。
先述しましたが、結局のところ皆伝の合否は課題曲の正規系譜面の出来で決まるので、極論すればどれだけ地力があっても嘆きに癖が付きまくったら受からなくなります。けれども、充分な地力があればちょっとした対策で皆伝合格がグッと近付くことも事実です。
さらに言うと、皆伝対策はググれば色々と出てくる一方で、”必要な地力”というのは人によって見解が大きく異なるところです。また一口に地力譜面と言っても、最近では様々な要素が求められるようになって来ており、解像度の高い理解が必要だと思います。
今回の記事が、新たに皆伝合格の喜びを味わうプレイヤーを一人でも増やすことに繋がれば、週末を消費したことの充分なリターンになると言えそうです。
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それでは、良き音ゲーライフを。